wind heaven
今回は愛と死をテーマにしました。
主人の死を見届けたくない故に自ら死を選ぶ家族である動物の話です。
風の国に旅立つとき 一対の雀が藤の花を銜えて現れるという
拒否の選択はない 無言で受け取った花を簪にした
恐怖の感情はない 悔やむとしたらあなたの傍を離れることだけ
時間が流れている限り 永遠の魔法の効果はいつか切れる
あなたを見送るならば 私が先にいこう
別れることよりも 見送る方が辛いから
大好きな花に包まれたいけど 笑顔を曇らせるだけだからこの体ひとつでいい
苦しい選択をした私を許して 依存を通り越すほどに愛している
上目遣いに見る私を 優しく撫でる
甘えて強請り擦り寄る 体温を持つカーテンに抱かれ眠った
ゆっくりと腕をすり抜け 愛しき主人の瞼に無言の別れを告げた
もう会うこともないだろう 花の蜜のような日々が風のように消えていく
風が残り香を消し去り 菊を敷き詰めた箱船を運んでくる
もうじきこの世界を出てゆく あなたとの甘い夢を抱いて
メッセージのない花の文 届く頃に過去を思い出して
いつか同じ場所で眠ろう 今はあなたの心の中で
いつか忘れましたが読んだ本に、飼い主の死期もしくは病気を感じ取ると、飼い主を見送りたくないがために自分が病気になり死んでしまうということが書かれていて、今回はそれをベースにしました。
藤の花の花言葉には歓迎しますというものがあります。
そしてタイトルにも使いましたが、風の国とは天国のことです。
一対の雀は天国へいくための使者。
以上のことを踏まえて考察すると、どちらかに死期が迫っているということになります。
主人の笑顔より死に顔は見たくないため、彼女(作中では何らかの動物)は自分が先に行く(逝く)ことを決意します。
家族のような愛し愛されのような関係なので、どちらか片方がいなくなることはお互いに辛い事を知っています。
だから何も残さず彼女は去るのです。
『風が残り香を消し去り~』とありますが、これは彼女に対する自然界からの温情です。
今回は愛と死をテーマにしましたが、私の中ではネガティブなものには分類していません。
彼女は長期に渡り主人を見守ってきました。
その役目が終わり、休息しなさいという意味で藤の花とともに使者がやってきました。
つまり死後の世界へ行くということは絶望ではなく新たな旅立ちなのです。
特に彼女は自然界と多少は関わりがあるので、抗うことなく受け入れます。
また同じ場所で眠れることを信じて。




