選択すべき力
(俺が選択すべき力_____________)
この女に先手を取れる職業適正。それは『魔帝』の保有する魔力制御だ。
(________________一日に行使できる回数は一度限り。)
他職の覚醒能力を引っ張ってくるのだ。代償がない訳がない。
(魅力的な能力が多々あるなかで、俺はこの女をぶちのめす為に選択する。)
掴め、掴め、掴め。
(グローア、お前も選択出来たんだろう?)
俺もこの場で覚醒能力を選ぼう。生涯、この能力と共に生きていこう。
「来い、魔帝____________俺がお前の力を未来へと連れていく
。」
「まぁ、私を倒すならその選択肢しかないよね。」
へらへらと笑いながらスキールニルを異空間へと優しく誘い、戦闘体勢に入るスコーネの女王スクルド。
「だけど、君一人の力で何処まで戦えるだろうね。この身は数十世紀を生きた大魔術使い。魔帝の餓鬼と同程度だと評価してくれるなよ、山田廉太郎。」
ラグナロク以前より生きてきた神話の魔術使いだ。この時代の人間であれば太刀打ち出来ない程の実力を誇る。
「あぁ、いい忘れていたけれど私は純粋なルーン魔術師ではない。」
一刀の剣を異空間から抜刀する。何の変哲もないただの鉄剣。
「.........」
「安心するといい。私は魔剣や特殊な柄の剣など持ち合わせていないよ。神話の時代に打たれたドワーフ製の鉄剣だ。ただ、魔力を通しやすい。」
剣を撫でるように触れる。そして此方へと純粋に刃を向けてきた。
「魔術だけで君を圧倒出来る。だが、それだけでは早期に決着がついてしまうだろう。それでは些かつまらない。最終決戦はもう少し花がある方がいいと思うんだ。だから敢えて君の土俵に立って上げよう。」
何処までも嘗め腐った女だとジークフリートは苛立ちを感じる。
「お前が魔術で戦おうが、剣で戦おうがどうだっていい。俺は絶対に此処でお前を殺す。」
ジークフリートはスクルドへと向かい、走り出す。
「来なよ、私は逃げも隠れもしない。正面から君を受け入れてみせよう。」
ジークフリートによる槍の突きがスクルドを捉える。だが、スクルドはその突きを剣で受け流し、ジークフリートの腹部へと潜り込み、エルボーを喰らわせる。
「ぐっ、」
直ぐに槍を引き、もう片方の手に握る剣でスクルドを切り裂こうとする。だがスクルドは剣を蹴り上げ、裏拳でジークフリートの顔面を殴りつける。そして、怯んだジークフリートの隙を突き、地面へと押し倒す。
「おいおい、これじゃあ弱いものいじめになってしまうじゃないか。」
「........言ってろ。」
押し倒されたジークフリートはスクルドにより何度も何度も殴り付けられる。
「ぐっ、離れろ、くそ女ぁああ!!」
だが、ジークフリートは足を使い、スクルドの後頭部へと何とか蹴りあげ、拘束を抜け出すことに成功する。
(この女.....俺をいつでも殺せると言わんばかりに魔力の乗った拳でしか攻撃してこない。)
剣は防御にしか使っていない。寧ろ、剣で攻撃しないように手加減されている節すらある。
「随分と嘗められたもんだぜッ」
立ち上がり、スクルドへと槍による連撃を繰り出す。
(当たらねぇ!!)
フェイントも混ぜた剣による攻撃も上手く捌かれ、カウンターすら返ってくる。
(全神経集中させて、基礎模倣をフル活用してるんだぞ!!)
冒険王程の出力は出せないが、強者と渡り合える程度の熟練度は誇る筈なのに通用していない。
(完全に遊ばれている......ッ!!!)
肉弾戦をしながら、ルーン魔術による詠唱を脳内で構築する。
「ぐはっ!!」
(炎帝の彩飾、飾り混ぜるは業火の色合い________)
スクルドに投げ飛ばされ、身体を地面へと強く打ち付ける。
「_________スルトの下火っ!!!」
ジークフリートは拳を振り下ろそうとするスクルドへと手をかざし、ルーン魔術を発動させる。小さな火弾が分裂し、スクルドへと襲い掛かる。
「あはは、その程度の魔術で私は止められないよ。」
剣で全ての炎弾を振り払う。
「あぁ、知っているさ。」
炎弾による四角を突き、背後へと回り込むジークフリート。
「_______________沈めぇ、くそ女ぁ!!!」
魔力を込めた拳でスクルドの顔面へと拳を叩き込む。
「ぐあっ!!?」
そして拳を地面へとスクルドごと沈める。
(冒険家......やはり、戦上手......か....)
地面へと叩き付けられたスクルドは血を吐き出し、鉄剣を手から手放す。ジークフリートは止めをささんと即座に剣を追撃で振り下ろす。
「だけど、甘いね。」
攻撃は風の防壁で防がれたのだ。
『風星の導き、流れ紡がれ風の序奏、微風は楯となる。』
ジークフリートは頬を釣り上げ、挑発とした表情でスクルドへと告げる。
「__________________魔術を使ったな。」




