灼熱のシャナ
アニメが観た~い
『おかえり~♪ ぬんぬん♪』
『わぁ、目覚めたんですね、たくあん!』
ラゴスたちがハティの鍛冶場に戻ると、元気なたくあんがお出迎えしてくれた。結局あの後は深夜まで飲み食いしてしまい、丑三つ時の帰宅となってしまった。ラゴス以外のメンバーは酔い潰れてへべれけな状態だが、たくあんは彼女らが帰ってくるまでずっと眠っていたので、とっても元気溌剌である。可愛い。
『……という事は、壁も既に?』
『なおしたよぉ~♪ ぬ~ん♪』
『おおっ、頼りになりますね!』
むろん、その間に壁も修復されている。流石たくあん、最高の魔法使いだ。何処かの誰かさんと違って。
『それじゃあ、ボクたちはお役御免って事ですかね?』
『そうなるな』
すると、工房の奥からハティが汗を拭きながら現れた。手には出来立ての武器と防具が握られている。ラゴスたちが戻るまでの間に仕上げたのだろう。読書の後に作った物なので、受注品ではなく趣味の産物かもしれない。本当に鍛冶仕事が好きなようだ。
『……では、お世話になりました。明日にはお暇します』
『そうかいそうかい。なら、明日の朝に会おう』
『おやすみ~♪』
そういう事になった。
◆◆◆◆◆◆
よくじつ!
『おはよぉ~♪ ぬんぬん♪』
「……んぁ~、おはよう……」
『ふつかよい~? 【αναψυκτικό】~♪』
「はぁ~、生き返る~」
《《我々にもお願いしますぅ~》》
『ぬんぬんぬ~ん♪』
『駄目だこいつら、早く何とかしないと……』
案の定、どいつもこいつも二日酔いになっていたので、たくあんの活力魔法で回復した。酒は飲んでも飲まれるな。飲み過ぎは止めましょう。
『さぁ、回復したなら、そろそろ行きますよ!』
「何処へ?」
『何処へってアンタ……』
その上、ポダルたちは事情を何も知らないので、ラゴスは一から説明する破目になるのであった。
「――――――へぇ~、壁直ったんだ。じゃあ、ここに留まる理由は無くなったわね」
『そういう事です。だから、ハティさんにお礼を言って、出発しますよ!』
「え~、でも島から出ると、あいつに襲われるんだろ? 普通に嫌なんだけど」
『だからって何時までもお世話になる訳にはいかないでしょ』
渋るポダルを引くラゴス。どっちが子供か分からなくなる、情けない光景である。
『おう、やっと出揃ったか』
と、ハティが鍛冶場から顔を出した。煤けて汗を流している辺り、今朝も早くから仕事をしていたのだろう。偉いネェ~♪
「また何か作ってたの? よくやるわねぇ~」
『性分なんでね。それよりほれ』
「え……?」
すると、ハティがポダルに黄金の杖を投げて寄こした。
『お前たちにはこれな』
『わぁ~!』
《《マジですかい!》》
さらに、ラゴスたちにも武器と防具を渡していく。どれも各々に合わせた性能を有しており、持ち易いし動き易い。まさにプロの仕事だ。
「どうしてこれを?」
『餞別代りだよ。……生き延びられたら、また来ると良いさ』
そう言って、ハティはヒラヒラと手を振りながら踵を返し、工房へ戻って行った。バイバイは言ってあげない、という事であろう。彼なりの親愛である。
「よし、それじゃあ行こうか」
『ぬんぬん♪』『はいです!』《《イェ~イ!》》『プリャ~ン♪』
そして、ポダルたちは数日間を過ごしたハティの家を後にして、再び旅路へと着くのだった。
『………………』
「出たな、アスラ神族」
当然、島を出て渡った先の陸地では、アスラ神族のシャナが待ち構えていた。どうやら、ここで決着を付けるつもりらしい。
『死ぬ覚悟は?』
「こっちの台詞だ、くたばり損ない。……試し斬りさせて貰うよ」
『面白い』
だが、ポダルたちだってハティのおかげでパワーアップしているのだ。負けてやる筋合いなど無かろう。
「あんたたちは周囲の警戒をしてて。こいつの相手は私がやる」
『わかったよぉ~♪』
「可愛いなぁ……フンッ!」
という事で、横槍への警戒はたくあんたちに任せて、ポダルは新しい黄金の杖と従来の杖とを連結させ、大出力の魔法双刃剣として起動し、シャナへ決闘を挑む。
『フッ……!』
対するシャナも、二振りの神炎剣を召喚して、戦闘態勢に入る。チャクラを解放する事で全身に光り輝く聖痕が浮かび上がり、後光のようなオーラを纏う。こうして見ると、確かに神である。
「ハァッ!」
『シィッ!』
と、魔力と神力が刃を交え、文字通り決戦の火花を散らす。ポダルは棒術のように、シャナは双剣として振るい、凄まじい連撃を繰り出す。手数ではシャナの方が上だが、リーチと独特の動きによりポダルも食らい付いている。戦闘の神を相手に渡り合うとは、中々やる。
『セァッ!』
剣だけでは埒が明かないと思ったのか、シャナが一旦後退してから火球をグミ撃ちしてきた。一発一発がダイナマイト級の威力を持っており、それが雨あられと降り注いでくるのだから、堪った物ではない。
「オラオラオラオラオラオラ!」
『何ィッ!?』
しかし、ポダルは避ける処か、魔法剣を一度しまうと、何と拳の連打で全て迎撃してしまった。
『調子に乗るなぁ!』
「ぐぁおおおおっ!?」
すると、連打では無意味と悟ったらしいシャナが、最大火力で攻撃する。周囲数キロメートルを蒸発させる超高温の大火球だ。先ずは爆風が押し寄せ、次いで真空状態の爆心地に暴風が舞い戻り、最後に散った塵や砂礫が空気中の水分と結合してどす黒い雨となって降り注ぐ。
「………………」
そんな大惨事の最中でも、ポダルは原形を保っていた。
だが、それは形ばかりで、全身が焼け爛れており、まるで焦げた立ち木のように動かない。これは流石に死んだか……と思われた、その時。
「――――――ギィヴェァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
突如、ポダルの炭化層が内側から弾け飛び、真新しい身体を見せびらかせながら、凄まじい雄叫びを上げた。よく見ると口元から真っ黒な蒸気が漏れ出て、眼球の全てが真紅に輝いている。死の恐怖とシャナへの怒りが彼女の生命力を異常に昂らせ、暴走状態に陥っているのだろう。その憤怒が過ぎる表情は、まさしく鬼か悪魔だった。
――――――ドギャギャギャギャギャギャギャッ!
と、一歩ごとに大地を爆発させながら、ポダルが物凄い勢いで走り、
「グギャヴォオオオオァアアアアッ!」
『ぐぉっ!? ……ぐががががががっ!』
シャナの頭を鷲掴み、地面に思い切り叩き付けて、まるで雑巾のように擦り続ける。
『グヴォルァアアアッ!』
「がっ、ぐっ、ぎぃっ!?」
さらに、ホップ☆ステップ★大ジャンプからの着地で止めを刺した。その際、あまりの衝撃により爆心地が更に吹き飛び、岩盤が露出するレベルのクレーターが出来上がる。それでもシャナはギリギリ人の形は保っているというのだから驚きである。お前ら一体何で出来てるんだ。
『……殺せ』
とは言え、流石にこれ以上の戦闘は無理だと判断したのか、シャナは目を瞑ってポダルに介錯を求める。
「フゥゥゥ……やなこった。そういうのは趣味じゃないんだよ」
だが断られた。どうやら暴れ尽くして怒りが治まったようである。
『後悔するぞ』
「たくあんに嫌われるよりかはマシだ」
ポダルの視線の先では、たくあんが心配そうにぬ~んとしている。ポダルが殺られる可能性だけでなく、シャナが殺される事も危惧していたのであろう。甘いと言われるかもしれないが、それがたくあんらしさなのだ。
「じゃあな。暫くそこで寝てろ。その間に、私らはもっと遠くに行かせて貰う」
『………………』
そして、たくあんとポダルたちは再び冒険の旅に出るのだった。
◆ウィローシャナ
何故か大日如来と神違いされがちなアスラ神族の一柱。「「アーマトン(自我)」とは何か?」という自問自答と上司に聞き入り、「水鏡で自分を見てごらん。それが真理だよ」というなぁにそれぇな言葉を鵜呑みにしちゃった、若干お頭の足りない魔神。ライバルである雷神「インドラ」には知恵も身体能力も負けている可哀想なお方でもある。
作中に登場する個体はウィローシャナの血族であり、転生者でもある。




