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魔王の娘エイラム その3

「武器屋の視察、あれで宜しかったのですか?」


 結果が気になり、思わず魔王の娘に尋ねてしまった。


「あの程度の武器が珍しく高価だとか……いえ、何でもありませんわ。当初の目的も果たせましたし、視察の方も街の冒険者のレベルとか、ダンジョンがどれだけ攻略されているかもわかりましたので」

「そ、そうですか」


 言葉遣いが変なのに戻っているな。

 しかし何故、冒険者やダンジョンの事まで分かるんだ!?

 こいつ、目的は視察だなんて言っているが口から出まかせなんじゃあ?


「それで、次は何処に行きますか」

「お金もできましたので、その辺りを散策しますわ」


 とどのつまり、ショッピングと言ったところだな。

 まあ、この辺りは商店が集まる通りだし丁度いいか。


「町長の息子さん、あちらのお店は何を売っているのでしょうか?」

「あれは串焼きと言って、串に食材を刺して焼いた簡単な料理です。この辺りは食べ物を売っているエリアみたいですね」

「料理……食べ物……あっ、いえ、わかりました。ご説明ありがとうございます」


 そういえば、魔王とか魔界の人間って普段何を食べているんだ?

 食事の用意とか深く考えていなかったけど、俺たちと同じものでいいのか?

 って、あれ? 魔王の娘がいないぞ!?


「おばちゃん、串焼き2本ちょうだい!」

「あいよ」


 すぐ近くの串焼き屋から魔王の娘の声が聞こえて一安心した。

 ってか、何普通に買い食いしようとしているんだよ……

 しかも、買い物しているときは普通の言葉遣いだし。


「どうかなさいましたか? これ、貴方の分ですのよ」


 戻って来た魔王の娘が、先ほど買った串焼きの2本の内1本を俺に差し出している。


「あっ、これはご丁寧にどうも。有難く頂戴致します」


 俺が串焼きを受け取ると、魔王の娘はもう1本の串焼きを食べ始めた。


「んーーおいしいーーーー」


 お口に合ったようで何よりだ。

 食事も人間と同じで大丈夫そうでよかった。

 どれ、俺も一口……うん、確かに美味い。




 俺と魔王の娘は串焼きを食べながら歩く事にした。


「ところで、食べ終わった後の串はどうすればよいのでしょうか?」


 足元を見ると、道のそこら辺に木の串が落ちているのが分かる。

 おそらく俺たちと同じ様に食べた奴が捨てたのだろう。


「串はその辺りに適当に捨ててください」


 と言って俺は串焼きを食べ終え、木の串を道に捨てた。


「……そうですか、わかりましたわ」


 その答えは何か不満そうにも聞こえたが、魔王の娘も同じ様に木の串を捨てた。


「ところで、食べ歩きもいいですけど、何かこう、もっと落ち着いて飲み食いするお店はありませんの?」

「そうですねえ、室内での食事が可能な店舗ですと酒場しかありませんし、食事なら屋敷に戻ればご用意いたしますが」

「酒! 酒場に行きましょう!」

「は、はあ……」




 理由は分からないが、魔王の娘の熱い要望で酒場まで来た。

 まだ昼間だから客は少ないが、中には昼間から入り浸りで飲んでいる冒険者もいる。


「お姉さん、エール2つ。それと、何かオススメの料理を幾つかお願い」

「うーん、オススメって言われても……あっ、でも初めての人ならコレとかがいいかも?」


 魔王の娘め、いきなり酒を注文しやがった。

 いや、酒場だから酒を頼むのは当然なんだが、まだ日も高いぞ。


「はい、エール2つ。料理の方はもうちょっとまっててね」

「やったぁ、ありがとうお姉さん」


 ウェイトレスからエール・ビールを受け取った魔族の娘は、「お前も飲むだろ?」と言わんばかりに一方のマグカップをこちらに突き出す。

 おいおい、俺にも飲めってか?


「いえ、私はこれでも仕事中ですので。それに、昼間から飲むのにも抵抗ありますし」

「……ま、魔族はお酒を魔力に変換できるのですのよっ! の、飲まないなら仕方ありません。わたくしが2杯いただきますわっ!」


 そんな見苦しい言い訳しなくても。

 それはさておき、『魔族』って言うのか。

 魔族の王だから『魔王』なのだと今更気付いた。


「まったく、人間でも昼間から飲んでいる人もいらっしゃるじゃないですか」

「今日を休日にしている冒険者の方だと思います。彼らも毎日ダンジョンに入っていると疲弊しますし、こういった休みの日も必要なのかと」

「この酒場はダンジョン探索を行っている冒険者が集まるのですか?」

「夜になればダンジョンから帰還した冒険者たちが集まって賑わいますよ」


 と言っても、父上と一緒に何回か来た程度の経験談でしかないんだけどな。


「となると……これは、夜まで酒場での視察を続けるしかないですわね」


 おいおい、今は夕方に近い時間だと思うが、夜はまだ早いぞ。


「夜までにはまだ時間がありますが、本当にここでお待ちになるのですか?」

「ええ、そうよ。町長の息子さん、貴方とも色々お話したいんだけど、それじゃあご不満?」


 成る程、それで室内で飲食できる場所というわけか。


「いえ、とんでもないです」

「よかった。食事でも食べながらじっくり話しましょう」


 これを機に、俺も魔王の娘に質問してみるかな?

 今後のためにも。


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