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俺、桐生燈夜はひたすら監視カメラでダウトされたやつをメモっていた。しかし、最終戦の山口と御園だけは見ていた。他クラスにもやばい奴がいる。その事実が俺の胸を高鳴らせる。これから、こんなヤツらとやり合える機会が増えてくるだろう。こいつら全員蹴散らして、上クラスに上がることを決意した。
「桐生、密告しに行こうぜ。」
御園が一人でやって来た。
「ああ、リストまとめたぞ。」
「おお、すげえな。二百近くあるじゃねえか。」
「山口はどうした?」
裏でこそここされていたら、迷惑だ。
「ちょっと、トイレだってさ。」
「ずっと、ダウト漬けだったからな。」
「ちょっと、待っとくか。なあ、桐生。俺の事、信用出来たか?」
「ああ、勿論。」
俺は平気な顔して嘘をついた。
「じゃあ、これからは下の名前で呼ばせてもらうぜ。」
「虎羽は見た目程不良じゃねえんだな。」
「うっせ。」
「ごめん、待たせた。」
山口が来た。
「それじゃあ、行くか。」
「れっつらごー。」
山口のやる気のない声が廊下に響く。今回で寮生のほとんど・・・・は退学になるだろう。不可解な点がいくつかあるが、それは一人で解決するべきだ。
「キノコ先生、密告します。」
「おー、どうぞどうぞ。三人ともするの?」
「はい。これがリストです。全員まとめてお願いします。」
「おっけー。明日の朝、寮で嘘発見器にかけておくね。」
「ありがとうございます。」
明日には大量のライフを手に入れるだろう。
「クラスメイトの次は寮生か。君たちはもうちょっと、考えて行動するべきだよ。深くは立場上言えないけどね。」
どういうことだ?
「全員倒せば一位だろう。」
虎羽の言い分も分かるが、キノコ先生の言ったことがひっかかる。どこかで似たようなことを言われていた気がした。
「御園くんは、そう思うのか。そっかー。まあ、いいんじゃない。がんばれー。でも、燈夜くんは今のままだと危ないね。」
何が言いたい?何への警告?俺には分からなかった。
「なあ、打ち上げ行こうぜ。」
虎羽は何も気にしてないらしい。
「分かったけど、どこでやるの?」
「打ち上げと言えばカラオケ?」
「杏奈歌うのかよ?」
「私は歌わない。」
「じゃあ、何でカラオケ何だよ?」
「虎羽が一人でアニソンを熱唱。それを見て私と桐生くんは笑い転げる。」
「アニソンとか歌えねえよ。」
「じゃあ、何を歌えるの?」
「国家。」
「「は?」」
「何だよ、お前ら国家歌えねえのかよ?」
こいつ大丈夫か?
「カラオケで国家(笑)」
「おい、その(笑)は何だよ。」
「いや、虎羽のセンスがおかしいだろ。」
「カラオケで国家とか論外、馬鹿、虎羽。」
「最後のやつ悪口じゃねえだろ。」
「で、どこに行く?」
「おい、燈夜。俺無視すんなよ。」
「カラオケ行こ。私も歌ってあげる。」
「分かった、虎羽の国家を楽しもうぜ。」
「右に同じ。」
「てめえら、巫山戯んなよ。」
カラオケに行く途中、色んな人から変な目で見られていることに気づいた。すれ違う度にヒソヒソと隣の人と話される。
「俺らなんか変かよ?」
「俺もわからん。虎羽の目を見て通報に一票。」
「俺の目そんなに変か?」
虎羽は自分の目が怖い自覚が、無いようだ。
「さんぴ」
「おい。やめとけって。」
二人の通行人の声が聞こえた。
「私、一人じゃ、二人相手にもたない。」
「真面目に返答すんなよ。」
男二、女一でしかも、男の一人がヤンキー。まあ、誰でも反応しそうである。
その後、虎羽が周りを睨みながら、歩いていたので、人が避けて行くのでカラオケに行きやすかった。
「とりたえず、虎羽の国家。」
「あ?やり方わかんねえ。」
「お前、カラオケ来たことある?」
「ねえよ。」
まあ、国家とか言ってる時点で察してたけどさ……。
「可哀想な人。」
「杏奈はカラオケ来たことあるのかよ?」
「勿論。」
「じゃあ、国家いれといてくれ。」
教わるんじゃなくて、入れさせるんだね。その後、俺らは後悔した。虎羽は壊滅的に歌が下手だった。
「吐きそ……う。助けて、桐生。」
「ビニール袋でいい?」
「ありがと。」
「お前らどうかしたか?」
難聴は主人公の特権だぞ。
「お前はもう、歌うな。」
「右に同じ。」
かくして、虎羽は歌う機会を失った。
「ちょっと、飲み物とってくる。」
「じゃ、俺も。」
「そして、虎羽はそのまま私と抜け出して……。」
「しねえからな。」
「俺を置いていくなよ。」
俺が歌っている間にちゃんと二人とも戻っまで来た。
「お前も人のこと言える歌じゃねえな。」
「は?お前、点数見てるか?」
「俺は五十ピッタリだったな。」
「それ、最低点、虎羽乙。」
そこは黙っといても良かったよ。
「それで、俺は八十五。全然違うのわかったか?」
「百かその他かだろ。」
「いや、百とか普通出ないからな。」
「普通出ないだけで、出せる人もいるんだろ。」
虎羽の理論は共感出来なさそうだ。
「私も歌う。」
上手い……。音程が一回も外れてないし、ビブラートの数もやばい。そして何よりも声が歌手と同じだ。
「百点かな?」
結果、百点。
「ほらな、世の中百かその他か何だよ。」
「あー。」
ちょっと分かった。山口杏奈の歌は才能だ。どれだけ努力しても、これに勝てる未来が見えない。
「声真似、出来るのか?」
「うん、よゆー。」
これは、『特殊諜報員』になったら、かなり役に立つ能力だろう。変装……。声が真似できて、姿が真似出来たら、それは本物だ。
「何で最初、歌わないって言ったんだ?」 「だって、上手すぎて周りからひかれる。それは悲しい……。だから、人前では歌わないようにしていた。でも、虎羽のへったくそな歌を聞いたら、強い不快感。それを消すために歌った。即ち浄化。」
「悪かったな。そんなに下手くそで。」
一つの才能を発見したことに満足していると、打ち上げは終わった。
翌朝、俺らは驚くことになった。虎羽からメッセージが来た。
『神宮寺も他人を密告していた。訳わかんねえ。俺と杏奈も密告されていた。しかも、神宮寺のクラスは神宮寺が、救済して退学者が一人もいない。今回のイベントは、神宮寺の一人勝ちだ。』
『テストで挽回しよ。』
そうメッセージを残して、少し考える。神宮寺は一度も嘘をついていなかった。神宮寺は今回の作戦を理解して、便乗したのだろう。そしてもう一人、嘘をつかなかった人がいた。その人は……。
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