表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/29

5.

 二時間ほど仮眠をとって、目を覚ます。

 携帯を取り、麻耶の携帯の利用状況をチェックする。

 指示した通り、誰かと連絡をとった形跡はない。

 SNSにも未接続。


 まあ、実際に何かしようとしてもはじかれるようにはなっているのだが。


 さて、身支度を整え、「機関」から届いた情報に目を通す。


 西方十字教会の火事は確認している。

「機関」のエージェントにして、神父藤倉進の消息は不明。

 火事による死者については身元不明だが、体格から藤倉神父ではないことが確認されている。

「機関」からのメッセージには、今のところ返信はないため、情報収集中。


 そして、ニュース記事のリンクがついていた。


 東京 世田谷区の西方十字教会で火事


 昨日夕刻、東京 世田谷区の西方十字教会で火事が発生しました。

 午後7時すぎ、世田谷区の西方十字教会の建物から火が出て、消防車など25台が消火活動にあたり、火はおよそ7時間後に消し止められましたが、併設していた住宅と合わせておよそ180平方メートルが全焼しました。


 警視庁によりますと、この火事の男性1人が死亡し、この男性の身元は、いまだに判明していないとのこと。教会の神父藤倉進(42)の行方は不明とのこと。


 歯切れの悪い記事だな。

 ついでに、機関の情報センターが持っている情報が、この程度ってことには、ちょいと不満だ。



 俺はメッセンジャーを起動して、一人の相手を呼び出す。

 しばらくして、ビデオ通話の着信がある。

 画面にはアニメ風美少女のアバターが映っている。

「ひさしぶりだな。で、ヒマなのか。一発で捕まるなんざ、あんたにしては珍しいと思うんだが」

「いやいや。大龍寺の和尚からのひさしぶりの連絡だ。出ないわけにはいくまいよ」

「ありがたいことだな」


 通話の相手は「鴉」という通り名を持つ情報屋。

 一年ほど前に、ちょっとしたピンチを助けてやってからの関係だ。


 そういう意味では義理堅いヤツではある。


「世田谷の火事は知ってるか」

「藤倉のだんなの教会だな」

「犯人を知らないか」

「すまん。それは拾えてない」

「拾えたら、ネタが欲しい。何でも」

「キーワードが西方十字教会ってだけならなくはないんすけど」

「どういうことだ?」

「結構な重要人物がお忍びでこの国に来ています」

「重要人物?」

「聖母騎士修道会のディエゴ・ガルシアと古き栄光の騎士修道会のフェルナン・フェルナンデス」

 西方十字教会の武闘派中の武闘派。

 いわば、教会の持つ軍隊、騎士修道会。

 当然という言い方は何だが、騎士修道会のメンバーは、「機関」の武装勢力としても名が通っている。俺のようなフリーランスが受ける泡沫仕事ではなく、文字通り「世界を揺り動かす」案件に対して、西方十字教会が直々に乗り出し、「機関」としてふるまう時の、文字通り手足であり、盾と剣でもある。


 その中でも、特に名前の通った二人だ。


 そんな連中がそろって、日本へ。

 仲良く京都観光でもしようってのか?


 そんなわけあるまい。


「でも、聖母騎士修道会と古き栄光の騎士修道会って、仲悪くなかったか」

「まあ、ねえ。仲悪いねぇ」


 と、いうことは協調よりも、競争の可能性がある。

 西方十字教会の武闘派二人。いや、当然部下たちもいるだろう。

 そんな連中が出張ってくるとなれば、この案件、西方十字教会の内ゲバ案件?

 だが、藤倉さんがそんなハズレくじ引くか?

 あの神父、何やかや危なっかしいが、退転して西方十字教会を抜けるなんてことはない人だぞ。


「ありがとう。助かった。また、何か情報あったら、メッセくれると助かる」

「あいよ。何に首突っ込むかなんてのは聞かねえよ。命大事にな」

「ああ、お互いにな」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ