退院祝い
(仲間にしてくれ..........か。)
メングラッドの館では醜態を晒していたが、グローアの実力は本物だ。対抗戦で戦ったから理解出来る。魔法袋がなければ勝てなかった。そしてそれすらも失った現状の自分には奴に単体で勝つ術はない。
「__________返事は夕刻までに知らせてくれればいい。」
グローアはすれ違いざまにそう告げると、歩き去ってしまった。
(グローアを仲間に入れるかはロキに相談してからだな。それに彼奴は何か大きな勘違いをしていると思うし。)
スローライフ計画の根幹は堕落とした生活を送るためのものである。特別な目的が在るわけではない。仲間に入りたいと言うのなら別に断る理由はないし、ロキに相談してから仲間入りの有無を決めようと思う。
「___________スケッゴルド!」
スケッゴルドのお見舞いに足を運ぶと高速で頬をロキにぶたれているスケッゴルドの姿が目に入る。
「痛い痛い痛い痛い痛いってロキぃ!もう起きたから!死んでないから!」
「死ないでスケッゴルド!せっかくトレーニングして上げたのに無駄死にするなんて聞いてないよ!」
「ちょっ、モルド、助け、ぶぐぅふ!!」
高速ビンタにより壁際に飛ばされるスケッゴルド。そしてロキは驚いた表情でスケッゴルドを見る。
「生きてた!」
「さっきからそう言ってるよね!!?」
..............スケッゴルドが元気そうで何よりだ。
「まったくあんたは..............心配させんじゃないわよ。」
モルドは呆れた表情を見せていたが、スケッゴルドが意識を取り戻したことに安堵していた。
「___________ロキえもん、ちょっといいか?」
なんとなくモルドとスケッゴルドの雰囲気が宜しいので、ロキを連れ、病室を退室することにする。
「えもん?......まぁいいや。どうしたの、僕の愛しのジークフリート。」
ロキは距離を近付け、上目遣いで自分を見上げる。なんと言うかあざと可愛い。絶対にわざとやってると思う。
「グローアが俺たちの計画に加担したいって言ってる。」
ロキは道化師の仮面を被り、ジークフリートの胸元をなぞるように人差し指を当てる。
「ジークフリートは国を作ろうと考えたことはないかい?」
国を作る。一度も考えたことがないな。建国チート系の異世界物語は確かに面白いけれど、自分は恐らくそれには該当をしないだろう。目指すはほのぼの系の異世界ライフだ。
「平和で自由な国を作ったあとは影武者に国を守らせて、辺境で気ままに過ごす。そんな選択肢だってあるんだよ?」
ロキの発言に思わず「それいいな!」と答えてしまう。するとロキは口元を大きく歪め、ジークフリートに抱きついた。
「ジークフリート、急用が出来たから休校中は会えないかもだけど、心配しないで。僕はずっと君の事を思ってるから。」
そう言うとロキはその場から走り去ってしまった。なんだったのだろう。取り敢えずやることもないのでスケッゴルドの病室へと戻り、雑談をしようと思う。
「______あれ、ロキくんはもう帰ったのかしら?」
「なんか急用が出来たっぽい。」
たくさんのお見舞いの品を物色し、モルドさんと分ける。
「なぁ、それ俺のだから!」
そしてスケッゴルドの病室でだらだらと茶菓子を貪り、寛ぐジークフリートとモルド。
「............もう帰ってくれないかな?」
スケッゴルドは二人の寛ぎように堪忍袋の緒が切れそうであった。




