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異世界出張!迷宮技師 ~最弱技術者は魚を釣りたいだけなのに技術無双で成り上がる~  作者: 乃里のり
第1章 出張は楽しめれば勝ちという件について
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29:打ち上げ

 打ち上げが行われた。

『魔獣肉を奢ってやるって言っただろ?』

 と、もはや上司になって欲しいぐらいのガノンさんに奢ってもらって。


 案内された場所はあまり行ったことがない村の南側、比較的新しい建物が並ぶ中の高級そうな居酒屋だ。

 イッカクヌーという魔獣の肉とワインによく似た酒を奢ってもらい、異世界料理に舌鼓を打った。

 必ず今度は自分の金で食いに来ようと思うぐらいには絶品だった。


 そこでは、まぁいろんな話をした。

 中でも『シェフィリアさんが極端に酒に弱くて酒癖が悪い』って事を抜かすと、まず『ドロップ品、特にボス素材ってどうすんの?』って話。


 昼間に戦利品の数も把握しておいたし、くり抜いた魔石を確認したらディーツーに貰った3級の魔石より少し大きく、色は黄色。多分これ一個で10万ゴル以上はするだろう。

 なのに、『俺らが物を貰うのはあんまり良くねぇんだよ』と受け取りを断られた。


 そこまで厳しいわけではないが、ギルド支部長、ましてや村長なんかには賄賂とかそう言う物に成りかねないとのこと。

 それなら迷宮ダンジョン内で分けれたんじゃと思ったが……どうやらこれは最初から受け取るつもりは無かったって事だろう。

 ちくしょうなんてカッコイイ先輩達だ。


 高額な物を貰ってしまうのではと心配をしたが、新種のドロップアイテムは総じて値段が付きにくいそうだ。

 これは素材の有用性が確認できていないからであり、そもそも危険な代物かも知れない。

 ギルドにはそういう性質を調べる専門の研究機関が有り、日々発見や発明が行われているらしい。


 ただ、装備屋や素材屋の目利きも素晴らしく、公共性や採算性を度外視した装備や魔道具アイテムなんかはこちらで作られる。俺はそういうの大好きだ。


『調べるんなら送っておいてやる、欠片でもいいから寄越せ』と言われ、ガノンさんに渡すことにした。

『わたくしにもぉー』と肩を抱かれ、シェフィリアさんには二日酔いにも効くはずのポーションをそっと渡した。



 後は問題のゴロックトラップについてだ。

 これは俺の方から()()()()をした。


 説明する資料も無く、コストなんかも練られていない素案。

『酒の席だったらいいだろ』と半ば当たって砕けろ的な愚案。


 それでも『面白いじゃないか』と言ってもらえた。

 シェフィリアさんには『キャハハ! おーもしろーいねー!』と強めに肩パンされながら。


 当然酒の席の話だ。話半分でいい。

 それよりも気軽に話せる人達が出来たことが何より嬉しかった。



 ◇



 で、その結果が()()


 グランミルパと名付けられたボスを討伐してから4日後。

 目の前の新聞には、



『大人気! 迷宮技師ダンジョニア監修! ゴロックトラップ!』



 えぇ……監修? こんなに大々的に? ……聞いてない。


 まぁいい。全然良くないがまぁいい。とりあえず置いといて。

 この見出しの通り、俺が提案したのは『ゴロックトラップの観光資源化』だ。


 そもそも禁止されていないからといって、勝手に迷宮ダンジョン内を拡張して、結果ボスを迷い込ませ、進化させてしまったのは俺の落ち度だ。危機管理意識が甘かったと言わざるを得ない。


 じゃあ部屋を埋めてしまう? それでは面白くない。

 じゃあ毎日通う? いや同じ問題が起きた時に対処できないし、俺が地球に帰れば再発する。


 ではどうするか?


『きちんと管理できる体制を整えればいい』


 そこで俺はゴロックトラップの大幅改装を考えた。

 シェフィリアさんの素材や魔道具アイテムの知識を借りて構想図を練り直した。


 言うなれば『迷宮ダンジョン改造! ビフォーアフター!』



 ◇



 あの真っ暗で殺風景だった大部屋。


 今では明るいライトとマナを遮断するガラスが置かれ、『魔物の湧き環境』を見下ろせる見学通路で囲みました。これで子供達も上から安全に見学できます。


 また出現を止めたい時はこの通り。ワンタッチで魔物よけのライトが点灯。

 簡単に切り替えられる構造に管理者も大満足です。


 さらに床には匠の遊び心が。

 あの匠も転びそうになっていた床は、なんということでしょう。

 階段のようになっていた段差が、滑らかな坂道へと生まれ変わりました。

 出現したゴロックも楽しそうに転がって穴に吸い込まれていきます。



 そしてガレ場のように半壊していた処理部屋。


 部屋に続く狭かった階段は増設され、多くのお客さんがすれ違える利便性を確保。

 そして処理部屋は一面に魔物避けのライトが掛けられ、ランタンでは薄暗かった部屋は柔らかな光の溢れる空間へ。


 うるさかった破砕音は部屋の真ん中に防音魔道具(アイテム)が設置されることで、臨場感溢れる場所と静かに見守れる場所に二分化。これでもう耳が痛くなることはありません。


 無造作に落としていた落下位置には超高硬度の極厚切断刃が置かれ、効率的にゴロックを処理。

 落ちた魔石自体のマナを利用して、自動エアブローで塵を除去。そのままドロップ品を排出して転送する機能を追加しました。


 そして出てきたメミット石は加工されアクセサリーや小物へと変身、1回1000ゴルで回せるメミット石ガチャへと変貌を遂げました。

 希望者にはメミット石加工体験をご提供。楽しいオリジナルアクセサリー作成に女性のお客様も大満足です。


 こうして陰鬱となってしまっていた空間が、喜びの声溢れる素敵な空間へと生まれ変わったのです。



 ◇



 考えたはいいものの、一般開放初日はかなり不安だった。

 が、聞いたところによると宣伝効果もあり、一日の最大入場者数を軽く更新した。


 ガチャはちょっとやり過ぎたかなと思ったが、可愛いデザインがウケて好評のようだ。

 これでメミット石の産出調整はバレーガ観光組合がうまくやってくれるだろう。

 冒険者から『受付並び過ぎ』との苦情はあったが他には特に問題はなかった。


 まぁ当然全部自分1人でやったわけでなく、実現するにも多くの手助けを貰った。


 警備員などについてはバレーガ観光組合にお願いをすることになったし、ゴロックトラップの情報公開や施工に当たっては、メルさんに権利を所有する町バレーガとの交渉を行ってもらった。


 交渉と言っても、メルさんのハンコとドロップ品の売却や2次産業だけでも、1年もあればペイできる見込みという見積もりを出したら二つ返事でOKだったみたいだが。


 要は村興し、地域興しクエストの一環として出資を仰いだわけだ。

 そしてその地域興しクエストの所謂、設計コンサルと掘削事業を俺がした形になる。


 工事業者の魔法を使った超速施工だけでなく、迅速に動いてくれた皆の協力があったからこそ、たったの2日で完成した。

 これには本当に感謝しなければならない。



 ◇



 俺の手には形の変わった冒険者の証(メダリオン)が鈍く光る。

 これで白犬達にも自力で会いに行ける。


 そしてこの中には、なんと200万ゴルもの大金が入っている。

 良い仕事をしたと認められた感じがして、何度もニヤついて見てしまう。


 この数日は折衝に工事にとかなり忙しかったが、充実した日々を送れている。

 そんな仕事の後の1杯が最高に美味い。


 いつものカウンターでゴクッと冷えた黒エールを飲み、達成感を噛みしめる。


 ふぅ……でも……あれ……なんか忘れているような……



「あっ! 釣りしてねぇや!」


ここまでお読みいただきありがとうございます。

このエピローグで長い長い第一章が終わりました。

暇つぶしの一助になっていれば幸いです。


次章は材料工学と魚釣りがメインの話となります。

そして突然ラブコメが始まりますが意味のあるラブコメですのでお読みいただければと思います。


え? 魚釣りしてないじゃないかっ!

あれ? ダンジョンダンジョンしてないぞっ!

という方は是非評価頂けると励みになります。

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