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第21話「魔力測定」

「何があった!?」


 勝手口から裏庭に飛び出した大河。

 そこにはソラ、イシュタルとヴィスパーが倒れた真愛を介抱する姿。


「ソラ、どうした?」

「すいません、魔法の練習で私の教え方が悪かったみたいです、明かりを照らす魔法の光球が派手に破裂したので気絶はされてますけど真愛さんは平気です、怪我もなさそうです」

「そうか、気絶してるだけか」


 ソラの返答に安堵しながら、倒れている真愛に駆け寄り上半身を抱き上げると、


「ううん······」


 真愛が動き出し、ユックリと薄目を開けた。


「真愛!」

「え······お兄ちゃん? なんで?」

「魔法をしくじったららしいぞ、爆発でお前は気絶したらしい、平気か? 痛いところはないか? 爆発の音が屋上まで聞こえたぞ」

「そうかぁ~、心配させてごめんね、ありがと、でも大丈夫だよ痛いところもない」


 真愛は大河に上半身を抱き上げられている事に気づくと頬を赤らめた後、大河の腕に自分の手を添えてから礼を言って立ち上がる。


「お、おい!? まさかまだ練習すんのか?」

「もちろん続けるよ、一回しぐしったくらいで止める訳にはいかないよ、イシュタルちゃんだって諦めてないんだから」

「いや、でもさ、お前倒れたばかりなんだぞ!?」

「インドアの私がすぐ立てるくらいなんだからダメージはないよ」

「また爆発しないとも限らねぇだろうが?」


 そう問答をしてソラに視線を送ってくる兄妹。

 各々ソラへの希望があるわけだが、ソラはその二人の視線に対して、


「とにかく練習を続けるにしても、止めるにしても今の爆発で先にやらなければいけない事が出来ました、出かけますから大河さんも真愛さんとイシュタルちゃんと一緒についてきてください」


 と、二人を制するように手を向けた。





 真愛の魔法失敗から数十分間。

 真愛とイシュタル、大河の三人はソラに城塞都市の東地区に連れてこられていた。

 そこは大河には覚えは無かったが、真愛とイシュタルは数日前に来た場所だった。


「大河様、ここは伝統派魔術師協会という組織の建物です」

「伝統派の魔術師がいる場所なんだよ! 前に真愛とソラとで来たよ」


 ソラの説明に当たり前だろうという註釈を加えるイシュタル。


「へぇ〜、真愛やイシュタルはここに来た事あんのか?」

「はい、真愛さんやイシュタルちゃんは先日に一度連れてきました、会わせたかった人がいたんですけどタイミングが悪くて会えなくて、またでいいと思って帰ったのですけど今日は何とかして会わせたいです」


 ソラは大河にそう答えると、口を真一文字に結んで扉のドアノッカーを鳴らした。





「ソラくん、この間は私を訪ねてきてくれたというのに悪かったね」


 前に訪れた時に通された応接室。

 ソファーに座る一行を迎えたのはメイドのヴェロニカとその主人であり、シュティエルテル伝統派魔術師協会の大師長という要職にあるゴットハルト・リンデマン。

 三十代前半、短く後ろに撫で付けた金髪、細身の体格、そして高い知性を感じさせつつも何処かで人を馬鹿にしたような表情の男は部屋に入ってくると窓際の安楽椅子に腰を下ろす。

 

「いえ、こちらこそ何度も訪ねてきて申し訳ありません、今日はお願いがありまして」

「要件はわかるよ、先日訪ねてきてくれた時にヴェロニカに残してくれた言伝ては聞いているからね、そちらの勇者様ご一行を私が視れば良いのだろう?」

「そうです」


 リンデマンに頷くソラ。

 先日訪ねた際にソラは事情を全てヴェロニカに話していたので話は伝わっているのだろう。


「勇者の登場という伝説を素直に信じるわけでないが······フェンリルの起こしてくれた騒動をどうにかしなければいけないのは確かだからな、先日は魔物を見事に撃退したという点を鑑みて協力をさせて貰うとするよ」

「はい、お手数なのは承知してますが是非ともお願いします」


 安楽椅子から立ち上がるリンデマン。

 ソラがソファーに座りながらではあるが深々と頭を下げると、リンデマンとヴェロニカは視線を合わせて頷きあう。


「昨日は珍しく襲撃はなかったが今日はわからない、そして互いに忙しい身だ、早くした方がいいな、ヴェロニカ準備を頼む」

「はい、すぐにでも」


 リンデマンに促されるとヴェロニカは奥の部屋に下がっていき、数十秒後に二つの布に包まれた何かを持って戻ってきた。


「応接机の上に」

「はい」


 リンデマンの指示にヴェロニカは各々の布を丁寧に開くと、現れたのは沢山の装飾の付いた王冠と子供の頭くらいある水晶であった。


「わぁ、何これ! お値段高いの!?」

「魔力の素質や供給力を視るためのとても高価な道具です、これらと御主人様の高度な判別魔法を組み合わせる事によってそれが可能なのです」

「わぁ、高価なの!? 綺麗で高価だなんて素敵だねぇ〜」


 王冠と水晶に目を輝かせたイシュタルの下世話な態度にもヴェロニカは表情をほとんど変えない。


『気安く出来ることではない、って事かな?』


 真愛は思う。

 高い道具に高度な魔法。

 魔法の素質や供給力を見るというのはゲーム画面でステータスを観るのとは違い、この世界では難しく手間のかかる事なのかもしれない。


「じゃあ始めようか、まずはその修道着を着るのに相応しい綺麗で高価な物が好きなお嬢ちゃんから始めようかな、ヴェロニカ」

「はい、失礼しますね、座ったままで結構です」


 リンデマンの指示を受けたヴェロニカは王冠を両手で持ってソファーに座ったイシュタルの前に立ち、ソッと頭に被せる。


「へへへ、王冠かぁ~、偉くなった気分だね」

「そのまま、リラックスしてヘラヘラしていてくればいいよ、水晶は王冠と魔力的な繋がりがあり、被せた人間の魔力、供給力を測る魔法道具だ」


 王冠を被せられて上機嫌のイシュタル。

 リンデマンはイシュタルの様子に薄笑いを浮かべてから安楽椅子から立ち上がり、机の上から水晶を手に取り、魔法の詠唱を始める。



「······よし、成功だ」


 十数秒の詠唱の後、リンデマンは掌の水晶をソラ達に向ける。


「水晶をよく見ていて欲しい、これから水晶内に光が浮かび出す、魔力の強さは赤、黄、白、青という順で色が淡いよりも濃い方が強い、そして供給力は光自体の光量で大体の判断が出来る」

「光の色が魔力の強さ、光の強さが供給力って訳か」

「そうだ、普通の人間は淡い赤にようやく判る程度の弱い光量が当たり前だ、それも長くは灯らないから見逃さない様に」


 説明に水晶に身を乗り出す大河や真愛、リンデマンは頷く。

 大きくは無いが神秘的な水晶。




「············」


 十数秒が経過するが、水晶は全く変化無い。

 水晶へ向けていた視線を真愛はリンデマンに逸らした。


「時間、かかるんですか?」

「いや、今までここまでかかったことはない、詠唱が終われば数秒で水晶に変化は現れる筈だが?」

「どういうこと?」


 怪訝な顔を見せるリンデマンに頬っぺたを膨らますイシュタル。


「もしかするとこれは魔力、供給力ともに全く無い、という事では無いでしょうか?」


 ヴェロニカがポツリと答えると、


「そんなバカなー!!」


 そう泣き声を上げたのだった。



続く

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