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虚無と抱き合うということ  作者: 骨もけら
全て私のせい
6/22

雪山中級サバイバル ②

 おはようございます。とても清々しい朝です。時計がないから正確には分からないけど、今の時刻は体感六時半くらいかな。

 吹雪が止んでいる。今なら雪の表面が軽く凍っててかんじきとかが無くても雪の上を歩けるんじゃないかな。

 ていうか、普通に寝れたな。転生特典の効果があっても、ちゃんと寝れるのはありがたいことだね。私結構寝てストレス発散するタイプなのかな?転生してから何も食べてないけど全然お腹が空いていない。特典効果凄いね。けど、朝何も食べないってのは生活リズム的になんかよろしくない気がするんだよなぁ。


「と言っても、冬場の蓄えなんて無いしなぁ」


 しょうがないか。食べたってことにしておこう。

 さて、行動開始といきますか。

 

 靴が少し心配だったが、幸い長靴が入口近くにあったのでまたお借りした。全然サイズ合わないけどね。まぁ贅沢は言えないし、あんまりグダグダしてると雪の表面が緩んできちゃうからさっさと行こう。


 「…これ三メートルぐらいない?」


 目の前にあるのは見上げる程の雪壁だ。最近は地球温暖化の影響なのか積雪量が少なくなっていて、豪雪地帯にある実家でも見なくなったものだ。扉の上から屋根が迫り出していたから出られたが、この屋根が無ければ雪が溶けるまで小屋の中で過ごすことになっただろう。


 (なんか小さい頃を思い出すなぁ…。冬休み期間中に宿題そっちのけで雪掘ってトンネルとか作ったっけ。そりを物置から引っ張り出して日が暮れるまで遊んだこともあったなぁ…)


 懐かしい記憶だ。


 「おっと、感傷に浸ってる場合じゃない。明るくて行動に支障をきたす前に周りを確認しないと」


 なんとか足で取っ掛かりを作って登っていき、体感五分ぐらいで登りきる。どうやら小さい頃に遊びまくって染みついた動きを私の体はまだ覚えていたらしい。

 振り返って自分が今までいた小屋を見る。雪から小屋の屋根の一番高い所だけが辛うじて出ていた。

 こりゃあ次またどっさりと降っちゃったら完全に埋まるね。場合によっては掘り出さないとかもしれんな。…いや無理だよ。今の私の肉体年齢十歳ぐらいだし。あまりにも非効率的だわ。

 小屋が潰れるのが先か、雪が溶けるのが先か…。もういっそ、山を降りるという手もアリかな?でもそうなると色々と準備が要るな…。しかもスノーモービルなんてある訳ないから完全に徒歩で降りるしかないんだよね…。別にズボズボと進んでもいいんだけど、めっちゃ疲れるんだよね。


 「…あ、でも特典で疲労の大幅軽減があったっけ」


 こういう時ゲームならステータスウィンドウとか開いて確認出来たんだろうけど、残念ながらここは現実だ。


 私はまだあのオフィスの匂いを忘れていない。忘れてたまるか。私を騙してこんな雪山に放り込みやがった転生課もだ。いつか、生きて会ったら必ず…、()()、必()()()()()

 確実に業務上過失致死でお縄案件だろう。どっちかというと詐欺ではあるけど、転生なんていう大それたことを扱う部署で契約違反は駄目だろう。

 でも、もしかしたら今頃豚箱にぶち込まれて泣き喚いているかも知れないか。そうだったらいいな。是非ともそうなって欲しいな。

 いけないいけない。思考回路が真っ黒になってたな。まずは生き延びなければ何もできない。


 さて、小屋をどうするかはとりあえず後回しだ。建築に関しては完全に素人だから分かんないけど、家主が出ていってかなり立ってる筈なのに扉とか全然軋まなかったから暫くは倒壊なんて事にはならないでしょう。それよりかは、まず小屋から半径五十メートルぐらいの探索をしよう。五十メートルなら何かあっても全力で走れば小屋に避難出来る…かな?多分。


 太陽が出て来た。暫定異世界の日の出だ。とても美しい。こんなにちゃんと日の出を見られる日が来るなんてなぁ。気温も低いし、ダイヤモンドダストとか見られないかな。


 その時、私の耳に何か動物の呻き声のような音と激しく雪の上を走り回っているような音が聞こえてくる。もしかしたら、熊とか狼とかが鹿でも襲っているのか。そう考えた私は、直ぐにしゃがんで周囲を警戒する。なんか体が勝手に動いたけど、これが一番いい気がして自分の勘に身を任せる。


(どこ!?どこから聞こえる!?まだ小屋からは十メートルぐらい。狼だったら匂いで勘付かれる?熊だったら…どうだろう。熊って鼻いいのかな。でも、とりあえずいいって事にしておこう)


 私の前方大体百メートル以上先で大きな雪煙があがる。


 (あそこか!)


 確認しないでもう帰った方がいいか。鍬ぐらいなら小屋にあるかもしれない。流石に素手はまずい。何か武器になりそうなものを小屋から持って来れば良かった。そこまで考えた私は、一目散に小屋へ走る。

 小屋に戻り、長靴があった場所の近くをよく探す。すると、シャベルとピッケルを足し合わせたような変な道具があった。まるでピッケルの金属部分にシャベルの先っぽを溶接したような形だ。持ってみると割と重い。十歳の身体能力でギリギリ振り回せるくらいだ。でもこれ以外には武器になりそうなものは無い。


 (よし。これにしよう)


 そこで争うような音が近づいてくるのを聞き取る。きっと争いながらこっちに進んでいるのだろう。


 (危険かもだけど、どれくらいの脅威がこの周辺にいるのかは、いつかは把握しておかないととは思ってた。とりあえずの武器も見つけたし、危なければすぐ小屋に戻ればいいし、ちょっと観戦しようかな)


 音を立てないように静かに外に出る。雪を布に被せてなるべく保護色が働くようにしてから頭に被る。そして雪壁から目を出してこっそりと争っていると思しきその様子を見る。

 そこには、熊や狼が鹿を襲っている光景ではなく、体長一メートルほどの小柄な鹿が筋骨隆々で如何にも強そうな、体長五メートルはある熊一頭と、なんか凄い風みたいなエフェクトを纏ったこれまた如何にも強そうな狼四、五頭を相手取って尚、一方的に攻撃している鹿の姿があった。

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