クリームヒルトの落涙
「______________あぁ、私のジークフリート」
お前はやはり生きていた。やっと見つける事ができた。
「何故、私の元から去ったんだ。私は、私はただお前さえいてくれればそれでよかったんだ......」
窓から風が吹きこむ。私はジークフリートの前で情けなく泣いてしまう。
「生きていてくれて良かった。」ぎゅ
安堵の感情が込み上げる。お前を愛している。愛しているからこそ側にいて欲しい。また昔のように私へ優しい笑みを向けて欲しい。私の願いはそれだけだ。
「...............クリームヒルト」
反対にジークフリートは罪悪感を感じていた。女性の涙に男は弱いと言うが、それが本当であることを今この場で理解する。
(シグルド兄さんの計らいで死んだことになっていたけど.....)
クリームヒルトは全個人資産を投じ自分を探しだそうとしていたと聞く。生半可なことじゃない。それに性格は唯我独尊ではあるけれど、以前よりも大分温厚になったと聞く。
「お前が嫌なことはしない。誓う。叱ってくれれば直す。だからもう、私の前から勝手にいなくならないでくれ!!」
部屋中に叫び声が響き渡る。クリームヒルトは泣きじゃくりながらその場へとうずくまってしまった。
(クリームヒルト.......)
彼女の目元へと手を当て、涙を拭う。そして微笑を浮かべ、侯爵家にいた時のように振る舞う。
「レディには涙は似合わない。君を少し困らせたかっただけなんだ。許してくれ。」
ちなみにではあるが、ロキは現在呼び出せない。アングルボサの呪いを解放する為に学園の地下にある『迷宮』へ単騎で挑んでいる。文献によれば、最終階層にある鍵を入手出来れば第一封印を解錠出きると記されているのだ。
「ジークフリート......ジークフリート......」
ぴとっと引っ付いて離れないクリームヒルト。それを宥めながら思考をする。
(クリームヒルトには悪いけど、『スローライフ計画』を諦めた訳じゃあない。)
第一の封印を解放すれば、一人目の巨人死国の女神が死者の軍勢を引き連れこの世界へと侵攻してくる。引き金は時期に引かれる。
(俺は同時に第二の必要プロセスも遂行する。)
スローライフ計画には三つのプロセスを完遂しなければならない。第一は言わずもがな『ラグナロクの再来』、三人の巨人の討伐だ。そして現在進行形で1/3を復活させ倒す予定にある。
「どこにもいかないで.....ジークフリート.....」
そして第二に『覇王クリームヒルト』を刺激し、悪役令嬢としての側面を聖女にぶつけて貰うことにある。
(まぁ簡単に言うならば、クリームヒルトにはブリュンヒルデをいじめて貰いたい。)
そしてその現場をフロールヴ先輩に抑えて貰い、公爵家の地位剥奪を狙う。原典に戻り、彼女には断罪、追放を受けて貰おう。
(一人目の巨人ヘルを倒した後、ブリュンヒルデに対して嫉妬してもらうんだ。)
そうすればクリームヒルトは彼女を嫌悪し、数多の嫌がらせを始めるだろう。
「あぁ、どこにもいかないよ__________」
背中を擦り抱き締めると安心したように眠りについてしまった。どうやら泣きつかれたようだ。
「____________スローライフ計画を達成するまではね。」




