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第33話「魔法の杖と言われれば理解も出来ます」

「うん、良い風呂だね、建物はボロいけど」


 湯船に身体を沈めるハヤテ。


「でしょ? ホントに身体の疲れがとれる良いお風呂なんだよー」

「だね~、私も好き、眼鏡かけられないからあんまり良く見えないのだけど」


 まるで自分の事に様に自慢するイシュタルの横で真愛がウンウンと頷く。

 浴場は3人で入るならば十分なくらいに広い。


「真愛は目が悪いのか?」

「うん、眼鏡がないと視力は0.05と言ってもわかんないか、少し離れるとやっと人が見えるくらい」

「ふぅん······ならますます近接戦闘には向かないよな、目が悪くちゃ」

「だよねぇ······おまけに運動神経もダメなの」

「それが最前線で棒を振り回そうと思ったのか? もう少し考えないと死ぬぞ?」

「ご、ごめんなさい」


 ハヤテは14歳。

 真愛よりも3歳年下。

 黄色系の肌、濃茶色のボブカット、凹凸のハッキリとした身体。

 北欧系の白い肌、金髪のツインテール、華奢な体型のソラとは全く方向性が異なるがハヤテも相当な美少女には違いない。

 そして、冒険者としてやってきているだけあってソラにはない大人びた雰囲気を感じさせ、そんな彼女に死ぬと脅され真愛は思わず謝ってしまう。


「マナは死なないよ! 皆でフォローするもん、ハヤテもフォローしなきゃダメだよ?」

「努力はするが真愛自身が戦力にもならなきゃダメだよ、パーティメンバーに入る限りはね」

「そ、それはそうだけど、それにアタシも戦力にはなれてないし」


 ムッとしてハヤテに近づくイシュタルにハヤテは答える。

 真っ当な正論だ。

 イシュタルは反論できない。


「ハヤテちゃんの言う通りだね、何とかしないとね」

「だから言ったろ? 風呂に浸かりながら考えようって······」

「ハヤテちゃん」


 何処か捉えどころのないハヤテであるが、知恵を貸してくれるという態度に真愛の顔が綻ぶ。


「こんな気持ちいいお風呂に入りながらだったらきっと良い考えが浮かぶよ!」


 イシュタルも拳をグッと握り締めた。





「ふぅ······」


 そろそろ夕方だ。

 ソラは背筋を伸ばす。

 日が沈む前に軽く入浴して夜に備えなければ。

 塔からの襲撃があるかもしれない。

 脱衣場で服を脱いで浴場に足を踏み入れるが、


「な、何やってるんですかっ?」


 予想外の光景に思わず叫んでしまう。

 そこには湯船を出た状態でグッタリする真愛、イシュタル、ハヤテの3人がいたのであった。


「どれくらい入っていたんですか? この街の湯は温度が高いんです、湯あたりは危ないんですよ!?」

「アハハハハ······悪い」

「ゴメンねぇ」

「ごめんなさい」


 ソラに介抱され脱衣場に座らされた3人はグッタリしながらもどうやら無事のようだ。

 イシュタルがパタパタと顔を手で扇ぐ。


「マナに合う武器を考えてたんだよ、それで色々と考えているうちにね、ボーッとしてきちゃって」

「真愛さんに合う武器?」


 首を傾げるソラ。

 長い金色のツインテールも合わせて傾く。


「アハハ······私は目も悪いし、運動神経も無いからどうしようかと、ハヤテちゃんとイシュタルちゃんに相談に乗ってもらっていて、ああでもないこうでもないとしていたら時間が経っちゃって」

「そういう事だったんですか、なるほど」


 罰の悪そうに真愛が白状すると、ソラは顎に手を当てながら、


「腕力や武器を扱う技術が望めないのなら、無理に武器を持つ必要もないでしょう」


 と、答えた。


「どういう事よ? 魔力があっても魔法は上手く使えないんだろ? だったら何らかの武器を持たなきゃ闘えないだろ?」

「いえ、そうとも限りません、こと魔法の使い手ならば考えようはあります」

「え······ああ、媒体か?」


 ソラとのやり取りにハヤテはそうかと気づいたような声を上げた。


「そうです······真愛さんには何かの媒体を持ってもらった方が武器を持つよりも良いんじゃないでしょうか?」

「それもそうだな」

「ばいたい? なにそれ?」


 2人の話が飲み込めない真愛だったが、イシュタルが代弁してくれる。


「媒体っていうのは魔法使いが魔法を使う時にそれを通じて魔法を使ったりする物です、それを通して魔法を使うことによって、魔法のコントロールがやり易くなる場合があるんです、私の場合は剣を持ちたいので使ってませんから思い付きませんでした、オーソドックスなのは魔法使いが良く持っている杖ですね」

「あ、魔法の杖、そういうのかぁ」


 魔法使いが良く持っている杖。

 そう言われてしまえばソラの説明で真愛にも理解が出来た。

 それは魔法を使う時に何かの助けになる物といった所であろう。

 

「そうだね、それで私の魔法のコントロールが少しでも効くようになるなら何かの媒体を持ちたいな、どこかで手に入らないかな?」


 確かに非力な上に技術もない自分が武器を持つよりも魔法の使用に少しでも有利になるような媒体を持った方が懸命だろう。

 真愛はそう申し出たが、


「すいません······実は言い出しておいて私も悪いんですが実はそう簡単にもいかないんです」


 ソラは何かに気づいたようにして真愛に謝ってきたのであった。

 


続く 

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