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第11話「お兄ちゃん、空から全裸の女の子が!!」前編

「もう少しです」


 ソラに先導された真愛と大河は郊外の草原を塔に向けて歩いていた。 

 晴れ渡る空、周囲に広がるのは牧歌的な景色。

 異様なのは巨大な塔だけ。


「見た目はすぐ近くに見えるけど、着くとなるとやっぱり結構歩くんだな」

「そうだね、あの塔が大きすぎるんだよ」


 街を出て30分ほど歩き、草原の丘を幾つかを越えた。

 塔の麓まで、すぐに着くかと思われたが、あまりにも大きな塔が目測を狂わせていた。

 苦笑し合う大河と真愛にソラが告げる。


「着きましたよ」


 緩やかな丘を越えた所でソラが指差す。

 巨大な円形の塔の1階部分がそこでようやく見えた。

 

「近づくとやっぱりデケェな」

「塔を形成する円柱の周囲は、簡単に正面からの見た目に裏側の2倍としても······軽く1000メートルはあるんじゃないかな? 素材は何かな、近づいてもいい?」

「ええ、昼間なら周りを回っても平気です、ただ穴がそこに空いています、討伐隊などはそこから塔の中に入っていったんですけど、入らないようにはして下さい」


 確認を取った真愛に頷きソラが指さしたのは、一階部分の何人か並んで入れるような大きな穴。


「アレは初めから?」

「そうです、魔物が出てくるから塞ごうと言う話もあったのですが、討伐隊の入口にもなりますし、昨夜も見た通り魔物の殆どはもっと高い階から飛んできているので塞ぐ意味が無いと」

「そうだな、攻め口もないとダメだからな」


 一階部分の穴の前に歩いていく大河。

 真愛とソラもそれに続く。 

 ヒビ割れして崩れた落ちた様な穴。

 真愛はその欠片を拾う。


「石······とも何か違うし、鉄でもないなぁ」


 壁の材質はどちらかと問われたら石に近いのだが、真愛は特別その方面に知識があるわけでもないので詳しい判別は出来ない。


「中は暗いね······ちょっと覗くのは平気かな? 魔物出てこないよね?」

「気をつけてください、穴の近くには出てこないと思いますけど、討伐隊の報告によれば塔の中では昼夜関係なく魔物が襲いかかってきた、という事ですから」

「そうなんだ、やっぱり怖いね」


 穴から中を覗き込もうとした真愛はソラの注意に身を縮めるが、大河は半身を穴の中に入れてしまう。

 

「じゃあ、魔物っていうのは昼間の太陽の光でも苦手なのか?」

「それはどうでしょうか? 太陽が殆どのぞいていない嵐や雨の日でも昼は外には出てきませんし、そのあたりの事はわかりません、塔の中にはある程度の灯りが色々なやり方で点いているらしいので、魔物が光に弱いという事はなさそうですが」

「そっか、よくわかんねぇな」

「とりあえず穴から離れよう、今日は中に入りに来た訳じゃないからね」


 ソラは平気だと言ったが何があるかはわからない。

 真愛は大河の袖を引いて入口から離す。

 今日はとりあえず塔の様子見。

 中に入るつもりはない。



「じゃあ、塔の外周でも見て回ってくるか?」

「もう、出来る事はそれくらいだね」


 大河の提案に真愛は塔を見上げる。

 中に入るのならともかく、下見であまり出来る事はないだろう。


「俺が一人で回るから、ソラは真愛についてここで待っててくれ、大きいけどグルっと回ってくるだけならそこまで時間はかかんねぇだろうから」

「わかりました、外周に昼間は魔物は出ないでしょうが気をつけて、何かがあれば大声で呼んでください、かなり声は聞こえるでしょうから」

「わかった」


 一人で回るという大河はソラの注意に頷き、


「お兄ちゃん、気をつけてね」

「わかってるさ、回ってくるだけだ、お前もソラに迷惑かけずに大人しく待ってるんだぞ!?」 

「子供じゃねぇんだぞ、バカ!」


 真愛ともそんなやり取りをすると、塔を右周りに壁伝いに歩き出す。


「もう!」


 塔の壁の角度に沿って見えなくなっていく大河の背中に頬を膨らます真愛。

 クスクスと口元に手を当ててソラが笑う。


「ソラちゃん!?」

「すいません、笑っちゃって、何だかお二人が微笑ましくって」

「え? 微笑ましい?」

「はい、兄弟って良いな、そう思ったんです」


 ソラの屈託のない笑顔。

 嫌味ではなく本気で真愛と大河に微笑ましさを感じている、という風だ。


「うーん、いい兄弟かぁ〜」

「真愛さん······」

「ん?」

「真愛さんは大河さんの事、本当に好きですよね?」

「ブーーーッ!」


 不意討ちの問い。

 眼鏡がズリ落ちる程に真愛は吹き、大赤面してしまう。


「あ、あのね、ソラちゃん······私はね、そりゃ仲は悪くないよ、悪くないし安心できるとこもある、それにさ、お兄ちゃんはあれでも頼りになるしさ、好きとかいうかさ、そう、そうなの、頼れる兄貴として好きなんだよ、だからそういう感じ!」 

「ですよね、兄弟ですもんね」


 パタパタする真愛に対して、ソラはまたクスッとなるが、ふと空を仰ぐ。


「頼りになる兄貴かぁ〜、なんだかいいなぁ」

「ソラちゃん······」


 大して意味深な問いでは無かったことに安堵しつつも、空を仰ぐソラの横顔を真愛は見つめてしまう。

 ツインテールの金髪、碧眼、高い鼻に薄い唇、整った輪郭。  

 美しい。

 聡明で真面目、かつ才能豊か。 

 周りにも頼られていて、本人に使命感もある。

 まだ浅い付き合いだが、この娘はとても優秀な娘だ。

 でも······


『まだ13歳の女の子なんだよね』


 真愛や大河よりもだいぶ年下。

 自分達の世界でなら、まだ中学生なのだ。

 

「ねぇ、ソラちゃん······あのね」

「はい?」 


 見合う真愛とソラだったが、



「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」


 

 周囲を切り裂くような悲鳴が響き渡った。


「お兄ちゃん!?」

「大河さま!?」


 間違いない大河の声。

 すぐに大河の歩いていった方向に走り出す真愛とソラ。

 

『あのお兄ちゃんが悲鳴を上げるとか! 一体何が起こったのっ!?』


 塔の壁沿いを全力で走る。

 まだ、そんなに離れていない筈!

 インドア派で脚力には自信がないが、ソラについていく真愛。


『ソラちゃん、鎧着てるのに、私より走るの速い······っ!』


 大河の危機という不安と慣れないダッシュが真愛の心臓の鼓動を早める。


「!!」


 目の前のソラの脚が止まり、真愛はそこにぶつかりそうになりながらも、ソラの両肩を抑える様にして何とか止まった。


「お兄ちゃん!」

「······」


 そこには大地に仰向けに横たわる大河。

 そして、大河に覆い被さるように抱きついた見知らぬ銀髪のショートカットの少女がいのだが······


「はだか!?」


 その少女の姿に真愛とソラは思わず声を揃えて立ち尽くしてしまうのだった。



  

続く

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