表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/15

14

俺、桐生燈夜は不知火雅の話を聞いて結論を出した。


「物心ついた時の疑問を素直に口にして、ちょっとな生意気なガキが不知火雅なんじゃないのかよ?」


「え?」


「だってそうだろ。その頃までは自分を偽ってなかったんだろ。」


 それ以外に何がある。


「雅、もう自分を偽らないで、自分を偽ることは自分を傷つけるんだよ。自分を持たないと人は幸福になれないんだよ」


「で……も、お父さんはそれを許さない」


「ほら今、人の意見を否定したよ」


「あ……ごめ……ん」


「謝らなくていい。確かに人の意見を否定するのは良くないこと。でも、全く否定しないことが一番悪いことなんだよ」


「ほ……んと?」


「うん、雅はもう高校生でしょ。父親から逃げれるんだよ。学校やめてうちで暮らしてもいいよ。私が上クラスになってたんまり稼ぐから」


「な……なんで? 私の為にそこまで?」


 不知火は疑問を口にした。あと一歩。


「だって、親友でしょ?」


 果たしてこの関係を親友と呼べるのだろうか。もし、不知火が佳音の家で暮らすとしたら、それはヒモだ。不知火は佳音に申し訳なさを抱えて、過ごすことになるだろう。それにクラスから不知火雅という人間を失うのは惜しい。


「一度、父親と話してみたらどうだ?」


「お父さんと?」


「ああ、それで殴られそうだったら逃げてこればいい」


 その父親はそろそろ冷静になっている筈だ。だって、妻を亡くしてもう十年の時間が経っている。それでも殴るなら、それはそういう人間だったということだ。


「それは危険だよ。昔みたいに雅が監禁されたら、どうするの?」


 しかし、父親がもう正常だったら、その選択肢は間違っているだろう。だが、佳音の言っていることも一理ある。


「のんのん、ありがとう。やっぱり、一度話してみるよ」


「で……でも」


「大丈夫。明日いなかったら、のんのんが助けに来てね」


「……分かった」


 佳音は長く悩んだ末、了承した。さて、どうなるだろうか?


「ちょっと、寄り道して帰ろうよ」


「いや、既に寄り道してるからな」


「燈夜くん、小さいこと気にしてるとハゲるよ」


 はげねえよ。


「ストレス発散にボーリングしたい」


「お、雅。いい感じだね」


「そう?」


 これ以上今日は疲れたくないんだけどな。


「二人の方がいいか?」


 優しさに見せかけた逃亡を図る。


「桐生くんもいてもいいよ。のんのんと二人きりも嬉しいけど、桐生くんは別に居ても嫌じゃない」


「私は燈夜くんがいた方が嬉しい」


「へー、私と二人きりよりもそっちがいいんだ」


「いや、そういう事じゃなくて。いないかいるかだといた方がいい的な?」


 俺の扱いてきとうだな。逃げられないなら、ちゃんと楽しむか。


「女子二人と男子一人か。両手に花じゃん」


「そうかもな。この前は逆だったけどな」


 あの時も俺以外の二人の方が仲良かったんだよな。なんか、い心地が悪いのは、変わらないみたいだ。


「この前?」


 雅が素直に疑問を口にしている。適応が早いな。


「ああ、虎羽と山口さんとカラオケ行ったんだ」


「山口さんって、うちのクラスのクール×可愛いの凄い人の?」


「いや、佳音の印象は知らんけど、その人だよ」


 クールっていうかあれは何なんだろうな。


「虎羽って誰?」


「あ、それ、私も気になった」


「のんのんも知らないの?」


「うん、同じクラスの人かな?」


 いや、隣の席だろ。


「あの、金髪ピアスのやつだよ」


「えー。あの不良?」


「いや、実際不良じゃないからな」


「のんのん、隣の席じゃん」


「まあ、まあ。雅は隣の席の人覚えてるの?」


「え、いないよ。両隣退学」


「その節はごめんなさい」


「別にいいよ。隣の席の人、一回も喋ってないもん」


 隣ぐらい喋れよ。


「それにしても、あの席順どうやって決まっているんだろうね?」


「てきとうじゃね?」


 あんな学校だから、何か意図があるのかもしれないが、案外キノコ先生がてきとうに決めてそうでもある。


「席替えあるかな?」


「普通は、テストごとにあるけどね」


「確かに。私達の中学もテストごとだったね」


 キノコ先生だから、面倒くさがりそうだ。


「そういや、雅はダウトテストどうやって一位をとったの?」


「色んなキャラで人に取り入った」


「うわー。ひくわ」


「燈夜くん、雅をひかないであげて」


「桐生くん、酷い」


「え? 俺悪い?」


 冗談半分だったのに……。


 まあ、いろいろ話している内にボーリング場に着いた。


「最下位は罰ゲームね」


「のんのん、自信あるの?」


「ううん、ボーリングは初めて。でも、運動は得意。」


「いいよ、初心者には負けれないよ」


「あの、俺男子だけどいいの?」


「いいよ、よゆー」


「燈夜くんに勝てるかは分からない」 これは男子の意地として、負けれないな。


「私がエントリー表出しとくね」


 不知火がエントリー表を出している間に、佳音と飲み物を買いに行った。


「運動する時、何飲む?」


「普通にスポーツドリンクだけど、ボーリングだからな」


「私はオレンジジュースにしよっと」


「じゃあ、俺はサイダー」


「雅は何がいいと思う?」


「佳音の方が付き合い長いだろ」


「そうだった。じゃあ、私と同じやつ」


 エントリー表を書き終えたらしい不知火がこっちに歩いてきた。


「私、オレンジジュース嫌い」


「えー」


 知ってるんじゃなかったのかよ!


「だって、雅はいつもオレンジジュース飲んでたじゃん」


「キャラ作りの一環だよ。私はサイダーの方が好き」


 それは、寄越せってことかな?


「まあ、いいけど。ほれ」


「ありがとう」


 プシュー


 俺が投げたサイダーを開けたら、サイダーが吹き出した。


「ちょっと、雅。大丈夫?」


「大丈夫……じゃない」


 制服のシャツが透けてきた。


「ちょっと、燈夜くんは向こう向いててね」


「わ……分かった」


 約一分


「もう、いいよ」


「了解」


 振り向くと、長袖のニットに身を包まれた不知火が居た。


「桐生くん、三時間は許さないから」


「それ、今日中に許す気ないよな」


 俺はこの時、自分の失敗に気づいていなかった。


 自分たちのボーリング台に着くと、俺と佳音は目が一点に集中した。


 一レーン:不知火雅


 二レーン:世界一可愛いのんのん


 三レーン:アホ


「おい、アホって何だよ。」


「何となく、サイダーかけられる予感がしてて……」


「雅、嘘ついてる」


「あー、ごめんごめん。自販機の前でのんのんとイチャイチャしてるの見て、ムカついたからアホにした」


「三時間は許さないからな」


 やられたらやり返す。


「じゃあ、チャラってことで」


「ってか私の名前も何?」


「そのままだよ」


「そんな真っ直ぐな目で答えないで」


 俺らに精神攻撃だろうか。しかし、そんな必要はなさそうだった。不知火の初球はストライク。


「雅、もしかして得意?」


「もちろん。『特殊諜報員』なるもの運動神経は大事だよ」


 初球はどう飛ぶかの予測だろ。絶対やり慣れてるだろ。


「ふ、私もストライクとってくるから」


 カッコつけた佳音の初球はガター。


「こんな筈じゃ……」


「まだまだだね」


 俺は無難に九本倒した。


 中盤、不知火は相変わらず殆どストライク。


 佳音はだんだんストライクかスペアになってきた。


 俺は、ガターが増えてきた。


 終盤、不知火は相変わらず殆どストライク。


 佳音は全てストライク。


 俺は、ガターかスペア。


 結果、俺の惨敗。


「男子の癖に弱いね」


「お前らが強すぎるんだよ」


「二ゲームは私が勝てそうだね」


「無理無理、のんのんにはまだ早い」


「あの、そろそろ帰る時間じゃね?」


 それもそうだろう。放課後ダウトテストを受けてカフェに行って、ボーリングをしているのだから、かなり遅くてもおかしくない。


「あ、桐生くんは罰ゲームね」


「燈夜くんの罰ゲームどうしよっか?」


 あれ?そういえば、罰ゲームの内容を決めていなかった。ぬかった。男子ということで完全に油断していた。


「桐生くんが罰ゲームなるのって、多分少ないよね」


「確かに。燈夜くんは、だいたい何でも強いもんね」


 ヤバい……。俺の本能がそう告げる。俺は今、あの二人の言うことを聞かないといけない立場だ。ヤバい要求されたら逃げるけど、まともな要求は聞かないといけない。何がくる? 精神攻撃はやめて欲しい。


「じゃあ、いつか一回ずつ言うことを聞くでいいんじゃない?」


「流石、雅。天才」


「でしょでしょ」


 攻めれるギリギリできた……。


「分かった。変な要求以外はのむ」


「桐生くん、楽しみにしとくね」


「燈夜くん、覚悟しなよ」


 あー、最悪だ。油断大敵だ。ルールはちゃんと確認しとかないと……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ