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第19話「朝ごはんと魔法練習」

「マナ、これでいいかな?」

「ありがと、包丁の扱い出来るねイシュタルちゃん」


 皮の剥かれた何個かのジャガイモをイシュタルが台所のテーブルに置くと、鍋の火のかけられた竈を見ながら真愛は玉葱を包丁で切りながら礼を言う。

 昨夜は魔物の襲撃は無かった。

 不安は覚えながらもしっかりと睡眠がとれた真愛は朝早く起きれてしまい、それならばとパッセが普段やっているであろう朝食の準備を手伝うことにしたのである。


「マナは料理上手いね!」

「うん、ウチはお母さんは海外で働いていたし残された家族は男も女も料理できるのが私だけだったからね、毎日料理はしてたんだよね」


 台所にあった調理用具と食材。

 それらはかなり粗末な物ではあったが、包丁や鍋であったし、ジャガイモや玉葱はかなり小ぶりではあったが知っているそれであった。

 土で固められた火釜を使ったことがないのでイシュタルやパッセに手伝ってもらったが、料理は何とか自分の常識内で出来そうである。


「ジャガイモと玉葱のシチューだね!」

「そうなるね、塩味の······」


 苦笑を返す真愛。

 それくらいしか出来ない。

 真愛の家にあった諸々の調味料が殆どない。

 あるのは質の悪そうな黒い油と少しの塩。

 

『醤油や味醂、砂糖やうま味調味料とか料理酒、オイスターソースとか無理だよなぁ』


 ここは異世界。

 それも科学的技術は中世くらいに思えたのでその辺りは期待できないだろう。

 この街の状態や修道院の経済的な状況を考えれば、他にも食材や調味料があるのかもしれないが揃えられないだけなのかもしれない。


『その辺りも考えてみた方がいいかも、私も料理が出来るくらいだけど多少なりの知識はあるんだから、この世界の人たちに何か教えてあげられるかもしれないし』

 

 そんな事を考えていると、


「マナ、そろそろソラがお風呂上がるかもよ、裏庭で待っててって、何か約束してたんでしょ?」


 イシュタルが鍋を木製のお玉で回す真愛を覗き込んでくる。


「ええ、魔法を教えてもらうの、多分いきなりはうまくいかないとは思うけど、棒とかで直接戦うよりはマシかな? って」

「いいなぁ~、アタシもスリング全然当たんないからソラみたいに魔法が使えたらいいかも! いっしょに習ってみてもいいかな?」

「平気じゃないかな? 私からして習うの初めてなんだから」

「そうだよね! じゃあ、お料理はパッセに任せて私たちはソラの所にいこう! アタシもソラみたいにバババーン、って魔法使うぞ!」


 修道着の腕を捲り張り切るイシュタル。


『イシュタルちゃんもパーティの役に立とうと頑張ってるんだもんね、私も何とか簡単な魔法でも覚えないといけないなぁ』

 

 そんなイシュタルの様子に微笑みながら調理中の玉ねぎとジャガイモの塩味スープをお玉で少しだけ口に含み、


『魔法もそうなんだけど、こっちも何とかしてあげたいなぁ〜、ちゃんとしたものを食べさせてあげないと闘いが続くと苦しくなっちゃうもんね』


 真愛はそんな事を考えるのだった。





「魔法には自分に向き、不向きな系統があります」

 

 まだ陽の低い十数分後の裏庭。

 修道服姿のソラが並ぶ真愛とイシュタルに説明を始める。


「攻撃系統、回復系統、変化系統、補助系統など現在見つけられている魔法は数百以上、魔法の管理や研究をしている各魔術協会や個人の魔道士達も全てを把握しているわけではありません、日々新たな詠唱法などが研究されています」

「ソラは何種類くらいの魔法を使えるの?」

「私が使えるのは三十くらいです、幾らかの系統魔法を覚えてますけど中には得手不得手がありますね、何回練習しても出来ない魔法もあります」

「ライトニング······あれは得意なんだよね?」

「ええ、ライドニングは初めて覚えた攻撃魔法なんです、そのせいか殆どしくじりません」


 イシュタルと真愛の質問にソラは答えた。

 ここまでの戦闘を思い出すとソラはかなりの場面を雷光を放つライトニングという魔法を使っていたのを思い出したのだ。

 緊急を要する戦闘時に魔法のミスというのは痛いロス、そういう時は信頼が置ける得意な魔法を使うのは当然の選択なのだろう。


「得意な魔法は威力も上がります、それに基本的に魔力の才能、魔力の高い人間が使う魔法は同じ魔法を使っても威力は相当な差が出ます」

「才能も必要なんだね!」

「そうですね、魔法は先天的な素質が大切です、でも練習や努力は当然必要ですけど」

「素質はどうやって解るの? 魔法を使ってみるしかない?」

「それもそうですけど、高位の魔術士は才能をある程度の見抜く事が出来る人もいます、何の系統が向いているか魔力の高さ、供給力が魔力を使うのにどこまで持つか、といった感じです」

「供給力!?」


 突然出た単語に首を傾げるイシュタル。


「供給力とか魔法精神力とか人によって呼び方は変わりますが、魔力というのは魔法の力の強さ、供給力とは魔法を使い続けられるスタミナの量みたいな物です」

『俗にいうMPだね』


 真愛は口にはしなかったがそう解釈した。

 あまりゲームをやらない真愛でもそれとなくの理解は出来た。


「いくら魔力が高くても供給力が少なければ、すぐに魔法が使えなくなります、高い威力、効果の魔法ほど供給力を多く消費しますからすぐに戦闘不能になってしまいます」

「なるほどね~、供給力は魔法のスタミナ、何でも強い魔法をバンバン出来るようになれれば良い訳じゃない、と」

「イシュタルちゃん、理解が早いね」


 案外に説明を理解している様子のイシュタルをソラは笑顔で褒める。


『イシュタルちゃんはお転婆さんだけど理解力もあるし気も回るいい娘だよね』


 ファンタジーゲームや小説、漫画などのお陰で真愛はソラの言う事が何となく理解できるが、イシュタルがそれを短い説明で理解できた様子なのは少し驚いてしまう。



「取りあえず二人の魔力や供給力を知りたいんですけど、私にはそれを見抜く能力はないので、魔法を使う準備の基本と初歩の魔法を試してみて、真愛さんとイシュタルちゃんの魔力を試してみましょう」


 そう言うと、ソラは少しの間目を瞑り······ボソボソと短い詠唱をすると、


「それっ」


 軽く中に手を挙げた。

 ソラの掌から現れたのは小さな光球。

 それはフワフワと浮かんでいる。


「何も起きない? 爆発とかもしないね」


 浮かぶ光球を見上げるイシュタル。

 光球をライトニングだと思ったのだろう。


「これは昨日、塔内に入った時に使った明かりの魔法だよね」


 真愛が聞くとソラは頷く。


「そうです、このライトボールという魔法は込めた魔力によって光球の大きさ、明るさ、そして光り続ける時間が変わりますから、初めて魔法を使う人の素質を比較的見やすいんですよ」

「へぇ~」


 浮かぶ光球を見上げるイシュタルと真愛。


「じゃあ、魔力の集中の仕方と詠唱を教えますのでこの魔法からやっていきましょう、まずはイシュタルちゃんからいきましょう」


 そう言いながらソラはイシュタルの右手を取り、自分の元に招き寄せた。




続く




 


 


 





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