ディートリヒとジークフリート
「_________ってことがあったんですよ師匠」
最近の日課と化している放課後のトレーニング。ディートリッヒと剣を打ち合いながら「a」組の近況報告を聞く。特訓をはじめてからと言うものディートリッヒは何故か自分を師匠と呼ぶようになった。
「グンテル公爵家、ね........」
槍でディートリッヒの攻撃を受け流し蹴りを胴へと放つ。
「うぐっ.............公爵家と何かあったんですか?彼女、物凄く会いたそうにしてましたけど」
胴へと蹴りを入れられたディートリッヒは片膝をつく。そして首もとにはジークフリートの槍が置かれていた。ディートリヒは両手を上げ、降参のポーズをとる。
「さあな。ジークフリートなんて名前はありふれてるだろ。」
接触は避けられないことは分かっていた。だが少し早いな。クリームヒルトはまだ「覇王」へと「覚醒」していない。七英雄が全員、この学園に集うまでは「c」組の成長を手伝うつもりでいたがどうやらそうも言ってられなくなるらしい。
「確かに.....あーそう言えば会いたいと言えばもう一人」
辺境で冒険者をしていた際、シグルド兄さんからの定期連絡(手紙)で「クリームヒルトはお前を探している」と言う内容が送られて来たのを覚えている。そして内容の一部にS級冒険者を数人雇って領地を探し回っていると知った時は、眠れない毎日を過ごしていた。
「..........ブリュンヒルデちゃんが会いたがってますよ?」
「ベルン、いつになったら彼女を落としてくれるんだ.......女好きで有名なんだろ?」
「頑張ってますよぉ!でもスノッリの奴がいつも邪魔して.....ではなくてですね。ブリュンヒルデちゃん、師匠のことが好きすぎて頭がおかしんですって!」
こいつ、普通にブリュンヒルデのことを頭がおかしいと言ったぞ。
「それをどうにかしてくれって頼んだよな。ピクニックデートはどうだった?」ぐぐぐ
「痛い痛い痛い!!肩をそんなに強く押さないで!!折れちゃうから!!」
ディートリッヒが言うには俺が絡まない事柄では真面目で優しい女の子だと言うのだ。明るくクラスの中心にいつもいると言う。スノッリが惚れた理由も孤立していたところを優しく話しを掛けてくれたと言う童貞しい理由で惚れているらしい。あんなにイケメンなのに。
「騙されんぞ、ディートリッヒ。彼奴はただの変態でドスケベ女だ。」
想像がつかない。あの女が真面目で優しい?嘘だ!!この学園に来る一週間はまさに悪夢だったんだぞ。
「ドスケベ女って辛辣過ぎません?ブリュンヒルデちゃん、めっちゃ可愛いじゃないですか!むしろドスケベ最高っ痛い痛いッ!!!」
「ドスケベしたら死ぬ事が確定するだろ。攻略対象ならしっかりと惚れさせろ、ベルン」ぐぐ
「攻略対象?何を言ってっ痛いっ!!千切れちゃうから!!」
背中合わせになってお互いを持ち上げる担ぎ合いのストレッチでつい力んでしまった。因みにではあるが現在は訓練後のペアストレッチを行っている。
「......はぁ、ひどい目にあった。」
「それでピクニックデートは楽しめたのか?」
「スノッリもついてきました」
二人は無言で見つめ合う。そしてジークフリートがディートリッヒの肩に手を置き一言。
「......................そうか」




