説教をされるが反省はしない
「私はどスケベでど変態のストーカー女です」と書かれた首掛け看板をぶら下げるクリームヒルトとブリュンヒルデ。勿論二人は正座させられていた。
「おにぃ、グンテル公爵令嬢との婚約はなくなった筈だよね。それなのになんで下着姿でおにぃの上に股がってたのかな。それに今は王太子殿下の婚約者だよね。」
ごもっともです........
「ジークフリートとの婚約を解消した覚えはない。ネーデルラント侯爵が子息、シグルドがジークフリートが死んだなどと虚偽の申告をした故に我が愚父とクラキ王が勝手に話を進めただけだ。それにフロールフはそこの女に熱を上げている。私の出る幕はない。」
「はぁあ?フロールフ先輩とはそう言う関係じゃないですぅ!ブリュンが好きなのはジークくんだけなんですぅ!婚約者なら婚約者らしくフロールフ先輩と結婚したらどうなんですかぁ?」
フロールフ先輩がいたたまれなくなってきた。一応は『ニーベルンゲンの災い』のパッケージのど真ん中にいる攻略対象者だからね。余談ではあるが、シグルド兄さんは隠しキャラみたいな扱いなので、パッケージでは後ろ姿で映っている。
「あいつはただの友人に過ぎん。むしろ最近ではお前と会話している方が多い。そら、近頃流行りの悪役令嬢追放物語でもしてみればいい。仲がいいんだろ?フローフニに泣き付いて私を追放してみろ、出来るのならな。」
悪役令嬢追放物語って......スローライフ計画の第二項目だよ、それ。なんで本人が自ら誘発させようとしてるの?
「あー言いましたねぇ!いいですよ!やってやりますよ!!明日行われる社交界で公爵令嬢の地位を無くしてやるんだから!」
社交界.....何処で?隣に立つジークリンデに目を向けると、此処を指指した。
「__________ネーデルラント城でってこと?聞いてないんだけど!」
「言ったらおにぃ、逃げるでしょ?」
逃げるけどさ......明日って突然過ぎるでしょ。
「やれるものならやってみろ。あぁ、『勇者』もお前に惚れ込んでいたな。手を借りて見たらどうだ。此処はネーデルラント領、長子であるシグルドも明日には帰ってくると侯爵が言っていたな。お得意の色香で誑かせば、フロールフ共に私の追放を後押ししてくれるかも知れないぞ。」
「ッ.............性悪女、追放される覚悟を決めておくことね。」
バチバチとにらみ合いを続けているが、先ほどジークリンデに槍の柄で殴られたせいか互いに大きなたんこぶが出来ている。そして今度は二人へと拳骨を落とすジークリンデ。
「「痛ッ!!」」
なにするんだ!!と叫ぶ両者にジークリンデが冷たく「うるさい」と言うと二人は黙った。
「おにぃ、追い出した方がいいよ。」
二人へと顔を向けると首を横にブンブンと振るう。
(追い出したいけど、絶対に戻ってくるんだよなぁこの二人.........)
ジークリンデはまだ、この二人の異常性を理解していない。クリームヒルトの束縛はきつい。死んだと報告を受けても尚信じず、全財産を叩いてまで探しだそうとした執着心がある。「約束」という言葉をクリームヒルトは多用しているが、束縛する言い訳に使っているに過ぎない。本質は変わっていないんだ。
「流石にそれは酷いと思う。」
「本当にそう思ってる、おにぃ?」
そしてブリュンヒルデは混沌をもたらす災厄。歩く災害発見器又は災害発生器だ。何せこの世界元来の主人公であり、世界を平和に導く聖女。行く先々でイベントに直面し、常に周りを巻き込んで問題を解決しようとする。人の話を聞かない自己完結型サイコパスなのだ。
(辺境で冒険者をしてスローライフを送れていたのに、こいつのせいで学園に強制連行されたのはいい思い出だよ。)
皮肉が効いているだろう。皮肉だもの。
「________________あぁ、もちろん」
この二人を邪険にし過ぎれば感情が押さえられず、爆発して監禁or殺害エンドになりかねない。故に餌(優しさ)を定期的に与えてなければならないのだ。
「おにぃ、多分絶対いつか殺されるね」
ジト目でそんなことを言ってくるジークリンデになんて事を言うんだと心の中でツッコむ。
「でも大丈夫___________リンデが守ってあげる。」
腕へと抱き着き「えへへ、頭撫でて」と愛くるしく微笑を見せる愛妹。可愛すぎるだろ。




