深淵に包まれる空
「天候が暗転してゆく。この兆候はまさか.........」
学園長ウォーデンは晴天だった青空が深淵へと包まれて行くことに危機感を感じる。
「ベオウルフよ、生徒教員全ての者達を集結させよ。」
ベオウルフはこくりと頷き直ぐに学長室を退出する。事は一刻を急ぐ。
「ラグナロクの再来が始まると言うのか......」
国中の戦士達を集めている時間はない。この学園に集う生徒と教員達で事態の解決に当たらなければ世界に多大な犠牲と混乱を生み出すことになるだろう。
(ニーズヘッグ......)
アングルボサボの呪いの中でも最強格の一体。それを倒し、鍵を使用した者が学園内にいる。あり得ない。七英雄のうち四人が在校しているとはいえ、「勇者」「聖女」「覇王」「賢者」の中で完全に力を使いこなせているのは「勇者」と「賢者」だけだ。
(『勇者』は絶対に悪に加担することはしない。善性であり、人のために在らんとする者が勇者に選ばれる。)
そして学園長であるウォーデンもまた『迷宮』へとは足を踏み入れていない。故に七英雄以外の強者が最下層までたどり着き、ニーズヘッグを倒し鍵を手に入れたと言うことだ。
(英雄級の冒険者が数人いてなんとか拮抗出きる黒龍の成体ぞ........)
厄介なことになったものだと天を見上げる。
「_____________ロキの奴、成功したんだな」
ジークフリートはクリームヒルトをベッドへと寝かせた後、外へと移動する。ウルズの泉は深淵に包まれ、ユグドラシルの大樹だけが淡い光を排出し外の世界を照らしていた。
「ふ、ふふ、あはは!」
(もう止まれないぞ。前に前進するしか生き延びる事は出来ない!)
全ては『スローライフ計画』の為、この世界の真の平和の為に戦おう!どんなに犠牲が出たとしても。
「あ、ジークフリートくん!」
ベオウルフ先生が自分の姿を見つけて近づいてくる。
「先生........これは一体」
「私にも詳しくは分かりません。ですが今すぐに闘技場へと向かって下さい。学園長から大切なお話があります。」
そう言うと走り去ってしまった。恐らく放送室へと向かい校内放送をするのだろう。
(次期に死者の軍勢が死の国よりやってくる。ロキと合流次第、七英雄の補助に専念する。)
「b」組序列一位と二位は強い。そしてこの第一波で英雄級の活躍を見せてくれることは目に見えている。そして学園最強と名高い兄さん、シグルドも前線へと出てくる。
(死の国の女神ヘルの討滅がこの戦いに置ける第一目標。第二にブリュンヒルデ、クリームヒルトの七英雄としての『覚醒』を完全なものとする。)
故にひと芝居打たなければならない。ロキとの連携が必要だ。そしてもう一つ、気をつけなければならないことがある。
(.........賢者ウォーデン)
警戒を怠るなかれ。あの老人は『賢者』に選ばれたオーディンの生まれ変わり。ロキ以上に頭がキレる。バレたら俺とロキは処刑される。故に愚者を演じなければならない。




