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拉致被害者

休日の早朝、ブリュンヒルデとレギンがバンと扉を開け部屋へと入って来た。


「ブリュンヒルデ!!?え、何してんの!!?」


学園側からの許可がない限り、従者とは言え異性の部屋へとは入ってはいけない規則がある筈なのだが。無言で手足を縛りあげ、兜を被せられる。


「ま、待てまてまて!!手口が学園に連れて来られた時とほぼ一緒じゃねぇーか!!それも今度は二人がかりで!!」


二人はジークフリートを外へと引き摺りだす。


「痛い!!!い、いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい!!!!!!」ががが


二人へ呼び掛けても返事はない。無視を決め込んでいる。むしろ圧が凄い。て言うかブリュンヒルデの息遣いが何故か荒くなっている。


(もぅ限界!ジークくん成分が足りない!ちゃっちゃとクリームヒルトさんに紹介してブリュンの部屋に連れ込んじゃうんだから!)


ブリュンヒルデは限界だった。ジークフリートと接触しない日々が続いたせいで若干頭がおかしくなっているのだ。


(素性は明かしてないからルーンの契約には抵触しなかった。けれどこのまま隠し通す自信もねぇ。なら、こいつをあのクソ女に紹介させちまおう。大博打。こいつがクリームヒルトの求めてるジークフリートだとばれなけりゃいい話だ。兜もしてんだし、普通はバレねぇ。とは言えバレちまったら場合は.......うん、どんまい)


先日の夜、レギンはクリームヒルトから鉄槌を受け部屋から追い出されたのである(前話)。そして早朝、廊下にてのびていたレギンをブリュンヒルデが発見する。


『レギンくん!』

『あぅ.......聖、女?』


介抱されながらレギンはブリュンヒルデへと事情を説明した。もちろん言っては危険そうな内容は省いてではあるが。余談ではあるが、学園の大半の者達はレギンの事を男だと思っている。ブリュンヒルデも例外ではない。故に同室に住んでいるレギンに対しても嫉妬心を見せないのである。


『そう言うことなら善は急げ、だよ!』


事情を聞いたブリュンヒルデは会う口実が出来たのだと内心で大喜びする。反対にジークフリートを捧げることで自分の身が助かるのだと悠々とした表情を見せるレギン。二人は即座にジークフリートの元へと向かい、拉致、そして現在に至るということだ。


こんこん


クリームヒルトの部屋前に着く。


「______________誰だ?」


クリームヒルトの部屋へと軽くノックをするブリュンヒルデ。


「覇王クリームヒルト、聖女ブリュンヒルデです。レギンくんから私の従者を紹介して欲しいと聞きましたので私の従者ジークフリートを連れてきました。」


「誰だお前は!」とツッコミたいほど丁寧語を使うブリュンヒルデ。

※ジークフリートがいない公の場ではブリュンヒルデは案外まともなのである。


(........え、えぇ!!?今この場でクリームヒルトと会うの!!?)


心の準備が全然出来ていない。展開がいきなり過ぎて具合が悪くなるジークフリート。


「ま、まってくれ.......」


休日の朝に二人に突撃され、此処へと連れて来られた(強制的に)。頭に思い描いていた再開とは違うことになるので、内心かなり動揺している。『辺境でスローライフ計画』に支障が出る。


『大丈夫。計画に支障が出ても調整してあげるよ、僕の愛おしい親友ジークフリート。全ては僕と君の為にあるのだからね、ひっひっひ』


ロキは毎日のようにこう言ってくれているが........信用しているぞ、ロキえもん!

親愛は重いが、ロキの策略家としての能力は他者を追随させない程、聡明だ。


「___________そうか。今、扉を開ける。」

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