決闘終了
放課後になった為、従者のレギンと庭園でお茶にでもしようと歩いていたら何やら騒がしい。
『_________何事だ、レギン』
闘技場に集まる群衆を指差すクリームヒルト。
「多分決闘とかじゃないっすかね。」
レギンは興味がないのか適当に答える。
『おい、そこのお前。』
「あ?今いいところ」
観衆の最後尾で背を伸ばす男子生徒へと話し掛けるクリームヒルト。男は苛ついた様子で振り向くと、公爵令嬢がそこにはいた。
「も、申し訳ありません!!クリームヒルト様!!何用で御座いましょうか!」
ピシッと背を伸ばし、何度も頭を下げる男子生徒。それを静止し、訪ねる。
『__________誰が戦い、何故戦っている。簡潔に答えろ。』
「は、はい!」
男子生徒は事の経緯をクリームヒルトへと説明する。闘技場で決闘が行われている理由は『c』組の冒険者が『a』組の「剣帝」に決闘を申し込んだことにあると言う。
「『a』組に在籍の聖女様を掛けての決闘だそうです!」
ブリュンヒルデか。平民出の「聖女」。同じクラスに在籍し、とても友好的な性格をしている。
「あぁー確かに聖女の奴、すっげーモテてるっすもんね。かわいいし。」
『私もかわいいぞ?』
「かわいい以前にクリームヒルト様は怖がられてるっすね.......」
クリームヒルトは理解出来ていない表情を見せる。
「それにしても剣帝の奴にc組の奴が喧嘩売るって度胸があるっすよねー、そいつ。『a』組でもそこそこ強い方すっよ。」
『強い弱いの話ではない。気持ちの持ち合いこそが重要なのだ。』ドヤ
「そ、そっすね..........どします、見てきますか?」
クリームヒルトは群衆を一瞥し、庭園へと足を進ませる。
『無用だ。どちらが勝とうと私には関係のなきこと。捨て置け。』
「____________ジークフリート、此処からは本気でいく。死んでも文句は言うなよッ!!」
エッケザックスを両手持ちで構えるディートリッヒ。この剣はラグナログ以前の時代、小人が鍛えたという武器である。多くの戦を無傷で闘いぬき、どんなに丈夫な鎧でも貫いたと言う。
(さっきまでの闘気とは一段も二段も違う.......)
「正真正銘、本気を出すって事か。」
ディートリッヒの先程までの戦いは決闘ではなく『試合』であったのだ。しかし、今からは本物の殺し合いとなる。配慮なしの全速力を奴はぶつけて来るだろう。
「__________ふぅっ!!!」
間合いを詰め、下段から剣を振り上げるディートリッヒ。
「ぐっぐ!!」
流石は剣帝。基礎能力であるパワーが冒険家である俺とは段違いだ。
(___________受け流せねぇ!!)
槍にて受け流そうとするが剣の軌道は変わらず、自分を貫こうとしていた。
「魔法袋、小麦粉ぉ!!」
『ばん』と言う破裂音と共に煙が上がる。ディートリッヒが貫いたのはジークフリートではなく、ジークフリートが魔法袋から出した小麦粉の袋だった。
「これで視界を潰したつもりか、ジークフリート!!」
煙をエッケザックスで振り払い正面へと駆け出す。
(_________いないっ)シュ!!
未来予知では煙を抜けた先にジークフリートが待ち構えいるはずだった。しかしディートリッヒの剣は虚空を突く。
「________背後ががら空きだぞ」
「しまっ」ザシュ!!
背中を切り裂かれるディートリッヒ。よろめきながらも剣を地面へ突き刺すことで体勢を保つ。
「早いしパワーもある。七英雄に並ぶポテンシャルがあるのは認めるよ。」
(................同学年でこいつに勝てる奴は少ないだろう。)
だけど相手が悪かったな。
(俺とディートリッヒには明確な経験差がある。)
剣帝の力を完全に【覚醒】していない今のお前には勝てる見込みはないよ。
「........うぅ、そんなぁ」
涙目で拳を地面に叩きつけ、悔しがるディートリッヒ。
「自分だって修行頑張ってきたのに!なんでぇ!」
完全に泣き始める。
「それなのにコテンパンにやられちゃったよぉおおおおお...........ぅぅひっぐ」
まじの子供泣きするなよ。仮にも王族で観衆が見る闘技場(訓練場)での決闘なんだぞ?
「泣き止んでくれ、俺が悪かったって、な?」
泣かすつもりはなかったのに相手が泣いてしまった際の罪悪感を今猛烈に感じている。
「...........じゃあ教えて」ちら
体操座りでこちらをちらちらと上目遣い(涙目)で見てくるディートリッヒ。こいつの女々しい今の態度は女性プレイヤーたちからすれば攻略対象の萌えポイントなのだろうが、俺にはそう言った趣味はない。
「...........何を?」
余談ではあるが、『ディト虐』なるものがこのゲームのプレイヤーたちからウケているらしい。「生意気な男の子が分からせられて涙目になる姿がキュンと来る」とのこと。
「ジークフリートみたいに強くなる方法」




