獣見血
獣の血で染まった岩が歴史を見つめていた そして見届けることしかできない無力さを嘆いていた
始まりはいつも雨 種に刻まれたプログラム
貪った肉で磨いた牙に 映った標的を仕留めるのみ
恨みや憎しみなどはない 我々が此処に生まれる前に天が決めたことに逆らえるわけがない
そうして当たり前かのように牙を磨ぐ 未だ見ぬ誰かの血を見るために?
問う知恵は備わっていない 種が出した答えは「ひとつの山に二頭の虎は要らぬ」
何とまあ哀れなのだろう 自由である不自由と生まれてから死ぬまで解かれることのない牢獄に
住み続ければならない宿命は切れない鎖 それすら知ることができないのだから
さぁ生き残るために戦おう どうせ我々の代では決して終わることはない
初めての戦いから数えて30代目 「まだ終わらぬのか」と皺寄せる岩
言い訳ならたくさんある でも言い訳の吐露は散った家族への侮辱になる
我々は戦って消える花 戦って生きろと親から習い生きてきた
親は言った 「弱い者は散り強い者が王となる」
子は疑った 「この戦いに終わりがないなら 勝敗や犠牲に意味すらない」
孫は悟った 「どう足掻いても生命の螺旋は変わらない 与えられた道の上で営むことしかできないのだ」
最後に残った子は泣いた 「情けないと詰っておくれ 教えを守り続けてきたけれど残せるものは因果だけ
弱者の命を貪ってきたから 私がどうなるのかは教えられずともわかっている
そして私の子が孫が辿る道も それならもう終わりにしようじゃないか」
血で磨いた牙が手折られ 標的と定めた心臓の一部となる
最後の一滴すら残さず飲み込んだ時 血の雨が降った
「やっと終わったようだ この大地の一部になる前に生まれた姿に近付きたい
終焉はあなたに見届けて欲しい 戦友の命で生き永らえたこの私の醜い姿を」
歴史が目を閉じたころ すべての命が目を閉じた
今では独りきり 眠ることを忘れ岩は泣き続ける




