1話 緑の国の王子グリン
ここは深緑国エメラルシア、緑の魔王「ヴェールフェゴール」の王家が治めています。エメラルシアは魔物の命の源である「ダークジュエルギー」を使って質の良い野菜を作る農業が盛んです。そして一つの家に庭園が一つあるくらい自然を愛する民達がたくさんいます。しかしここ最近、現国王のヴェールフェゴール・リフリオ・エメラルシアの圧政にエメラルシアの民達は苦しめられています。
ヴェールフェゴール王家の第一王子であるヴェールフェゴール・グリン・エメラルシアは今日も街の散策に出掛けています。
「今日も街には活気がないなー、この前いつも会うおばさんとこの前咲いた花について話していたけど最近は喋る元気がなかったもんなぁ」
グリンはそう呟きながら歩いていると
「うわっ!」
街道階段を踏み外してしまい転がり落ちてしまいました。
「王子!大丈夫!?」
「だれか!お城の兵士を呼んできて!」
突然の出来事に周りの人は大慌て
「うーん」
グリンは自分の寝室で目を覚ましました。
「あれ?ここは、」
「王子!良かったお気づきになりましたか!」
「えっ、うん うん?この記憶って・・、」
付き人は王妃に知らせてくると言って出て行きました
「この記憶、もしかして僕の前世の記憶?」
どうやらグリンは頭を打った衝撃で自分の前世の記憶を思い出した様です。
「たしか、僕はあの時車に轢かれて・・。」
そう、グリンの前世は人間で現代日本を生きていた小学生でした。学校からの下校中、不慮の事故で命を落としたその子はこの世界でヴェールフェゴール・グリン・エメラルシアとして生まれ変わったのです。
「良かった!グリン!」
ベッドに駆け寄ってきたのはグリンの母で深緑国エメラルシアの王妃であるヴェールフェゴール・リーフリア・エメラルシアでした。
「母上、心配かけてすみません。」
「良いのよ、あなたが無事なら」
「父上は?」
「あの人は、私たちの事なんてどうでも良いのよ。」
「そうですか・・。」
母の顔を見て父の事なんて聞くんじゃなかったって思ったグリン。
(父さんのせいで母さんも国もめちゃくちゃだ、父さんに真意を問わなきゃ)
そう、心に決めたグリンでした。