表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/29

21.

 俺は借り物のダッジ・チャージャーを桟橋の駐車場に止めた。

 黒髪のメイドが運転しているのを見て、罪悪感を覚えたので、運転を変わってもらったのだ。


 ダッジ・チャージャーはアメリカのクライスラーが生産した4ドアセダンだ。

 5.7リットルのV8ヘミエンジンを搭載した、マッスルモデルも存在する大柄な車だった。

 だが、その大きな車を、子どもに運転させているような感覚がぬぐえなかった。


「そろそろ名前を教えてはくれないか」

「私はユーリ」

 と、黒髪のメイド。

「私はエマ」

 と、銀髪のメイド。


 ユーリとエマ、か。


「ユーリさん」

「ユーリでいい。どうせ、違和感を感じているのだろう」

「まあ……な」

「我々もリョーマと呼ぶ。気にするな」

「あいよ」


 どうも調子が狂う。


 桟橋にたどり着くと、トランクから装備を引っ張り出す。

 俺は僧衣の下に防弾ベストを着こみ、無線機用のイヤホンマイクを耳にはめる。

 そして、タクティカルベルトを用意し、MK3手榴弾を二つと弾倉の入ったケースを腰に巻く。

 メインアームは、結社の用意したものの中からSIG551を選んだ。

 P210と同じく、スイスのSIG社が開発した自動小銃SG550のコンパクトバージョンだった。


 そう言えば、バチカンも、SIG550を使っていたな、とふと皮肉を感じる。


「これをつけておけ」

 ユーリが一組の籠手を差し出してきた。

 鈍い赤色をした金属でできた籠手だった。

「5.56mmくらいなら止められるし、日本刀の一振りも止める」

「ありがとう。もらっておくよ。これはセラミック?」

 見たことのない質感の素材に疑問を持って尋ねた。

「言わぬが花だな」

 ふむ。何か神秘の産物ということか。


 そう言う、ユーリとエマは、メイド服の上からチェストリグ、要は予備弾倉やら何やらを装備するためのベルトだが、それを装備していた。

 メインアームは、オーストリア製の自動小銃ステアーAUG。

 ブルパップと呼ばれる、トリガーの後方に機関部と弾倉を配置することで、全体のコンパクト化を狙ったものだ。次世代の主流と考えられ、70年代に各社が様々なモデルを開発したが、その中でもっとも成功したモデルと言える。


 とは言え、現代の主流はコンサバティブなAR15系とカラシニコフ系である。

 時代の流れというものは残酷なものだ。


 フォアグリップ周りに、いくつかのアクセサリが取り付けられているが、二人の間で、、仕様が微妙に違っていた。

 エマの方が長銃身で、M203グレネードランチャーが装備されている。

 一方ユーリの持つステアーAUGは、切り詰めた短銃身にフラッシュライトなどだ。

 そしてもう一つ、目立つのはユーリが持っている盾だ。

 俺がもらった、籠手と同じ材質なのだろうか。

 一部、透明な素材で視界を確保している。


 おそらくは、ユーリがタンク役、敵を引きつける役で、殲滅するのが、エマなのだろう。

 とはいえ、潜入ミッションでタンクというのも考えものだが……。


 それと、サブアームは愛用品なのであろう、先ほどから使っているグロック19。また、ユーリだけは渡りが30cmくらいありそうな長めのタクティカルナイフを装備している。


 装備一式から連想するのは、SWATのような警察特殊部隊だ。


 それでいて、頭にメイドプリムをつけているあたり、本当にわからない。

 全身タクティカルスーツでもおかしくないレベルの装備に関わらず、秋葉原のメイドそのものの恰好だ。


「なあ、あんた達、どこで訓練受けた? 警察か」

「私は自衛隊とPMC。エマは故郷の軍隊で徴兵」

「え?」

「この盾かい? まあ、暴動鎮圧用に見えるな」

 そう言って笑った。

「我々の仕事はあくまで、陽動だ。せいぜい派手にやらせてもらう」

「格好も派手だしな」

「まあ、これは制服だからな」

 制服って……。

「誰の趣味なんだ?」

「神様だよ」


 神様……、か?

 不信心者の集まりだと思ってたんだかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ