決闘開始
(剣帝の能力は強力。擬似的な簡易未来予知もできる。フェイントは効かない。予め、訓練上に罠を仕掛け、ジークフリートを優位に立たせる。)
ロキは熟考する。どうすれば親友を無傷かつ、数秒で勝せることができるのかを。
(これは試合ではなく、決闘だ。殺してもいい。)
友達となった男を絶対に勝たせる。その一点の思考にだけ集中する。僕には生涯、この男が必要だ。初めて出来た友人として、親友としてね。
「ロキ、大丈夫だ.......俺は正攻法で勝つよ。」
ロキの肩へと手を置き、大丈夫だと言う。
「心配は杞憂か。それとも無謀に奔放なのか.......もしもがあれば彼奴を殺すよ?」
ロキの殺気。凄まじいな。恐らく、現生徒達の中でこいつに拮抗出来るとしたら『生徒会長』くらいだろう。それ程までの実力を隠し持っている。
「いいさ。死んだら死んだでヴァルハラに行けるだろう?」
「皮肉は嫌悪する。死は美ではなく迂遠だよ」
ロキは緊張や感情が昂ると道化師の様に『嗤い』ながら策略を張り巡らし、目標を愉快に殺害する。しかし、反対に怒りや悲しみを感じている時は冷酷にことにあたる。
(今は後者だ.....友情に対して意外と重いんだよな、こいつ。)
信頼出来る相手がいなかった故の反動だろう。とは言え、味方に出来たことは大きい。二期の結末を辿ったとしても"俺"には被害が行かないように調整してくれるだろう。
(_______________友達だからな)
「ジークフリートの職業適性は『冒険家』だ。手数は多いぞ、気をつけろ。」
スノッリは準備運動をするディートリヒに忠告をする。
「自分を応援してくれるんだ。意外だね。」
「お前を応援している訳じゃない。だが、ジークフリートよりはマシと言うだけだ。」
それだけ言い残すとスノッリはブリュンヒルデ達が入るであろう観客席の方へと移動する。
訓練場の外観はコロッセウムそのものだ。円形闘技場。その中心で決闘は行われる。
「逃げずに来たことだけは誉めてあげるよ」
訓練場、いや、闘技場と言った方がしっくりと来るな。ディートリッヒは二刀の宝剣を鞘から抜く。
「右に宝剣エッケザックス、左に名剣ナーゲルリング......耐えられるといいね」
剣帝の職に加え、名刀が二本。相手は剣帝として育ちきっていない温室育ちの未熟者。勝算はある。
(.......経験の違いだ)
伊達に冒険者家業をしていたわけではない。
「君の獲物は槍なんだね」
本当は剣が良かった。ネーデルラント侯爵家には秘宝中の秘宝が眠ってたんだから。
『グラム=バルムンク』と言う最強の魔剣。
ネーデルラント侯爵家次期当主兼現生徒会長であるシグルド兄さんが既に継承してしまったから盗むこともできない。俺が持っているのはエギルの兜と_____________勝つための知識だけだ。
「さぁ始めようぜ。」
「言われなくてもッ!!」
ガキンッと刃同士がぶつかり、鍔迫り合いをする。そしてディートリッヒは鍔迫り合いをしていない方の剣、ナーゲルリングを使い左股目掛け、突きを放つ。
「ッ、やらせるかよ!」がンッ!!
頭突きをかまし、体勢を後部へと崩すディートリッヒ。
「ぐあっ!!?」
その隙を逃がすまいと槍で追撃を加える。
「____________剣帝を舐めるなよぉ!!!!」
身体の稼働領域ギリギリを使い槍の追撃を間一髪のところで避け、バックステップを踏み、距離をとる。
「はぁ......はぁ.......」
(......危なかった。)
簡易的な未来予知は出来る。例えば3秒先の未来を見通す心眼。だけど見えていても自分の身体がついて来ないのだ。
「経験と鍛練が足りないんだ。数手の攻防で息が上がってるのが言い証拠だ。」
ジークフリートの言葉が胸に刺さる。『C』級冒険者の地位にいると言うことは数多の戦闘を経験して生き延びたと言うことだ。
「剣帝って職業に感謝するんだな。未熟とは言え俺と数手打ち合えたんだからな。」
余裕然とした態度。全てがディートリッヒを逆撫でする。
「自分はぁ!!!剣帝なんだぞぉお!!!」
力任せに剣を振るうディートリッヒ。それを最小限の動きで受け流し、腹部へと石突で殴る。
「うぉえ!!」
胃液を吐き出し、その場へと膝をつくディートリッヒ。
勝ちたいけど勝ちたくない。そもそも決闘などしたくなかった。勝利をすればブリュンヒルデとのピクニックデートを強制され、反対に負けてもディートリッヒみたいな奴らが幅を利かせることになる。勝っても負けても俺には利点がないのだ。
「自分がぁ、負ける.........冒険家風情にっ、そんな、あり得ない........あっちゃあいけない......あっちゃいけないんだぁああ!!!!」
ディートリッヒは名刀ナーゲルリングを投げ捨て、気合いで立ち上がる。そして宝刀エッケザックスを両手持ち変え、ジークフリートへと構えた。
「ジークフリート、此処からは本気でいく。死んでも文句は言うなよッ!!」
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