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第29話「ハヤテという少女 その1」

「ハヤテさんじゃないですか!」


 看板娘が声を上げる。


「四日ぶりだねぇ」


 シャツの上に皮の胸当て、ショートパンツにブーツという軽装をした濃茶色のショートボブカットの少女ハヤテは軽く手を上げた。

 年齢はソラよりは上に見えるが大河よりは年下、だいたい10代半ばだろう。

 ややつり目の青い瞳、高めの鼻筋から薄い唇に形の良い輪郭と容姿は相当に整っている。


『ツールポーチか』


 整った容姿も目立つが、大河が目につけたのは彼女の装備品。

 胸周りをカヴァーする皮の胸当て、手袋、ハーフパンツにブーツという明らかな軽装。

 腰にはツールポーチがあるが大した物が収まっているように思えない。

 大河には彼女の武装が見えなかった。


「ハヤテさん、何日か前にパーティと塔に入ったんじゃないですかぁ?」

「ああ、あそこはやめた······リーダーはケチだしエロガッパだし、なにより約束守らねぇしね」


 看板娘に訊ねられるとハヤテはケッとばかりにつまらなそうに答えて、看板娘とソラ、大河の座るテーブルに歩いてくる。


「ハヤテさんですか? 初めまして私は······」


 ソラが彼女に丁寧に頭を下げて挨拶すると、


「神聖聖徒会教会のソラちゃん、年端もいかないのに魔法も剣も凄い、更に孤児や困った住民達を助ける街では大人気の娘でしょ? 知ってるよ、というよりはある程度街にいると自然とアンタみたいな人の噂は耳に入ってくるよ、良い意味の街の有名人だもん」


 ハヤテはソラの自己紹介を遮って、おもむろにテーブルの上の唐揚げを一つつまみ上げて口に運び、アチチと舌をペロッと出す。

 街の有名人。

 魔法や剣の才能、街への奉仕活動に加え13歳という年齢とその美貌ならばそれは納得だ。


「そうですか······実は私もハヤテさんのお名前は聞いた事がありますよ?」


 唐揚げをモグモグとしているハヤテを見上げるソラ。

 そのなのか?

 大河はそう聞きくなったが二人の会話に割り込むのに躊躇し、口には出さない。


「あんま良い噂じゃないだろ?」

「噂なんて良いも悪いもいう人の立場と勝手ですからね、そういう所には興味はありませんけど、その腕前は色々な所で高く買われているけど、幾つもパーティを変えている、そう聞きました」

「まぁ、そうなんだけどねぇ······今回は私には非がないぞ!」


 ハヤテは傍らの看板娘の肩に手を回し、


「アンタに紹介されたあのパーティなんだよ!? モンスター倒す度にくれるとか言ってたボーナス渋り出すし、リーダーはスボン下ろして私に夜這いかけようとするし、周りは止めるどころか混じろうとするし······もう少しマトモな奴等に私を紹介しろよ!」


 と、ジト目で文句をつける。

 話を素直に聞けば看板娘がハヤテを紹介したパーティでトラブルがあったようだ。


「アハハハ······パーティが成立した後の男女間系やお金のやり取りは私にはちょっと、条件は互いにちゃんと聞きましたしぃ、仲良くやるかやらないかは互いの個人的交渉次第でしょ?」

「言うじゃんか! でも危うく回されるトコだったしムカついたから二人ばかり暫く男として再起不能にしてやったよ、あははは!」


 苦笑しつつも案外に図太い看板娘の肩から手を離しハヤテは腰に手を当てて笑う。

 紹介されたパーティの編成はわからないが、10代半ばの少女が冒険者パーティに加わるというのは色々と難しい事があるのかもしれない。

 紹介される方もする方もなりの図太さが必要なのだろう。


「ハヤテさん······いいですか?」


 やや逸れ始めた話にハヤテに向かって強い視線を向けるソラ。


「さっき、私が娘さんに提示した条件じゃ冒険者は雇えない、そう言われましたけど何故か聞いても良いですか?」

「あ~、そうだった! そうだった!」


 ハヤテは手をポンと叩く。


「無理だ、ってアンタは言ったけど俺達の出した条件はそんなに良くなかったのか?」


 大河が軽く手を上げて聞くと、


「良くない、良いっていう前に冒険者としての暮らし知らない素人さん、って判るからね······」


 ハヤテは大河の目の前のテーブルに腰を下ろして、


「いい身体してる男は嫌いじゃないから、何でかは二人っきりで優しく教えて上げようか?」


 と、意味ありげで色っぽい笑みを見せた。




続く 

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