冥界の支配者ヘルは沈鬱
冥界ヘルヘイム、居城エリュズニルにてヘルは鬱を患っていた。
ラグナロクのお陰でアースガルズの神々を含む全ての生命がほぼ死に絶えた。やっと、静寂を手に入れられると思った矢先に母アングルボサが呪いを残して死んでいった。地上に這い出る魔物達は私たちがいる限りわき続けると言う。
「英雄達に私たちを殺せって言ってるのと同義ですよね、それ。」
海底の底で大鎚ミョルニルにて封印されている兄『ヨルムンガンド』、そして沼の奥底に鎖グレイプニルにて封印される長男『フェンリル』。可愛そうですけど、暴れまくってましたし、自業自得かなって思います。
(いやだってあり得ない人数を殺して私の仕事を増やしましたし......)
暫くは封印されて反省していて欲しいです。とは言え父、悪神ロキもラグナロクで死んでくれて良かったと思いますよ。あの人いつも面倒事ばかり持ち込みますし。母父共にろくな親じゃない。消えるべくして神々と巨人は消えたんです。
(はぁ、鬱です......一定周期で地上からヘルヘイムへ繋げてくる愚かな生者達がいるんですよね。)
それでいつもこの城にたどり着くのは『七英雄』と呼ばれる今の世界の英雄達。彼らはいつも同じ台詞を吐くのです。
『世界の為にお前を倒す!』
私は魔王ですか?違います。私は死者の国の統治者です。兄達と違ってこの世界に必要な楔の一つなんです。アングルボサの呪いなんて英雄達が一致団結すれば倒せるレベルでしょ。なら我慢しなさい。英雄とは魔物を討つために存在する生き物。
「どうせ私たちを倒したって今度は人間同士で戦争をするだけなんですから今の現状がベストではないですか。」
アングルボサの呪いという人類の敵がいるからこそ人間同士の争いが少ないんですよ?
(いえ、だって世界が滅びる前世界よりは死亡率が低くなってますし.....)
数字が出てます。結果が出てるんですよ。
(まぁでも私個人としては兄たちを殺しても構わないとは思いますけどね。)
アングルボサの呪いの強度を下げる事が出来ます。そして私の仕事量も『減る』と思います。私が『ヘル』だけに.......なんちゃって。とは言え私は殺さないほうが世界の為なのは確かです。
ドンドンドン
扉が叩かれる。恐らく私の第一腹心、番犬ガルムくんだろう。ハスキー頭に貴族服を来た二足歩行。冥界二番手の強さです。もちろん私が一番強いですけどね。えへん。
『『ヘル様!緊急事態です』』
一定周期のお時間のようです。
はい、ヘルヘイムの扉が勝手に開いた件について.....
「ヘル様、地上より英雄達がヘルヘイムへと下りて来ております。」
十中八九、私を倒す為ですねぇ..........
「ヘル様、死者達が地上に出ております。」
どう見ても地上側からヘルヘイムへ繋がる次元に亀裂を入れたからですよね.....
「ヘル様、死者達の回収はどう致しますか。」
どう致しますかって、英雄達は確実にルーンで死者の魂を浄化するのですから回収も何も出来ませんよ.....
「英雄達の対処はどう致しますか。」
冥界四天王を集めて下さい。まぁどうせ四天王は最終的に倒されてエリュズニルの王の間で私自ら魔王ロールプレイでしょうけど........
「あの、ヘル様?」
「もぅ何ですか!せっかくラグナロクが終わったのに......いつもいつもいつも生者達がヘルヘイムの門を勝手に抉じ開ける癖に被害者面するんですからぁもぅ!私自らナグルファルで出向して生者達全てを殺して上げましょうか...........」
ナグルファルとは死者の爪で造った船である。ラグナロクに際にて、ヘルは船に死者を満載してアースガルドに乗り込み、巨人族に加勢して神々と死闘を演じた。もちろん全ては愚父ロキの命令で執行したに過ぎない。
「本気ですか、ヘル様!」
「冗談です。それしたら世界の均衡が可笑しくなります。はぁ、四天王で倒せたら上々。もし倒せなくとも私が成敗した後に地上に送り返します。その後に門の修復作業に移りましょう。」
ヘルヘイムにいるヘルは最強である。故に全てを客観視して見ているのだ。全ては世界が平常で在らんが為に。
ヒロインが非処女で何が悪い!〜幼馴染は何故か処女です〜
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