道化師vs聖女
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」
ジークフリートの影から「シュワッチ」と言いながら出てくるロキ。どうやって影に入ってたかとか、何で一言叫んだだけで出てくるのとか聞きたいことは多いけれど、今は気にしないでおこう。
「c組序列一位のロキ•ウートガルザ..........」
ブリュンヒルデは即座にジークフリートを守るように立ち上がる。そして聖光を拳に付与し、戦闘態勢に入る。
「君には眠って貰うよ。ブリュンとジークくんは今から愛を育むの。邪魔をしないで立ち去ると言うなら手荒な真似はしないであげる。」
「思い上がらないでくれるかな、聖女。君と僕とでは隔絶とした差がある。例え七英雄の一角であろうと能力を完全にものにしていない君では僕を動かすこともできないよ。」ひっひっひ
歪な笑みを浮かべるロキにブリュンヒルデはプチンと怒りの表情を見せる。
「言ったね......a組序列二位のブリュンを甘く見ない方がいいよッ!」
神速の右ストレートがロキの頬を捉える。
「_________入った!」ばしゅ
(殺さない程度には調節してあるから、安心して。暫くそこで寝ていなさい。)
殴ったと感じた。だけどその感触は直ぐに消える。
「速いね。だけど、君が穿ったのは残像だよ。道化師は嘘が得意なんだ。」
声が後ろから聞こえて来る。そして身体を声がする方向へと向けると、ロキはジークフリートを愛でるように彼の髪を撫でていた。
「ぶ、ブリュンのジークくんにッ.........!!」
(許さない。今からブリュンヒルデとジークくんは繋がるの!他の人の匂いはいらない!触るなッ汚れるでしょ!!)
ブリュンヒルデは聖光を両足に付与し、ロキへと跳躍し飛び蹴りを放つ。
(_________普通に受け止めれば腕が消し飛ぶ威力。)
ロキはひっひっひと笑いながらジークフリートと共に影の中へと沈む。
「ッ......うぅ、逃げるなー!!ジークくんを返せぇええええ!!!」
部屋中を探し回るブリュンヒルデ。
「卑怯者ぉー!出てこい!ジークくんがまだこの部屋にいることは匂いで分かるんだからぁー!」
その場で叫び散らしているブリュンヒルデの影からロキは気配を消し現れる。
「発狂は残響、醜態は緩怠、眠る眠るは高枕安眠♪」
「なッ.......___________」
背後からブリュンヒルデを押さえつけ、意識を刈りとる。
「出てきても大丈夫だよジークフリート。僕のジークフリート。」
クローゼットから現れるジークフリート。そしてなんとも言えない表情で倒れるブリュンヒルデを見る。
(これで襲ってくる頻度が減る。やはりロキの存在は大きいな。ブリュンヒルデもこれでそう簡単には手を出せないと身を持って理解した筈だ。)
ロキへと向き直る。
「なぁロキ........道化師の能力ってもしかして認識を錯覚させる能力なのか?」
「ひっひっひ......惜しいね。道化師の力、ジークフリートにだけ教えてあげるよ。」
くるりとその場を回り、口元が歪むロキ。
「対象者の精神と視覚/聴覚に少しだけ干渉できるのさ。だから気づかないうちに仲間へと攻撃をしていたり、視覚と精神に干渉を掛けることで幻覚を見せたり幻聴を聞かせたりする事もできる。欠点として複雑なことを刷り込むことはできないけどね。」
精神と視覚/聴覚への干渉......本当にラスボスみたいな力をしている。
「それじゃあさっきの影に入ったりクローゼットの中にいつの間にか移動させられていたのも全部......」
精神干渉による幻影、幻覚なのか。感覚すらも本物に感じた。
「虚構、虚栄、虚偽。全ては僕の嘘。ジークフリートも聖女も始めから一歩も動いていないよ。」
にっこりと微笑を浮かべるロキ。
「聖女が戦闘態勢に入って君が立ち上がった時、どこに立っていたんだい?」
「それは......」
(今いるこの場だ。同じ立ち位置.....嘘だろ。)
兜の中でジークフリートはロキに対して畏怖を感じる。幻覚に陥っていたことさえ気づかなかった。
「この兜の能力が効かなかったのも道化師としての能力が故なのか?」
「効いていたよ。でも精神干渉で自分を落ち着かせて、逆にジークフリートに恐怖を与えた。ただそれだけの話。」
自分への精神干渉も可能なのか。恐怖、絶望、悲しみ、憎しみ、喜び、感動、歓喜という感情全てを支配下に置ける。精神系統の最上位、それこそが「道化師」の覚醒した姿と言う訳か。
「なぁロキ......その姿はロキなんだよな?」
ロキはその場に立ち尽くす自分へと近づき胸元へと人差し指を当てる。精神干渉が出来ると言うことはロキ本人の姿も実は本物ではないかも知れない。道化、故に。
「秘密は蜂蜜、秘匿は美徳______________僕は【ロキ】、『道化師トリックスター』の職業を選定されたちょーと悪戯づきなエルフさ。僕のジークフリート、ファフニールのお宝は見つけたかい♪」




