王のベルセルク
ボズヴァル・ビャルキは戦場にて鞘付きの剣を振るう。その背後にはフロールヴ王太子が王権としても象徴される剣スケヴニングを抜刀し、構えていた。
「殿下、くれぐれも私の側を離れないで下さい。そして剣を攻めに使うのではなく、守りにお使い下さい。」
フロールヴに近づこうとする死者達を一切の容赦なく浄化させていく。ビャルキにとって世界の脅威など二の次だ。守るべきは主君であるフロールヴ•クラキを置いて他にいない。
「いいや、そうもいかないよ。僕は王族である前に七英雄の一人、「聖者」に選ばれた人間だ。ラグナロクの再来が来たと言うことは僕は僕の使命を果たさなければならない。」
ビャルキの隣に立ち、スケヴニングを掲げる。
「僕はこれまで父の言い付け通り学園に職業を偽ってきた。けれど、今は僕の力を世界を救う為に使わなければならない。大いなる力には大いなる責任と義務が生じる。ボズヴァル、君の力が必要だ。手を貸してくれ_________この世界を救う為に」
ビャルキはその場に跪く。死者の軍勢が二人を取り囲んでいるが二人は冷静としていた。
「私は貴方のベルセルクです。我が剣を持って外敵を排除しましょう。」
360度、四方から襲い掛かろうとしていた死者の軍勢がビャルキの抜刀により氷結される。そしてもう一度剣を宙にて振るうと氷結は砕け周囲一帯の死者が粉々になる。
「ありがとう。さぁ、奥へ進もう。」
ビャルキはフロールヴの後ろへと着き、亀裂の中へ侵入するために中央を目指す。
「ちょーーーーーーっと待ったぁ!!!」
死者の肉片と共に目の前へと着地する血塗れの聖女。
(七英雄が一人、聖女......)
ビャルキはブリュンヒルデを睨み付ける。
「やめてくて。彼女は僕の大切な人だ。」
フロールヴはそれを目で制止する。そしてブリュンヒルデへと向き直り、いつも通りの微笑を浮かべる。
「君は戦場でも可憐で美しいね。だけど、血の色は君には似合わない。」
ルーン魔術でブリュンヒルデを綺麗にする。
「うわぁ!ありがとうーフロールヴ先輩!!」
「貴様っ、殿下に向かい「構わないよ、ビャルキ」しかし、殿下「僕は構わないって言ったよ」........失礼致しました。」
フロールヴ•クラキは聖女に対し恋をしている。
(私の戦士としての直感がこの女は殿下には相応しくないと叫んでいる。)
グンテル公爵令嬢と言う許嫁がいるのだが、あくまでも体裁として王家と公爵家が周囲へと公言しているだけで当人達は認めて要るわけではないらしい。
(いいや、直感ではなく日頃の言動だな。この女の奇行は目立つ。特にグローアを下した「c」組の男に対しては常軌を逸脱した愛情を持ち合わせている。殿下には早々に諦めて貰いたい。)
ビャルキはフロールヴとクリームヒルトの婚約に前向きである。この二人が結ばれれば他国の追随を許さない程に強大な国家となるだろう。故に本心ではこのまま婚儀が行われればいいと思っているのだ。
「もぅボズヴァルくんは相変わらず堅いね!そんなんじゃモテないぞー」ちょんちょん
ビャルキの頬を人差し指でちょんちょんとする。額に血管が浮かぶ。
(この騒動が片づいたら暗殺しよう........この女は殿下にとって悪影響だ。)
ブリュンヒルデの手を振り払い、フロールヴへと身体を向ける。
「______________急ぎましょう、殿下。」




