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私、紀このはは燈夜くんを見て恐怖をおぼえた。やる気のなさそうな目と裏腹に一瞬であの数の人を倒した。しかも、一番クラスに利益がかえってくるようにだ。私はこれからも燈夜くんに期待するのだろう。




 俺、桐生燈夜は佳音の反応を見て驚いた。


「え? 全員が人狼だったの?」


 知らなかったのかよ。それで、一位を取れたんだから、凄いな。


「最後なんで私が勝てたの?」


「推測だけど、筆記テストの結果じゃねえか?先生が関係してくるって言ってたし。そしたら、俺も佳音も最強だろ。」


 絶望したもののダウトテストを受けたら、拍子抜けだった。手応えのある敵がいなかったが、残念だ。


「燈夜くんも一位かあ。他の人の結果も楽しみだね」


「ああ、信用してないけどな」


「お、燈夜くんも正直になったね」


「嘘ついても仕方ないしな」


 今更だろう。


「今日の帰りが本番だよ」


「え? テストより不知火だったのか。」


「当然でしょ。今回、上クラスにならなくてもいい。最後に上クラスだったら問題ない。だから、今のうちに雅を選んでおかないとダメなんだよ」


 そう言う佳音は何処か苦しそうだった。


「とりあえず、教室に戻って結果発表だな」


「そだね。上クラスなれたかな?」


「今はいいんじゃなかったっけ?」


「だって、月四十万の違いだよ」


 確かに給料はアホみたいに違う。


「まあ、中クラスぐらいじゃねえの」


「えー、ワンチャンを信じなよ」


「無理無理。でも、俺の責任なんだよな」


「何、言ってんの。残ってた人は下位層だから、マイナスになっていたと思うよ。まあ、三十人はやり過ぎだけど」


「ごめん、ごめん」


 さて、差はどんくらいだろうか?




 私、神宮寺小雪は悟った。自分は負けてしまったんだと。私のタブレットに運営からきた通知。


『貴方は、密告されました。嘘つきさん、サヨウナラ。』


 山口さんにやられましたか。ちょっと、調子に乗りすぎていましたね。冗談なんかも嘘判定ですか……。完全にのせられましたか。巫女さんに御園くんの寝込みを襲いに行かせる気なんてありませんでしたしね。寮でのことで完全に見下していました。次は油断しませんから。


 ピピピピピ


『最終結果、一位山口杏奈、二位椎名巫女、三位神宮寺小雪、御園虎羽、最下位瓜江豹、前田百合、中西菜々子、野々村真。』


 まあ、上クラスは確定ですかね。あの人が本気を出していたらいいんですけど。




 七話嘘は己を破壊する


 俺、桐生燈夜が教室に着くと他の人は全員居た。


「それじゃー、結果発表するよー。私達上クラスは一四四八ポイントに一割増で一五九二・八ポイントだよー」


 かなりいい結果何じゃないだろうか。


「中クラスはピッタリ二千ポイントだから、私達は今から中クラスでーす。残念。もう少し人数がいたら、勝てたかもねー。因みに下クラスは九八0ポイントだよ」


 黒板に紙が貼られた。


 Aグループ:一位中クラス山口杏奈


 Bグループ:一位中クラス北条唯


 Cグループ:一位上クラス龍崎尚也りゅうざきなおや


 Dグループ:一位下クラス志田しだノエル


 Eグループ:一位中クラス不知火雅


 Fグループ:一位中クラス紺野佳音


 Gグループ:一位中クラス桐生燈夜


 Hグループ:一位上クラス伊沢大翔いざわひろと


 Iグループ:一位上クラス大澤由奈おおさわゆな


 黒板に掲示されたクラスはもう、変わっている。俺の責任なのだろうか? 次は勝てるのだろうか?


「今回のダウトテストは簡単なやつだったけど、これからは規模が大きくなるからねー。今回のはー、練習的な、やつなんだよー。あと、首席は廊下に張り出されているよ。ちゃんと見ておいてね」


 首席


 上クラス:神宮寺小雪


 中クラス:不知火雅


 下クラス:瓜江豹


 評価基準は何なのだろう。不知火が首席ということは、あのボーナス問題の答えが関係してるのかもしれない。首席については暫く様子見しよう。


 教室に戻ると佳音が近づいてきた。


「今から雅と帰るんだけど、燈夜くんも来る?」


「あー、行く」


 不知火が何なのかは普通に気になるしな。


「桐生くん、おひさ〜」


「おう、久しぶりだな」


 クラスメイト退学させる前日だっけ?


「あれ、二人って面識あったの?」


「うん、一回だけね」


「へー」


 暫く歩いてカフェの前で止まる。


「ここ寄っていい?」


「いいよ」


「いいぞ」


 恐らくここで話すのだろう。


「雅、単刀直入に聞くけど本当の雅ってどんな感じなの?」


「あー、気づいてたか……。いつ気づいたの?」


「つい最近だよ。それまで気づけなかったが、悔しいよ」


「本当の私かあ。そんなのあるのかな?」


「どういうこと?」


「私は小さい頃から、自分を偽って生きろって言われているから。それに従って行くうちに沢山の私が出来上がった。私はのんのんと仲良くなったから、このキャラで通すことにしたんだ」


 何を言っているんだろう。嘘を全くつかなかったら、それが本当の「私」というものなんだろう。自分を偽っていたら、自分が分からなくなった?それなら、偽るのをやめればいいだけだろう。俺は思っまた事をそのまま言う。しかし、不知火からの反応は予想外だった。


「それが家の方針だから、変えたら怒られちゃうの」




 私、不知火雅は、ノーマルスクールの理事長である不知火恭弥きょうやと居酒屋でバイトをしていた母親の間で生まれた。


 物心ついた時には、母親はいなくなっていた。そして、何故か父親から一つ約束しろと言われた。


「己を偽って生きろ。自分をもつな。他人の言葉を常に疑え」


 私の返答は冷めていた。


「一つじゃなかったの?」


 こんな五歳の女の子を父親は反射的に殴った。私は何故殴られたかを考えた。私の返答が足りなかったのだろうか?


「その意図を説明しないと約束出来ない。意図をちゃんと説明して。もし、納得出来たら約束する」


 私はまた殴られた。


「俺への口答えと質問は禁止。禁止されても、約束を守らないならその時はまた殴る。殴られたかったら俺に言い返せ」


 意味が分かんない。私はそう言おうとしてやめた。また、殴られると思ったからである。殴られるのは嫌だ。痛い。


「返事をしろ」


 そう言って父親は私を蹴飛ばした。


「ん」


 痛くてまともに声が出ない。


「返事は、はいだ」


 さらに、追い打ちがきた。


「はい」


 その日、風呂に入ると身体中に痣が出来ていた。


 翌日、夏なのに長袖の服を着させられた。


「暑いよ。どうして?」


 私は普通の疑問を口にした。


「質問禁止」


 腹に拳が飛んできた。


 痛い、痛い、痛い、嫌だ、嫌だ、嫌だ。


 私はそのまま吐いた。


「汚い、吐くな」


 理不尽に私はビンタされた。その日、私は幼稚園を休まされた。父親から逃げられると思っていたのに……。


「今日はこの部屋から出るな」


 それを聞いて私は安心した。父親と合わなくて済む。


「返事は?」


 そう言いながら殴られた。


「は……い」


 私はかろうじて声が出せた。


 私はその日ご飯が食べれなかった。何故かって?


「お腹空いた」


 部屋から出て父親に言ったら、殴られた。


「今日は飯抜きだ」


 私はその日トイレに行けなかった。


「トイレ」


 部屋から出て行こうとした。


「部屋から出るな」


 私は蹴られた。その場でおしっこを漏らした。


「汚い」


 更に蹴られた。


 翌日、私は自分の尿の臭いで満ちた部屋で目を覚ました。


「掃除しろ」


 雑巾とバケツが投げつけられた。


 どうやったら、父親から逃げられるのだろう? 助けてよ、お母さん。


 そう願っても意味はなかった。それから、一年間父親から自分を偽る方法が叩き込まれた。幼稚園は、不登校という形で片付けられていた。最低限の食事と睡眠。それと、過酷な指導。それが私の一年間だった。


 小学校に入学した時、私は完璧に自分を見失っていた。疑問は口にしない。質問もしない。自分でどうにかする方法を身につけていった。


 しばらくして友達が出来た。その人たちを騙しているって思っても、私の心は痛まなかった。


 私は身勝手なことを願う。


 誰か私を見つけて。本当の私を暴いて。軽蔑されても友達がいなくなってもいい。私の嘘を見破って。


 高校受験の時、父親から一枚の紙が投げ渡された。それは、ノーマルスクールの受験票だった。


「ここを受けろ。ここしか受験するな」


「はい」


 その頃はもう殴られることはなかった。


 私は元々、ノーマルスクールを受けるつもりだった。なぜなら唯一期待している友達が受けるからだ。


 その人は、のんのんこと紺野佳音。


 観察していたら分かる。この子は人一倍五感が鋭い。小説で出てきた五感の鋭い登場人物は人の嘘が見破れる。


 しかし、いくら待ってものんのんは私の嘘を見破ってくれなかった。のんのんは嘘が苦手なのに、ノーマルスクールを受験した理由が分からない。それでも、私は疑問を口にしなかった。


 そして今、のんのんが私の嘘を見破ってくれたことに感謝している。安心したら涙がボロボロ落ちてきた。


 私はこれまでの日々のことをそのまま話した。泣きながらゆっくりと。

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