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冥界の支配者ヘルは疲羸している

四天王全員が予想通りに全滅しました。

まぁこれまでも冥界の扉が開かれる度に四天王の子達は全員殺されてますし、むしろ通常運転と言ってもいいですよ。


(でもね、何も思わない訳ではないんですよ。とくにガルムは私の腹心中の腹心。昔から私に忠義を尽くす番犬さんですからね。)


ガルムが初めて殺された際には怒りのあまり地上に赴き、五割の生者を虐殺して、冥界に魂を連れて帰りましたからね。


(あの頃は私もまだまだ青二才で、子供だったんです。)


とは言え近年の四天王は【どうせヘル様が最後には生き返らせてくれる】と軽い気持ちで生者に喧嘩を売っては殺されているので同情のしようがありません。


『でぇじょうぶだ、ヘル様がいるから生きけぇる!』


見たいなことを城内で働く死者達がこそこそと話しているのを知ってますからね。



(とは言え、もうじきにこの子以外の生者達もこの城に辿り着く頃合いでしょう。)



激しい戦闘の跡が物語るエリュズニル城、王の間。


「それが貴方の限界なのですよ、勇気ある者。」

(お城の修繕、めんどくさいですねぇ......)


冥界の女王ヘルは玉座に座り、目に前の魔剣使いを嗤う。


「もう諦めなさいな。古今東西、どのような英雄英傑であれ私は倒せません。ヘルヘイムにいる私は正しく「神」ですからね。全ての権限を握っているんです。例え巨人スルトが生きていようと、この世界では彼すらも私の敵ではないのです。この意味がお分かりですか、竜殺しの英雄シグルド。」


冥界の女王ヘルと対峙するシグルドは肩で息をしていた。


(グラム=バルムンクの完全解放、そして勇者の覚醒能力を最大限で用いたが傷一つ付かない、か........まいったな)


逆に身体の至るところに傷を負わされてしまう。身体が軋む。全力戦闘での活動限界が近い。


「貴方を倒せばアングルボサの呪いも弱まる。神や巨人の時代は終焉を迎え、人の時代となった。冥界の女王ヘル、貴方のような存在はこの世界には必要ない。潔くその首を差し出してくれないか。」


ヘルは鋭い眼光でただ静かにシグルドを見つめる。


(この男に何度説明しても無駄ですか......)


玉座から立ち上がり、ゆっくりとシグルドへと近づく。


「___________がっ!!?」


四肢が潰される。そして、地面へと仰向けに倒れるシグルド。


「これで理解しましたか。歴然たる力の差と言うものを。如何なる加護や魔剣を用いようとも我が世界、ましてや我が居城では何の意味も為さないのです。」


シグルドの胸へと短剣を突き刺し、耳元でそう告げる。シグルドは口から血を吐き出し、意識が徐々に遠くなっていくのを感じる。


「_________あぁ勇者よ、死んでしまうとは情けない。」


ヘルは短剣を胸から抜き、即座にシグルドの首を切断し介錯する。


「ですが大丈夫ですよ。最後には生き返らせて上げますから。」


玉座へと再び座り、肘をつく。


「覇王に聖者、聖女までいるのですか........」


七英雄の内の「五人」が冥界へと侵攻してきたことになる。


(冥界の損害が大きいのも頷けますね。)


王の間へと辿りつく「覇王」「聖者」。そして今現在上空からこの城へと向け落ちてきている「聖女」。「狂戦士」は城前で「軽騎士」、そして「美髪王」に介抱されている。


(ん、可笑しいですね........冥界から「冒険家」と「冒険王」の気配が消えました。)


私の監視網から逃れるのは不可能な筈。冥界全域に目を張っているのですから。


(それに気掛かりなのはこの二人に同行している生者の存在がぼやけて見えること...........)


職業適性や覚醒能力が見えない。ヘルが持つ『冥界の目』は冥界にあるもの全てを見通す。生者とて例外ではない。


「このような芸当が可能な人物は一人だけ思い浮かぶのですが.........まさか、その生まれ変わり.......いいえ、ありえない」


疑念を振り払い、目の前の生者達へと意識を向ける。


「___________よくぞ来ましたね、侵略者達。」


皮肉を込めて間に現れた生者達をそう呼ぶ。


「はっ、地上へと死者を流すお前がよく言う。」


レイピア状の細剣を掲げ、冥界の主を見上げる覇王。


「貴方が、冥界の女王ヘル...........倒させて貰う。世界の為、人類の平穏の為に。」


聖者は数多の加護を覇王へと掛ける。聖者は後方支援に特化した七英雄。


(死者を流すって.....勝手にヘルヘイムの扉を開けたのは貴方方ですよね?それに世界の為、平穏の為って......何を根拠に言っているのでしょう。むしろ私が世界の平穏や人々のためにより良い国作りをしてますよ。)


生者にとっては死後になりますが、意外と死国は平和だって好評なんです。


(一部の戦士が暴れたくて騒いでるだけで普段は平和そのものなんです。むしろこっちの世界の方がより良い暮らしを出きると断言出来ます。)


生者に突っ掛かる死者は大概、過去に戦士だった者達に限られます。地上に勝手に出ていってるのも基本こいつらです。普通の住人達は大人しく慎ましやかに暮らしているんです。


「アングルボサの呪いを解きたいのでしょう.......ですが残念です。あなた方では私を殺すことは不可能でしょう。そこの死骸を見なさい。あなた方七英雄の頂点と言ってもいい「勇者」です。大人しく降伏すれば地上へとお返しましょう。勇者も生き返らせてあげます。」


先ずは説得から初めよう。神は尊大で偉大であることを伝えなければなりません。


「_____________笑止。お前は此処で死ね。」


尋常ではない重圧がのし掛かる。常人がこれを喰らえば今頃肉塊と化し、平らな肉板となっているだろう。


「血の気が多い事ですね_______________」


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