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スノッリくんは恋戦争に勝ちたい

「また発作症状か........」


宰相の息子であり、次期クラキ国の宰相となる男スノッリ・ストゥルルソン。今日一日ブリュンヒルデへと話を掛け続けて見たが、上の空だった。スノッリはこの症状の原因をよく知っている。


「..........ジークフリート」

(あの男を殺してやりたい。ブリュンヒルデの無償の愛を捧げられながら、それを嫌悪している。理解に苦しむ。)


もしも彼女が自分へと愛を注いでくれると言うのなら自分はそれ以上の愛を持って答える自信がある。ブリュンヒルデに対しての好意は誰にも負けない。


(しかし問題はジークフリート以外にも三つ程ある。いや、正確には二つか。)


自分を含め、三人の男がブリュンヒルデへと恋をしているのだ。


(ディートリヒは脱落した。)


あれ程愛くるしく美しい女性に恐怖を抱くなど言語道断。とはいえ、競争率が下がったことは好ましい事実でもある。


「ネーデルラント侯爵家が当主シグルド。ヴァルハラ学園の生徒会長を勤める三年生の男。」


ヴァルハラ学園の生徒会長は「学園最強」の称号を持つ。これは学園長ウォーデンによる推薦で選ばれると言う。


「そして、我が主君となるフロールヴ殿下。」


なぜだ......貴方にはクリームヒルト嬢という許嫁がいるはずだろ。


「負ける訳にはいかない.......例え殿下と言えど、俺はブリュンヒルデを愛してしまった。」


例え裏切ることになろうともこの恋は絶対に手放したくない。諦めはしない。



「_____________スノッリ、用って何かな。自分、これでも忙しんだけど。」



屋上へとディートリッヒ・フォン・ベルンを呼び出した。もちろん理由は協力の要請を求めることにある。


「単刀直入に言う。俺とブリュンヒルデの恋路を応援してくれないだろうか?」

「単刀直入に言うけど無理でしょ。協力って意味でもあるけど、そもそも君の恋は成就しないよ。ヒルデちゃんのジークフリートに対する執着心は君が一番に知っているよね。第一に自分が諦めた理由、それだし。」


ディートリッヒの言い分は理解出来る。理解できるが、諦めきれんのだ。初めて人を好きになった。初めて一緒にいて楽しいと感じた。この女性と結ばれたいと切に願った。


「頼む。俺には頼れる友人がいない。頭を垂れろというのなら下げる。どうすれば俺は........ブリュンヒルデと恋仲になれる?」


地位、名誉、金、いずれかが欲しければ将来、俺が宰相になった暁に約束する。ベルン国の再建が目的ならば助力もする。ルーン魔術で盟約を結んで魂を縛ってもいい。ただ、ブリュンヒルデの寵愛が受けられるように協力をして欲しい。


(.............スノッリ)


ディートリヒは真剣な表情でスノッリの肩へと手を置く。


「重い.......それにキモい。童貞でしょ、君?」

「どう.......ッ、何が悪い!生涯伴侶を持つのは一人だ!ならば必然とそういった関係を持つのは一人だけだろう。」


ディートリヒは失笑する。


「切実すぎる。それに実直。嫌いじゃない。嫌いじゃないけど、重いね。考え方を変えよう。もし仮に君のことを想う女の子がいるとする。彼女が告白をすればスノッリは振るでしょ。」

「あぁ、おれはブリュンヒルデ一筋だからな。」キリ

「自信満々に答えてくれてありがとう。まぁその子は諦め切れず、付き合えるまでスノッリに纏わり付くわけだけど.......どう対応する。その子の気持ちを知った上で答えてくれ。」


スノッリは考える。ブリュンヒルデの事が好きだと言いつつ他の女に纏わり付かれていては勘違いされてしまう可能性がある。それに自分が彼女へと靡くことは一生涯ないだろう。ならば早期に突き放した方がいい。


「恋人となることは生涯ないだろうと冷たく突き放す。」

「ってことだよ、スノッリ。君がしていることはその女の子と同じ事だ。ブリュンヒルデのジークフリートに対する情愛は常軌を逸脱している。君がいくら頑張ろうと恋が成熟することはない。」


ディートリヒは屋上を去るために背を向ける。


「よく言うだろう。初恋は実らないって。時には手を引くことも大事さ、スノッリ。」


屋上からいなくったディートリッヒ。スノッリはユグドラシルの大樹を見上げ、苦笑する。


「_______________困難を乗り越えてこその英雄だろう?」

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