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魔王の娘エイラム その4

「お待たせしましたー」


 魔王の娘が注文した料理が運ばれてきた。


「あっ、お姉さん。エールのおかわりお願い」

「はーい」


 見ると、魔王の娘が既に2杯分のマグカップを空にしていた。

 酒を魔力変換とか言っていたが、魔族ってのは酒に強いのか?


「初めて食べる料理ですけど、地上の料理はどれも美味しいですのね」

「地上……ですか?」

「あら、ご存知なかったのですか? わたくしたち魔族は地の底に住んでいるのですのよ」


 へえ、魔族の世界は地の底にあるのか。

 となると、ダンジョンの地下深くは魔族の世界に繋がっているのかもな。

 まあ、ダンジョンの終着点には興味はないが、それよりも……


「あのー、エイラム様。先ほどから気になっていたのですが……」

「はい? どうかなさいましたか?」

「何故、エイラム様は私以外の人間と話す時の言葉遣いが違うのですか?」


 今日出会って間もない頃からずっと気になっていたんだ。

 何なんだ、あの喋り慣れていない言葉遣いは。

 おとぎ話のお姫様みたいな口調で喋りやがって……いや、魔族の王の娘だけあって姫には違いないんだが。


「それは、わたくしが魔王の娘だという事を隠しているのですから、普通の言葉遣いで喋らないと怪しまれるじゃないですか」


 確かに……


「そういう事でしたか、失礼致しました。となると魔界では普段からこういう言葉遣いなのですね?」

「違います! 普段からこんな言葉遣いをしていたら、わたくし、ただの馬鹿じゃないですか」


 おおーーーーい!!?

 じゃあ、何で今、こんな言葉遣いしているんだよ?


「でしたら何故、私に対してはこの言葉遣いなんでしょうか?」

「町長の息子さんがかしこまった言葉遣いをなさっているのに、わたくしだけ普通に喋っていたら常識のない人みたいに見えてしまいますわ」


 そんな理由かよ!

 いや、あんた一応魔王の娘で、俺たちからすれば目上の存在なんだから堂々としてろよな。


「あのー、言い難いんですが、普通に喋ってくださって宜しいのですよ?」

「えええええっ!!?」


 いや、そんなに驚かなくても。


「だったら早く言ってよ、もう」

「申し訳ありませんでした」

「って、町長の息子くんも、そんな堅ッ苦しい言葉遣いしないで普通に喋ってよ。じゃないと私もつられちゃうじゃない」


 そう言われてもなあ。

 こっちにも一応、立場ってものがあるし。


「いえ、そういう訳には」

「何? 私がお父様の、魔王の娘だからって訳?」

「はい。魔王様のおかげで成り立っている町ですので」

「いい?! 偉いのは私のお父様であって、私じゃないの!」


 その「お父様」の威厳で、今この場にいる奴がそれを言うのかよ……


「私はお父様から頼まれた仕事を実行するために来ているから、仕事の話だけは魔王の発言と同等に思ってもらわなきゃ困るけど、それ以外は対等だから」

「はぁ……」

「もうっ! じゃあ、もっと単純に、私の仕事がやり難いから普通に喋って! 命令だから守って!」

「わかりまし……わかったよ、エイラムさん」


 やり難いような、やり易いような、なんだかなあ……


「分かればよろしい。それじゃあ、喋り易くなったところで、そろそろ本題に入ろうかな」


 本題……だ……と!?

 その言い方だと、何かあるみたいだな。

 悪い話じゃないといいんだが。


「本題ってのは視察の事なんだけど、率直に言って街のレベル低過ぎ問題。これを何とかしなきゃ」

「街のレベル……?」

「簡単に言うと、ダンジョンの攻略が進んでいない……かな?」


 ダンジョンの攻略状況なんて考えた事もなかったなあ。

 うちはまあ、冒険者が集まってダンジョン周辺の街が栄えて、その結果町全体が潤えばいいんだが、魔王側の都合もあるわけか。

 しかし、そんな事を急に言われても困るぞ。


「ダンジョンの攻略が進んでいないって事は、要は強い冒険者が街にいないって事か?」

「間違いじゃないけど、ちょっと違うかなあ? お父様……魔王がダンジョンを用意した目的って、ダンジョンで強い冒険者を育てる事なの。だから、強い冒険者が街にいないって事は、ダンジョンを攻略する冒険者が街に居つかなくて育たなかったり、そもそも人が集まっていないって事」


 ダンジョンにそんな目的があったなんて。

 すると、もしかして冒険者が脆弱なままのこの街はお払い箱……なのか!?

 それどころか、最悪魔王の逆鱗に触れて町ごと消滅とか……ちょっとこれ最高にヤバくね?


「おいおい、ちょっと待ってくれ! 冒険者を集めて育てるって、町長の息子の俺に言われても何もできないぞ!」

「そうなの? 困ったなあ……今のままだと、お父様も凄く困るだろうなあ……」

「ま、待て。町長の父上と相談すれば……町の皆と話し合って協力すれば何とかできるかも」

「うーん、でも現状こんな感じだし、そんなに簡単にいかないと思うんだけどなあ……」


 魔王の娘が、何とも意地悪そうに答える。

 くそっ! 俺にどうしろって言うんだ?


「そ・こ・で! 私、エイラムちゃんの出番なのです!!」


 ……は?


「魔王の娘である私が、ダンジョン含めた街の経営の指揮をします。だから、町長の息子は町とのパイプ役になって私を補佐してね」


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