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ジークリンデはブラコンである

ジークリンデの部屋の前へと辿り着く。溜め息を吐きつつ、ドアをノックした。


「ジークリンデちゃん、俺だ........開けてくれないか?」こんこん


中から凄い物音がする。恐らく大急ぎで準備でもしているのだろう。そして暫くすると扉が少しだけ開く。


「............おにぃ」


扉の隙間から目が合うと、直ぐに扉を開け自分を部屋へと引き吊り込む。


「本物のおにぃ.........すぅーはぁ」


椅子へと無理矢理座らされ、しがみつくように自分の上へと乗る。対面前椅座位という奴だ。


「ちゅーーーーーーんんん?」


それに無理矢理とキスしてこようとしているので、手で妹の口元を抑える。


「ジークリンデちゃん、そう言うことは未来の旦那様にしようね。」

「なら問題ない......おにぃとリンデはずっと一緒だもん。」

「俺が結婚してもついてくる気か?」

「ついていく」


なんと言う自信満々な回答。


「はぁ.....父上も待っているし、昼食にしよう。」

「うん」


自分の上から退き、手を伸ばす。どうやら手を繋いで欲しいらしい。


(それにしても.......)


ジークリンデの部屋は様々な形の『ジークフリート』の肖像画で埋めつくされていた。ジークリンデについて、何故あまり言及をしたくなかったかと言うと、彼女が超のつくブラザーコンプレックスであるからだ。


(そういえば部屋に籠り始めたのは丁度、クリームヒルトと婚約者関係になってからだったなぁ。)


ジークリンデの部屋を退出し、食堂へと向かう事にする。部屋の外で待機をしていた待女達も後を追うようについてくる。


(シグルド兄さんはいつも忙しくて俺達に余り構ってくれる時間はなかった。だから必然的に妹の面倒を見るのは俺の役目だったんだ。)


何処に行くにしても後ろをついてくる。おにぃおにぃと可愛らしくついてくるため、つい甘やかしてしまった。


「おにぃ」

「どした?」

「好き」


だけどいかんせん、俺以外とは余り話さなくなってしまったんだ。シグルド兄さんには辛うじて答えるけど、無関心に近いし。


「おう、俺もジークリンデちゃんの事が好きだぞ」

「ふふん、好き同士」


ご機嫌が更に良くなる。頭を撫でると子猫のようにとろんとした惚けた表情を見せ、抱きついてくる。


『『チッ』』


何故だかは知らないが、後ろに控える二人の待女達が舌打ちをしたのは気のせいではないだろうか。


「父上がまだ引きこもってるって聞いたぞ。」

「おにぃがいない。寂しい。もっと構って。」


腕へと引っ付き食堂へと繋がる廊下を歩く。


「俺だって構ってやりたいけど、いつも一緒って訳じゃないんだ。余り、父上を困らせてやるなよ。」

「いつも一緒がいい。」


ぎゅっと腕を握る力が強くなる。


「おにぃと結婚するのはジークリンデ。約束した。」


小さい頃に「おにぃと結婚する!」と言っていたのを思い出す。もぅ五年も前の話だ。ジークリンデも今年で13歳になる。そろそろ兄離れをしなければならない歳だ。


「そうすればずっと一緒にいられるよ」


食堂に着き、椅子へと座るのだが、何故、自分の膝の上に座る。ジークリンデを持ち上げ、隣席へと座らせると頬をぷくっとした。可愛い。


「おにぃ」


ちょんちょんと頬をつついてくるジークリンデ。


「どした、ジークリンデちゃん?」

「おかえりなさい」


ブラコンではあるけれど、心優しい妹であることには変わりないと俺は思う。


「_____________あぁ、ただいま。」

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