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異世界出張!迷宮技師 ~最弱技術者は魚を釣りたいだけなのに技術無双で成り上がる~  作者: 乃里のり
第3章 出張には延長がつきものな件について
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67:せんぱいごめんねっ

「せんぱいごめんねっ隠してたわけじゃないけど、おじいちゃんが『どこのオークの尻尾か分からないヤツに』って言うから――」



「せんぱい面するヤツがいると聞いちゃあ、ほっとけんじゃろうがっ」



「えっ! そんなこと言ってないからねっせんぱい! 3人でまた来るねって話しただけじゃないっ」



「うんにゃ! 『せんぱいのお陰で』とか『弱そうだけどすごい』とか口を開けば『せんぱい、せんぱい』ばっかりじゃった!」



「ちょっとやめてよっ/// おじいちゃん!」



「前まで『おじいちゃんだいすき』って言ってくれておったのにぃっ!」 



「それって何年も前の話じゃないっ」



「なんなら儂じゃって人生の先輩じゃ! おじいちゃん先輩って呼んでくれたっていいじゃろっ! じゃろ?」



「ほんとのほんとに意味わかんないよっ! おじいちゃんはおじいちゃんでしょっ!」



「っ! そうじゃったなぁマルテェ……おじいちゃんはおじいちゃんだけじゃもんのぉっ! のぉ!」



「そ、そうだね……タイトンおじいちゃんもいるけどね」



「なんじゃって?」



「なんでもなーい」



 いつの間にか随分と丸みを帯びた口調と威厳を失くした好々爺の孫かわいがりが始まっていた。



『たったの1ヶ月で見違えたねぇ』『悪い虫が寄らんといいが』『どれ紋章ルーンを100個ほど追加しようか』



 なんて言うガヤまで聞こえる始末。


 分かったことは商業組合長のオートイさんは、マルテさんの祖父であるということ。

 なんかここに来てから『ちょっとだけおどおどしてるレオさんと違って、マルテさんは物怖じしないなぁ』なんて思ってたよ。

 そりゃあ身内だもの。まるでアイドルだもの。



 ◇



 どうやら巨大ボルテックス・チューブ魔法の練習の間に、マルテさんは気を利かせて根回しをしてくれていたようだ。


 その効果もあったのか俺に対する不信感と威圧が消え、打ち合わせはとんとん拍子で進んだ。


 カブー駆除からの収益化を狙えるだけでなく、商業組合としても新しい冷凍技術を利用した魔導具アイテムが生産、販売できるのであれば決して悪い話ではなく、むしろ率先して先行投資を行ってくれるとのこと。

 さらにもう明日の朝一から試作トライを始めるそうだ。


『明日の夕方に見に来い』と言った顔は、自信に満ちた職人の顔つきになっていた。

 ただ、別れ際に『なんで家に泊まらないのじゃああマルテェェ』と言った涙目に、マルテさんは少し引いていた。


 目線に気が付くと『だって子ども扱いするんだもん』と呟く。


『愛情に気が付けるまでは、まだまだ子ども』とは言わない。

 素直なこの子なら言葉で言わなくても、分かっていることだろう。

 その苦笑いには、複雑な乙女心が見え隠れしているようにも見えた。


 夕日に染まったホテルへの帰り道は、昨日とは少し違って足取りが重い。

 でもこれは心地いい疲れ。

 今日は皆よく眠れるだろう。


 あれ……そういやサイトンさんが言った『せっかくだから泊まってきても』ってのは……

 ホテルじゃなくて祖父母の所ってことじゃ……ま、まぁこれは詮索しない方がいいな。



 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲



 時刻は8時。定時連絡の時間。

 ふぅと軽く深呼吸。


 うん。よし。

 今日こそは動揺しない。

 報連相はスマートにだ。



「こんばん……へぁっ?」



『え゛ぁっ……ひ、ひ、ひにゃああ!』



「えーと……あっ、て、て、定時連絡の……時間です……」



『な、なんでこの状況で落ち着いていられるにゃ! あっ……びっくりして止まっちゃったにゃ! んっ……やっぱり何でもないにゃああああ!』



「ぐ、うぅ……な、なんのことでしょう、どうしたんデスカ?」



『へっ変態にゃ! バチクソ変態野郎にゃああああ! にゃあの魅力が狂わせてしまったのにゃ! でもまさかここまでとは思わなかったのにゃああ』



「チョ、チョット、何言ってるかワカラナイス」



『あっ……何でもないにゃああああ! 聞かなくていいにゃ! あああっ何も聞くことは無いにゃあ!」



「何も聞こえてないデス」



『んっ やばいにゃっ いいから切るにゃ! い、今は大事な仕事中にゃ! また後にするのにゃああ!』



「えっあっ、そ、そうですねっ――」



 立体映像の消えたスマホを放り出しベッドに倒れこむ。


 ど、ど、どうしてこんなことに……


 ぐるぐると回る混乱と波打つ鼓動。

 一つだけ確かなことは、部屋から消えたのは腰掛けた姿と微かな水音。



 ◇



『返事次第でブチネジ切ることになるにゃ。何も見えてないし、何も聞こえてない。いいにゃ?』



 こちらが見えてないはずなのに、鋭い目から感じる狂気の威圧感。

 そして鋭利な爪がシャキンッと飛び出た。



「アッハイ」



 あっぶねぇえええ今日は1人部屋が空いてて本当によかったあああああ

 ……絶対に立体映像機能はバレちゃだめだ。お互いの名誉の為にも。



『よし……じゃあ『仕事中』に連絡してきた弁明を聞くにゃ』



「あの……いや、その……定時連絡は8時って――」



『こっちはまだ6時にゃ!』



「えぇっ」



『帝都時間は王都時間とズレてるのは常識にゃ! そんな事も知らないのにゃ!』



「あっ」



 ◇



 ――時差を考慮してなかった



 今回の不幸な事故はその一言に尽きる。


 王都の近くに設置されている転送陣から飛んだにゃんこ先生は、もう帝都へと入っていた。

 明日から行う情報収集の目星も立てていたし、お勧めのレストランも確保。依頼は順調。


 この二言のために、この事故は起きてしまった。



「この度は大変申し訳ありませんでした」



『い、依頼料の1割アップを要求するにゃ! しっ仕事の邪魔されたらやってられないにゃ!』



 暴利! 横暴だっ!

 と言いたいところだが、これは完全に俺が悪い。



「分かりました……用意しておきます……」



『うにゃっほんとにゃ?! 言質は取ったにゃ! 話が分かる依頼主は大好きにゃ』



「いや、本当にすみませんでした」



『ま、まぁ知らなかったならしょうがないにゃ……し、仕事中だから気が立ってたにゃ。にゃあも……ちょっと言い過ぎたにゃ。この仕事は信頼関係が第一にゃ。何か欲しいお土産があったら言うにゃ。買ってくにゃ』



「いえ、二度とこのような事が無いように――」



『も、もういいにゃっ! 1割アップ以外何もかもを忘れるにゃ! じゃあ報告は終わりでいいにゃ? もうそろそろレッドテール料理の予約があるにゃ』



「レッドテール! あのデカい魚の?!」



『そ、そうだけど、なん――』



「ずるいっ! 帝都っ! 海! レッドテール!」



『ず、ずるいってなんにゃ?! 急にどうしたにゃ!』



「お土産っ! レッドテールっ! お願いしますっ」



『えぇっ! 無理にゃ! 生モノは臭くなるにゃ! 運びたくないにゃ!』



「信頼関係っ! お土産っ! 言質! レッドテールを所望しますっ!」



『お、横暴にゃあああ』


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