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第28話「冒険者を雇いたいのですがお金はありません」

「お、お金がないんですかぁ!?」

「そうなんです、今は······」


 冒頭。

 ソラの素直な告白に、はぁ!? という顔を見せるそばかす看板娘。


「神聖聖徒会教会の方ですよねぇ? アレって全土にありますよね? フェンリル討伐というなら予算とか無いんですか?」

「私はシュティエルテル少年少女部長です、予算を持っていたような上の方はもう臨時首都のシェールフェンに移ってしまったんです、今は十数人の身寄りの無い子供達をようやく養えるくらいの蓄えしかこの街の神聖聖徒会教会にはありません」

「······んむぅ」


 怪訝な表情でパタと手帳を閉じる看板娘。

 この国でメジャーである神聖聖徒会教会という名前で期待があったのだろう、彼女の顔には落胆がハッキリと見えた。


「少なくとも装備等の準備金と手付けの報酬くらいは無いとある程度の経験のある冒険者の人は誰も話すら聞いてくれませんよぉ」

「そこは冒険で獲た報酬の半額はその方に渡す、そういう契約ならどうでしょうか? パーティは私とこちらの大河様、そしてあと2人いるから、雇われた人を合わせて5人になります、その人数で塔内で獲た物の半分は取り分としては破格じゃないですか? 単純に考えて2倍以上の報酬ですから」


 ソラが看板娘に申し出る。

 パーティ編成の目的が金銭ではない為、その条件は大河としても構わない。

 儲けなくてもいい。

 フェンリルを倒すまで冒険の維持が出来る金銭や報酬は残れば良いのだ。

 問題が発生する可能性はあるが現在の財布が非常に厳しい中でパーティが取り得る唯一の有効と思える手段だと思える。


「ふぅん······条件としては悪くないですよねぇ、条件としては」

「でしょう? パーティで獲た報酬の半分を獲れるなら準備金や前金は必要ないでしょう? それにその方が頑張れば頑張っただけ取り分も増えますから、貴女からそれを推薦できる冒険者の方に説明して貰えませんか?」

「なるほどぉ」


 看板娘は手帳で自分の頬をペチペチと叩きながら考えを巡らせた後で、


「で? その条件はともかくパーティに必要な冒険者のタイプはどんな感じですか? どんな方をきぼうされてるんですかぁ?」


 と、話を続ける。


『少なくとも打ちきりにはならなかったな』


 大河はひとまず胸をホッと撫で下ろす。

 話が続いたという事は一先ずは話のつけようがあるという意味だ。


「まずは······」


 ソラは傍らのフォークを手にするとおもむろにブスッと皿の上の唐揚げを貫き、


「リザードマンクラスは一人で問題なく仕留められるくらいの戦力が欲しいです······剣で闘っても魔法で闘っても構いません、尚且つ冒険に必要なアピールスキルがあれば話は早いです」


 そう答えてパクリと口に運ぶ。


「なるほどぉ」


 看板娘はニタリと笑う。

 ソラからしてみればそこまで厳しい条件ではない。

 今は四人のパーティの内、単独で魔物と闘えるのがソラと大河だけである。

 真愛の魔法、イシュタルのスリングショットはまだまだ戦力化は時間がかかるだろう、だから助っ人は3人目の戦力となってくれれば贅沢は言わない。

 強ければ強いほど良いのは確かだが、パーティを楽にさせてくれるようなサイクロップスを一撃で仕留めるような超一流の剣士、白クラス以上の魔力の魔術師など望めるようは立場や余裕は全く無いのだ。


「······どうでしょうか?」


 口の中の唐揚げを葡萄酒で流し込むとソラは看板娘を見つめた。


「ん~、目的は神聖聖徒会教会のフェンリル討伐、前金と準備金はありませんがパーティで獲た報酬の半分は取り分、そして単独である程度は闘えて冒険に役に立つスキルがあるなら、なお良し、と」


 看板娘は条件を確認しながら、インク壺を机に置いて、ペンで手帳にサラサラと書いていく。


「じゃあ、探してみますけど······」




「まぁ無理だね、その条件じゃ」




 不意に高い声がホールに響く。


「!?」


 ソラ達だけでなく、呑みながら然り気無く話を聞いていた周囲のパーティ達も思わず振り向いた先には皮の軽装鎧に身を包んだ一人の少女が壁に背をかけて笑っていたのであった。




続く

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