ジークリンデは槍使い
妹のジークリンデは『槍使い』と凡庸な職業適性を受けている。
(俺がなぜ、剣を使わずに槍を好んで使うのか..........)
それはジークリンデの適性に由来する。冒険家の基本能力はどのような事でも基本出来るが、職業適性者以上の事は出来ない。だが、平均的な指標となることが出来る為、特訓相手には持ってこいの相手となれる。
「ジークリンデ、準備はできたか?」
引きこもりの妹に特訓をつけよう。いざという時の為に自衛の手段を学ばさなければならない。
(ジークリンデには才能がある。それを眠って置かせるのはもったいない。)
「槍使い」として成長をさせるには槍使いを相手させて技術を吸収させるのが効率がいい。当初はジークリンデを将来的に鍛える為にと槍を主武装としていたけれど、いつの間にか双槍が手に馴染むようになってしまったな。
「うん、おにぃとの特訓、わくわく」
槍で演舞を見せ、かっこよく此方へと矛先を見せるジークリンデ。
(あ、あれ.......引き込もってたんだよね?)
型も良く、筋肉もつき過ぎない程に仕上がってる。
「おにぃに勝ったら、リンデをパーティーメンバーにして」さっ
「あ、ちょ、まって!!」
ジークリンデは駆け出すと、自前の槍で連続突きを放ってくる。
(思ってた以上に速い.......だが)
上手く槍で捌きながら一歩距離を詰める。
「________間合いをなくせばこうなる。」
驚きはしたが、まだまだ未熟。手首を押さえつけ槍を振るえなくする。
「........えへへ、おにぃ好き」
近付いたジークフリートにジークリンデは槍を手放し、抱きついてしまう。
「はぁ........ジークリンデ」ピシッ
「あぅ、いたいじゃないか」
おでこへとデコピンする。ジークリンデは頭を抑え、ぷくっと頬を膨らませてしまった。
「特訓中だぞ。」
「これも特訓の一環」
ハグして匂いを嗅ぐことを特訓とは言わない。
「それじゃあ、男の子が戦う相手だったら同じ事をするのか?」
「おにぃだけ」すりすり
再び抱き着き、すりすりと身体を擦りつける。可愛い......可愛いがこのままでは本当にジークリンデの為にならない。兄離れをさせなければ。
「ジークリンデ、お兄ちゃんを好きなのは嬉しいけどそろそろお兄ちゃん離れしないと駄目だぞ。」
頭を撫でながら優しく諭す。だが、ジークリンデは首を横に振るう。
「おにぃと結婚するからいい。」
むふーと顔をお腹へと押し付ける。可愛い。いかんいかん......よし、此処は心を鬼にしてジークリンデに嫌われなければならないな。
「お兄ちゃんな、今学園で付き合っている人いるんだけど「「誰!!!?」」
控えていた待女二人が大きな声を出す。何事かと其方を見るが、すっとぼけた様子で一礼をすると去って行ってしまった。
(あの待女達二人......何処かで見たことあるんだよなぁ。)
一週間近くネーデルラント領で過ごしているが、何処に行くにしてもあの二人がついてくる。なんだか見張られている気がするのは気のせいだろうか。
「________おにぃ、やだ」
抱き着く力が強くなる。そしてジークリンデが顔を上げると虚ろな目をしていた。
「一人にしないで。結婚していいからジークリンデも連れて行って。おにぃと一緒がいいの。もぅ置いてきぼりはやだよ。」
涙目で抱き着くジークリンデ。母さんはジークリンデが物心つく前に病気で亡くなってしまった。そしてシグルド兄さんは父上の手伝いで忙しくあまり相手が出来ない。
「ごめんな、兄ちゃんが付き合ってるってのは嘘。」
必然的に面倒を見ていたのは自分になる。故にジークリンデは此処までブラコンを拗らせているのだ。
「大丈夫、俺はジークリンデを見捨てたりなんかしないよ。」
頭をよしよしと撫でると嬉しそうに笑みを浮かべる。
「特訓の続きをしようか。」
もしかしたら俺はシスコンなのかもしれないな。
「_________うん!」




