ブリュンヒルデとクリームヒルト
かれこれ二週間前に遡る_______
「ブリュンヒルデ、暫くは休校になるらしい。何か予定は立てているのかい?」
ジークくんを見つけられず、ウルズの泉にあるベンチで黄昏ていたらフロールフ先輩から話を掛けられる。
「フロールフ先輩.....そうですね、実家に帰ってパン屋さんのお手伝いですかね、はは」
作り笑いで答えると、フロールフ先輩は何処か寂しそうに「そうか」と答える。
「僕は冥界の件について、父に報告に戻らなければならない。王城に一緒に来てくれると嬉しいけれど、ご家族に会いに行くのなら仕方がないね。学園にいる間は中々と家族に会う機会が少ないからね。羽を伸ばして来るといい。」
優しい微笑を浮かべ、ブリュンヒルデの頬へと手を当てると、フロールフは去って行った。
(........ジークくんに会いたい)
ただ、その感情だけが頭の中を支配する。フロールフ先輩は美形で優しくて気遣いの出来る男の子だ。もし、ブリュンヒルデがジークフリートに出会っていなければ好きと言う感情は彼に向いていたかもしれない。けれど、その感情はジークフリートに出会ってしまった為に未来永劫、訪れることはないだろう。
「スノッリ、もう僕は行きたいんだけど......」
「殿下とブリュンヒルデが話している姿を見たと話していたではないか.......阻止するのに協力して貰うぞ!」
「え、えぇ.......」
ウルズの泉をブリュンヒルデを探す為に散策するディートリヒとスノッリ。その姿を見てブリュンヒルデは隠れる。
(そろそろブリュンもバルドル領に向けて旅立とう。)
そしてウルズの泉をスノッリ達に見つからないように抜け出す。
「.........ジークくん」
そして学園へと戻ると、大きな荷物を持ったジークフリートが学園から去ろうとしている姿を目にする。ブリュンヒルデは大急ぎでジークフリートに元に駆けつけ、腕へと引っ付く。
「ジークフリート」
「ジークくん」
(..........はぁ?)
なんで行く先々でこのクソ女と遭遇をするのだろう。しかもタイミングを見計らったかのように同じタイミングで抱き着いて。
「何処に行くつもりだ。私を側に置けと約束をしたばかりだろう?」
そうだ。先ずはジークくんに追求をしないと行けない。なぜブリュンを置いて、学園を去ろうとしたのか。許せない。こんなにブリュンは君が好きなのになんでそんなに冷たいの。最近だと鉢合わせするだけでも「げ!?」とか失礼な驚き方するし。ブリュンヒルデだって傷付くんだよ。
「なんですぐ逃げるのかな。ジークくんはブリュンの従者だよね?」
ジークフリートはブリュンと性悪女を引き剥がして、目的地を告げてくれた。
「侯爵家に帰省をするつもりなので放して貰っても宜しいですか、お嬢様方。」
お嬢様方なんて.....えへへ。じゃなくて目的地は分かったよ。大丈夫、ジークくんが寂しくならないようにちゃーんとついて行ってあげるからね。ジークくんの面倒はブリュンがしっかりと見てあげる。
「「また会おう(ね)」」
この性悪女、なんで一々台詞が被るのかなぁ......しかもあっちもメンチ切ってくるし。
「あぁん?喧嘩したいのかなぁ、性悪女。」
「また豚がブヒブヒと鳴いている。小屋にでも戻って糞でも漏らしたらどうだ。」
「「喧嘩上等!!」」
と性悪女と喧嘩をしながらネーデルラント領へと着く。だが、正々堂々とジークくんの実家へと入れば追い出されるのは確かなので、待女の格好で潜入することにする。隣にいる性悪女もどうやら同じ考えだったようで、待女の姿へと着替えていた。
「______ん、あぁ、そういう......はは、中に入りなさい。」
門兵へとジークフリートの待女であると言うと、案外簡単に通してくれた。
「あぁ、君たちが門兵くんが言っていたジークフリートの......まぁ、ジークフリートもそう言うお年頃かぁ。そら、此処が君達の部屋だ。好きに使うがいい。」
ネーデルラント侯爵自らが部屋へと案内をしてくれた。なんて寛大でお優しいお父様なのだろう。お義父様とお呼びをしてもいいかな。いいや、何れはそう呼ぶに違いない。
「「お義父様!」」
本当になんなの、こいつ........
「お義父様か......良いじゃない!是非ともジークフリートとは末永く宜しく頼むよ。」
「「はい!」」
お義父様公認かつ、許可を貰ってしまった。これってもう半分くらい結婚だよね。あまりの嬉しさに踊り出しそうになる。
「いて」
「あつ」
すると性悪女と身体がぶつかってしまった。こんな狭い場所で踊ろうとするな。気色悪い。
「__________こんな狭い場所で踊ろうとするな。気色悪い。」
「それはブリュンの台詞だよ!」
...............本当にこの女嫌い!




