プロローグ
初めましてシャララと申します。
元々執筆自体はさせて頂き、ニコニコで放送などもしていたのですが、リアルの忙しさに追われ休載報告も出来ず時の流れと共に執筆自体が遠ざかってしまった私ですがこの度リアルの方も安定し落ち着きを取り戻し、再び執筆の方をさせて頂きたいと思いこの作品をリメイクし、執筆させて頂きました。
また、現在ヘタクソなのも承知の上で自身でカットインなどの挿絵も挟めるよう環境を整え絵の勉強をさせて頂いております。
前置きが長くなってしまいましたが、皆様どうか私の作品が気になられた方は流し読みで構いませんのでプロローグだけでもご覧いただければと存じます。
それではご挨拶の方はこれくらいにしてどうかご愛読の方をよろしくお願い致します。
プロローグ
「ハァッハァッハァッハァッハァッ。」
足が重い。
息も苦しい。
脇腹には何かが突き刺さっているような痛みを感じる。
しかし少年は走り続ける。
背後からは複数のバタバタと少年を追う足音と唸るような低いうめき声が聞こえる。
冷や汗をかき脳が命じるままに鬱蒼とした木々が生い茂るかつての公園のように見られる場所を少年は脱兎のごとく駆けてゆく。
日もすっかり暮れ、視界に写る景色には光源などもなく足元も見えづらい。
「クソッ!!。」
彼の涙腺から滲み出てきた涙が走る彼とは逆方向へと飛んでいく。
「なんでいつも俺ばっかり!!。」
絶えず足を前へと動かしながら滲み出続ける涙など気にも留めず、猛りそうな思いを吐き叫んだ。
13時間前。
「ふぅ、まぁこんなもんかな。」
額に浮かぶ汗を拭い、先刻から割っていた薪をロープでくくり纏め、薪割りの台に使う大きな切り株に腰をかけ俺は一息ついた。
なんとなく、割った薪を一瞥し傍に置いてあった水筒を手に取りフタを開け口をつける。
まだ冷たく冷えた水が俺の火照った体を静めるように喉を通っていく。
水筒を口から離し空を見上げると思わず笑みが浮かぶような晴天が広がっていた。
近くの木々からは鳥達のさえずりが聞こえ心が穏やかな気分になる。
木々の葉は少し前に見た時よりも色が落ち、数も減っている。
冬の訪れが近いのを目にし、今度はなんとなく寂しいような気持ちになる。
少しの時間そんな感傷に浸っていると、よく見知った顔の人物が村の方からやってきた。
「よぉリノ流石手早いな、もう薪割り終わったのかよ。」
そう笑顔で言葉を投げてきた人物は村長の孫で俺と同い年の小さい頃からの親友だった。
「まぁ慣れてるからな、それよりわざわざこんなとこになんの用だ?。」
俺は手に持った水筒を親友に渡しながら、普通に疑問に思ったことを聞いてみた。
親友はそれを受け取るとグッと一息に水筒を傾け中身を飲み干し俺の問いに答えた。
「なんか爺ちゃん達が話があるから呼んで来いってさ。」
「......まぁ良い予感はしないよな。」
そう言い少し怪訝な顔つきをしながら親友は水筒を俺に返した。
「そっか......わかった。」
俺はだいたい予想はついていたため少し顔を曇らせたがすぐに仕方がないと思い、明らかな作り笑いになってしまったが承知した旨を伝えた。
「んじゃ、先行ってるぞ。」
親友はあえて多くを言わず、申し訳無さそうな表情でそう言い去っていった。
「ハァー......。」
親友の影が見えなくなるのを確認すると、俺は俯き大きなため息をついた。
「クソッ。」
どっしりとした重たい気持ちで腰を持ち上げ、纏めた薪を担ごうとした時、思わず立ち止まりつま先で薪を小突いてしまった。
「腐っていてもしょうがないか.......。」
俺は薪を担ぎ、掛けてあった斧を持ち親友が歩いて行った道をたどり出した。
村へ戻ると村民のみんなはそれぞれのやるべきことをやっていたが俺が戻ってきたのを見るといつもより口数多めな感じで労いの言葉をかけてくれた。
「あら今日も早いわね、助かるわぁ。」
と向かいの家に住むおばちゃん。
「いつもすまねぇなぁ。」
と道具職人のおっちゃん。
「こうやって暮らせるのもお前さんのおかげじゃよ。」
と隣の家の優しいおじいちゃん。
みんな思い思いの言葉を俺にかける。
俺はそれに対して作った半笑いで手を振って答える。
慣れた景色だ。
俺は一度自分の家の外の薪を乾燥させるスペースに薪を降ろしそのまま村長の家へと向かった。
村長の家の呼び鈴を鳴らすと先ほどの親友が中へと通してくれた。
村長の家は他の村民の家よりも大きく、ある程度の人数であれば入れるくらいの集会所のような部屋がある。
部屋の中に入ると既に村長とその他の大人を含めた五人が待っており、みな一様に険しい表情をしていた。
「やあリノ、いつも急な呼び出しですまないね。」
最初に切り出したのはやはり村長だった。
「いえいえ、いつもお世話になっているので。」
俺はあくまで事務的に返す。
「呼び出した理由はもう察っしがついていると思うが......。」
流石にたびたび頼んでいればわかっているだろうと村長は語りだす。
「まぁ,,,,,,おおよそは。」
俺も流れで答える。
「うむ、毎度のことで申し訳ないのじゃが今の村の備蓄では今年も冬を越せるかどうか怪しいところなんじゃ。」
村長は申し訳なさそうな声音と表情で言う。
「調達に行けばいいんですよね?。」
俺はいつも通りの変哲のない調子を繕い確認する。
「誠に申し訳ないんじゃが.........。」
この場にいる俺以外が俯いてしまった。
「今回も一人でですか?。」
俺は一番気になっていることを念のために聞いてみた。
するとここまで聞いていた親友が口を開いた。
「流石に今回は俺も行くよ!。」
親友はこれ以上情けない思いはしたくないというような表情だった。
「ならん、いつも言っておろう、お前はこの村の未来を継がねばならん、この村の未来を担う人間をあのような村の外に送り出すわけにはいかんのじゃ。」
村長は強い口調でその意見に反対した。
「だったらリノはどうなってもいいってのかよ!。」
親友のこの言葉にこの場の全員が黙りこくってしまった。
重たい空気がしばらくこの場を流れた。
「大丈夫だよ、俺なら一人でいける。」
俺は親友をなだめるように言った。
「けど!。」
「いいんだ、俺なら大丈夫だから。」
納得がいかない様子の親友を俺は無理やり制した。
「早速で悪いのじゃが出発の準備をしてもらえるかのう。」
そう言いながら村長は懐から茶色い紙に包まれた物を差し出してきた。
「わかりました。」
俺はそれをなるべく感情が顔に出ないように意識しながら大事に受け取った。
「くれぐれも、気を付けてのぉ。」
「わかってます。」
俺は変わらず事務的に返し村長の家を出た。
重たい足取りで村を通るとみんなはあえて声をかけず、歩いていく俺の背中を心配そうな目で見ていた。
自分の家に着き扉を開け中に入り扉を閉める。
途端に足の震えが起こり頭の中が恐怖でいっぱいになる。
数分その場でしゃがみふさぎ込んでしまったが、俺は覚悟を決め顔を上げた。
いつも村の外に出る時に持っていく大きなリュックサックに必要な物を詰め込み、もし万が一野宿をすることになったときのためにテントやハンモックも用意する。
腰のマルチポーチには携行品とルアーを入れ水筒とナイフをベルトにくくりつけた。
そして村長から受け取った茶色い紙に包まれた物を広げた。
中には回転式リボルバー拳銃とホルスターが入っていた。
この村では銃を所持していいのは村長だけという決まりになっている。
俺は慣れた手つきでホルスターを胸部に巻き、拳銃のシリンダーにしっかり弾が込められているのを確認して胸部のホルスターにしまった。
まぁこの銃はあくまで最悪の時の護身用兼自決用のためのものなので滅多に抜くことなんかない。
弾薬も物資も少ないこの村で俺に与えられる物など、必要最低限シリンダーに入る六発分だけ。
防寒用に厚手のコートを羽織り準備が整った。
スゥっと鼻から息を吸いゆっくりと口から吐いて深呼吸をする。
テーブルの上に置いてある写真立てに目を移す。
写真にはまだ幼い頃の俺を抱き上げ笑顔でこちらを向いている母が写っている。
「行ってきます。」
俺は写真の中の母に一言添えて家を出た。
家を出ると村のみんなが家の前で待っていた。
みんなそれぞれ暖かい言葉をかけてくれているんだろうが、あまり今の俺の頭には入ってこない。
俺はからっぽな返事を返しながら村と外界を繋ぐ唯一の手段である橋までやってきた。
橋をかけるための木製で出来たレバーの傍には親友が待っていた。
この村は元々大きな切り立った崖だったらしくその崖の地面を爆破して崩し今のような完全な孤立状態を作り上げたそうだ。
親友は何も言わず俺と目を合わせると強く頷いてレバーを引いた。
レバーを引くとゆっくりとロープが伸び始め、やがて橋が対岸の地面へと繫がった。
橋を渡り終え振り向くと村のみんながこちらに手を振っていた。
俺も手を振り返しとりあえず一番近い街へと続く順路に足を踏み出した。
一番近い街までは歩いて二時間ほどかかる。
木々の生い茂る道なき道を進み、腕時計を見ると針はだいたい午前十時三十分を指していた。
着いた頃には昼過ぎか。
問題は街に着くまでの間、如何に奴らとの接触を避けるかだ。
なるべく音を立てないように移動し周囲への警戒をしながら歩みを始めて二十分ほどが経過しようとしたとき、最初の奴を発見した。
その容姿を見た瞬間俺は記憶がぶり返し、思い出させられた。
胸の奥からブワッと広がるように一気に恐怖の感情に支配された。
物音を立てないように木の陰に移動し様子を伺う。
もはや元が人間であった事実がかき消されるほどに、人であった面影など全くないように見られるそいつは、全身が猿のように毛深く、眼球は抜け落ちており、身体中のあちこちには経過によって赤黒く凝固した血液がこびりついていた。
幸いにも相手は一人で、こちらが先に気づいたため自身の位置から30メートルほど先にいるそいつは、こちらには振り向くこともなく低い唸り声をあげながら同じ場所をウロウロとしている。
この場合回避することはそれほど難しくはない。
俺は今いる木の陰から迂回路を見出しソイツから距離をとるようにその場を離れた。
「フゥ、ここまで来れば大丈夫だろう。」
足早にあの場を退散し俺はひとまず安堵の息をついた。
やはりいつ見ても悍ましいな。
幼いころ初めて、奴ら【徘徊者】について話を聴いたときはそんな怪物いるわけがないと思っていた。
粘膜同士、又は対象者の粘膜に体液が触れただけで触れた相手を同じワンダラーにしてしまうなんてそんなのまるでおとぎ話のゾンビみたいじゃないかと。
当時はそう思えるほどに無知だった。
そして、これ以上無いほど真剣に話している母親の口から出る言葉から現実逃避し、自分には関係が無いと思えるほどに子供だった。
まだ村を出て三十分も経っていない。
「クソッ。」
母親の事を思い出し余計にセンチメンタルになってしまった分思わず言葉が出てしまった。
このペースだとあと何体と出くわすか想像しただけでも恐ろしい。
俺は先の読めない恐怖を胸に抱き悶々とした不安が鳩尾辺りをグルグルと回っているような感覚を覚えていた。
しかしここで足を止めていても何も事は進まない。
俺は頭を切り替え立ち上がり再び街への方角に向けて足を動かす。
しばらく進み長く続いていた足元の悪い森を抜けると昔使われていたと思われるアスファルトで出来た道路に出た。
その道幅は広く、そこかしこには主を失い物としての活動を既に終えていた車やバイクなどが、長い年月放置されていたために植物が張り付き、ボロボロの状態で置かれていた。
道路のアスファルトも同様で、あちらこちらに大小無数の亀裂が走り、道の端に設置されている道路を照らすためのライトには長く伸びた植物が絡みついている。
一通り見渡してみると生き物の気配もなく、道路は目指している街の方へと伸びていたため俺はその道を辿ることにした。
森林の中とは違い足元がしっかりとしているため幾分か歩きやすい。
街まではまだかなりある、あまりゆっくりはできないが安全には細心の注意で行こう。
俺は目指す目的地がある方を眼で見据えた。
作品を書くというのはやはり難しいなぁと再確認させて頂きました。w
リメイクとはいえ過去の自分の欠点や文章、言い回しなどあれもダメこれもダメもっとわかりやすく簡潔にそして面白くというのを意識すると執筆が楽しくて止まりませんでした。w
ここから更に面白くなってまいりますのでまだプロローグですが皆様どうか引き続きご愛読の方をよろしくお願い申し上げます。