ジークフリートは縛られる
「さぁ、行こう!」
早朝_______馬車に荷を詰め込み、準備は整った。そして荷物の中に簀巻きにされたジークの姿もある。
「むーむー!!!」
口も縛られ身動き一つとれない。
「もぅ、暴れないでよ!大丈夫、宿屋にあるジークくんの荷物も詰め込んだから」
宿屋の部屋も引き払ったと言う。ちなみにだが、見送りに来ているブリュンヒルデの両親は同情した眼差しでジークフリートを見ていた。
(これどうみても拉致だよね!娘さん、犯罪者になろうとしてるよね!!助けて!!.....おい!ブリュンヒルデのおやじ!めんごじゃねぇんだよ!!)
ふざけんな。せっかく辺境まで逃げてきたのに【ウルズ】に行くわけないだろ!!あの学園には「悪役令嬢」も今年から入学することになってるんだぞ!
「はは、本当に聖女様の力さまさまだね!」
朝方、ブリュンヒルデは聖女の力で筋力を活性化もとい強化し、自分を押さえつけてきたのである。余りに突然だったので対応に遅れて簀巻きにされてしまった。
(本来の聖女様覚醒イベントは原作で言う、攻略対象の一人『王太子殿下』がブリュンヒルデを庇って大怪我を負った時の筈なのに.......)
原作始まる以前に聖女に覚醒しちゃてるんですけど........
(原作ブレイクしたくてしてる訳じゃないのに......巻き込まれるんですけど!)
「それじゃ学園に行ってくるね!ぱぱ、まま!」
『あぁ気をつけて言ってくるんだぞ』『オーディン様の加護が在らんことを祈っているわ』
あぁあああああ馬車が!馬車が出発しちゃったよ!!
ミズガルズの辺境に位置する小さな国。静かで自然に溢れる良い場所だった。冒険者ランク『C』に昇格して、安定した収入を得るまでになった。後はスローライフを送るだけだったのに.......
「ふふ、二人旅だね♪」ジュル
ひぃ!?獲物を見る目で太股を撫でるように触ってきた。
「あぁ、話せないのは流石に可愛そうだよね♪今解いて上げる。」
「______ぷっは!今すぐ俺を解放しろーー!!」
「えー?逃げちゃうじゃん」
「.......逃げないって約束する」キリ
自分に持てる最高の決め顔でそう告げる。するとブリュンヒルデは顔を林檎のように紅くし、ぷるぷると震えはじめた。
「ふふふ、ふふ、ふふふ」
壊れたおもちゃのように『ふ』を連呼するブリュンヒルデ。そして頬へと手を当て、耳元で呟く。
『だぁめ♡ジークくんはブリュンと一緒にお墓に入るまで一緒にいないといけないんだからぁ♡ご飯を食べるとき、お出かけをするとき、お風呂に入るとき、おトイレをするときも全部ぜーんぶ一緒!だからジークくんはブリュンから解放して上げない♪』
いやぁあああ!目のハイライト消さないで!!