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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

焼肉を箸で摘む

 私はいつものように肉をタレの中に漬ける。壺の中、タレの中を平たく捌かれた肉が泳ぐ。


「これからが大変だぞ……!」


 蓋を乗せて一時間。蓋を開けてみればタレの香ばしい香りが強い。しかしまだ、食べ頃ではない。

 熟成して二時間、三時間。


 ついに時は満ちた。


 私は炭火の上に網を乗せ、まずは焔で網を熱する。次にじっくりとタレの染み込んだ肉を網の上に乗せた。

 焔はバチバチと音を立て、下から肉を炙る。肉を裏返した頃には、網の跡が明瞭になっていた。褐色のます目が、私の食欲を煽っている。脂がプツプツと弾け、食べ頃がやってきた。


「それでは、いただきます」


 箸で肉を摘み、それを隣で座る恋人へ……。

 すると恋人は、焼かれた肉を箸で摘む。それを口の中へパクリ、と。


「うん、おいしいね」


 私は顔写真の前で優しく微笑んだ。

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