表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

9

映画館に着くと、かなり人が多かった。


「ポップコーンは塩派? キャラメル派?」


「私はキャラメルかな」


 逆だ……。


「ペアセットでいい?」


「うん、いいよ」


 まあ、たまにはキャラメルでもいっか。


「飲み物は何がいい?」


「私はオレンジジュースかな」


「ポップコーンセットのキャラメルで、飲み物はオレンジジュースとジンジャーエールでお願いします」


「分かりました。お二人はカップルですか? 今、カップル割りをやっているんですが、カップルでしたか?」


「いえいえいえ、ち……違います」


 そこまで否定されたら悲しいんだが。


「恥ずかしがりさんですね。ホントは証明してもらわないと行けないのですが、こっちで勝手に割引しときます」


「あ……ありがとうございます」


 何もしなくても割引されるならラッキーだろう。


「証明って何させられんだろうね?」


「漫画みたいにキスとかはないと思うけど、手を繋ぐとか?」


 実際のカップル割は初めて見た。


「なら、ギリギリ出来たかも」


「まあ、手を繋ぐくらいなら出来そうだね」


 この後、ポップコーン売り場でハグしているカップルを見て自分の運の良さが分かった。流石にハグはキツイって。


「映画は始まるまでが長いんだよね。燈夜くんはこの時間好き?」


「あんまり好きじゃないけど、この時間があるから、今後何の映画を見るか決めれるんじゃない?」


「まあ、そうだよね。私はマナー注意のやつが好きだよ」


 カメラの頭をした人やポップコーンの頭をした人が出てくるあれだろうか。その気持ちは、かなり分かる。


 映画が始まった。ポップコーンを取ろうとして、手が触れる。そんなことは、全くなかった。どうやら、現実はラブコメじゃないらしい。


 しばらくして、佳音が眠っていた。起こすかどうかかなり迷う。軽くチョンとしてみる。そうすると、なんだか楽しくてほっぺをツンとしてみた。同じ人間とは思えない触感をしている……。


「ふえ」


 アホな声をあげて起きた。


「と……燈夜くん、ほっぺつついた?」


「ごめん、ちょっと、面白そうだったから……」


「起こしてくれたんでしょ、ありがとう」


「いやいや、あ、うん。起こしただけだよ」


 そう、起こしただけだ。ホントだよ……。


 映画も終盤に差し掛かった。


「グスッ、ズッ」


 途中で寝ていたのに、隣で佳音は泣いていた。感受性豊かなのだろう。俺は映画で泣けたことはない。


「グスッ、ほ……本当に良い話だったね」


 映画が終わると泣きながら感想を言われた。


「うん、最近観た中で一番良かったよ。佳音のセンスいいね」


「ズッ……ありがとう」


 佳音が泣き止むまで三十分かかった。


「明日から学校だね」


「うん、明後日には中間試験があるよ」


「え……うそ、勉強してない」


 おい……。俺らペアだぞ。


「でも、俺らは二百点は最低でも貰えるよ」


 俺は六百点くらいかな。


「そ、そうなの!」


「ルールの六章読んどけよ。稼いだライフの二倍が点数に入るよ」


「そうだったんだ。なら、安心だね」


「まあな」


「学校では裏切りだらけだね」


 俺がその風潮を作ったのだろう。


「大丈夫、佳音は裏切らない」


 今のところはな。


「私は燈夜くんを信用しているけど、本当に燈夜くんはあの学校で、私を信用してくれるの?」


 俺はいつも通り嘘をつく。


「ああ、もちろん。信用してるぞ」


 俺はあの日から、人を信用なんてしたことがない。人間を信じ続けると、いつか痛い目にあう。それは、身をもって知っている。


「嘘つき」


「へ?」


 予想外の言葉にアホな声が出た。


「燈夜くんは今日、何回か嘘ついたでしょ」


「え……うん」


「ポップコーンはキャラメル派じゃないでしょ。私を起こすためにほっぺつついたんじゃないでしょ。私のこと、信用してないんでしょ」


 何も言えない。ここまで全て嘘がバレているなんて……。


「俺はある日から人を信用しなくなった。信用しなくなったというよりも、信用出来なくなったの方が近い。何があったかは言いたくない。とにかくあることをキッカケに人を信用出来なくなったんだ。だから、佳音を信じれないのはそれ以外の理由はないんだ。もしかしたら、その考えが頭をよぎる。どんだけ信用しようとしても心の奥底では人を疑ってかかっている。だから、いつかちゃんと信じれるまで、待っていて欲しい」


 これは嘘では無い。


「分かったよ。私は燈夜くんを信じている。私ね、最近、最近というかクラスメイトが十人になった日に、人が言ったことが本当か嘘かどうかがちょっと分かるようになってきたんだ。人の声色や顔色や声の震えなんかで、嘘かどうかがわかる……。だからこの間、雅に会った時驚いた。雅という人間は嘘で塗り固めて出来ている、そのことを知っちゃったの。そんな人生を送っているからには理由があり、辛いと思うの。だから、燈夜くんに私と一緒に、雅を助けて欲しいの。お願いします」


 俺は今年一驚いた。不知火雅に裏があるのは、何となく分かっていた。だから、そこまで驚かなかった。それ以上に佳音が嘘が分かるというのに驚いた。五感が優れており、嘘がある程度見破れる。『特殊諜報員』として、優秀すぎる人材だろ。嘘が下手でも、確実に重要な人材だろう。俺が佳音を生かしたのは、この優秀さを予感していたからなのだろう。そう、思ってしまう程のものだった。これは、恋なんかじゃない。だから、紺野佳音という人間にとって重要な人間、不知火雅を助けるのは、手伝うだろう。


「分かった。俺が何が出来るかは分からないが、全力を尽くす。これからも、よろしくな。相棒」


「ありがと、雅は嘘つきでもいい子なんだよ」


 佳音は絶対俺が守る。不知火雅は危険だと分かったら切り捨てる。佳音のことを少し信じれそうだ。


 翌日、テストを受けた。予想以上に難しかったから、不安になった。しかし、帰りのホームルー厶でその不安は消えた。


「この学校は一年で高校生の勉強を全て終わらせるからねー。だからー、普通のテストよりも難しいんだよー。二年、三年では特殊なことをしてもらうからー。因みに、国語が百点、数学が百点、英語が百点、理科と社会を合わせて百点で、全部で四百点満点だよー。それを五分の四にして、ライフを稼いだ分の二倍の点をテスト点に加えてるよー。学年一位には、シルバーライフを学年五番以内には、ライフを十が与えられるよー。下から五人はライフがマイナス五だよー」


 そういうのは、先に言え! そうツッコまずにはいられなかった。あと、一つテストに気になる問題があった。


 ボーナス問題:このテストまでに、学校で何回嘘をついた?(この答案に嘘を書くと退学です。ちゃんと、注意して書け)


 これを見てどう思う?嘘ついたら退学って重すぎません?だから、これは重要な問題なのだろう。それだけは、理解した。翌日、テストの結果が出ていた。いくらなんでもはや過ぎない?


 一位:桐生燈夜


 一位:紺野佳音


 三位:神宮寺小雪


 四位:山口杏奈


 五位:御園虎羽


 今回は恐らく、完全勝利だろう。神宮寺が三位なのは想定内だ。他の人が五位以内に入っていないのが、良かった事だ。


「みんなー、おめでとー。これで私たちのクラスは上クラスだよ。でも、今日の放課後には第一回ダウトテストだよ」


「先生、それって上クラスなのは意味がないんじゃないんですか?」


 相変わらず、北村が手を挙げる。


「北村くん、愚かだねー。上クラスはテストの結果が一割増だよ。それに、今回のテストの結果はちゃんと、ダウトテストに影響するよ。北村くんの点数はクラスで下から二番目だからねー」


 あれ、下いたんだ。


「これから、ダウトテストのルールをまとめた紙を配布するよー。放課後までにちゃんと、読んでおいてねー」


 ダウトテスト


 ダウト人狼ゲーム


 ルール


 一:八人グループが九グループ組まれている。


 二:毎日、昼の設定(十分)の時、会議で一人を追放できる。


 三:毎日、夜には役職の役割が行える。


 四:全員、手ぶらで個室でテストを受けなければならない。会議や役割や個チャは個室に設置されているパッドで行える。他の機能は使えない。使ったら脱落。


 五:役職は八つあるが、出てこない役職と重複する役職もある。


 六:役職、人狼は毎晩選択した人を襲える。


 役職、騎士は毎晩選択した人を守れる。(自分はダメ)


 役職、占い師は毎晩選択した人が人狼か村人陣営か占える。


 役職、狂人は占いでは村人とと出るが、人狼陣営である。


 役職、村人は何も出来ない。


 役職、ハンターは自分が死んだ時に道連れを作れる。


 役職、てるてるは三日目に追放されたら、一人勝ち。


 役職、霊媒師は毎晩、死んだ人が人狼か否か占える。


 七:最後まで生き残ったら一位、その次は二位……最初に死んだら八位となる。


 一位には、二五六ポイントとシルバーライフ


 二位には、一二八ポイント


 三位には、六四ポイント


 四位には、三二ポイント


 五位には、一六ポイント


 六位には、八ポイント


 七位には、四ポイント


 最下位は、マイナス一六ポイント


 クラスメイトのポイントの合計をクラス単位で競う形である。


 八:毎晩、嘘をついた人を密告できる。


 密告が成功して、次の日の朝まで生きていたら、被密告者は追放。


 密告が失敗したら、密告者は追放。


 九:四日目の朝をもってゲームを終了とする。




 ……これはまずい。


「キノコ先生、今回はクラスのポイントの合計・・何ですか?」


「そうだよー」


「おかしくないですか? そんなの俺らのクラスが不利過ぎるでしょ。人数比がかなりやばくないですか?」


「そうだねー。でもね、それは自己責任だよー。燈夜くんも愚かだねー。ちゃんとルール読んでみたら?」


 ルール?


「三章の一文目、クラスのみんなで協力しましょう。君はクラスの人達を切り捨てたんだよ。ちゃんと、ルールは守らないとね」


「クソ、やられた」


 協力か……。今更どうしようもない。神宮寺達、中クラスは全員残っている。神宮寺はここまで読んでいたのか……。このダウトテストは下クラスにならないことに尽くさないといけない……。俺は絶望した。視界の端にキノコ先生に話に行く、山口を見たが、どうしようもなんないだろう。

読んでくれてありがと‼︎

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ