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異世界出張!迷宮技師 ~最弱技術者は魚を釣りたいだけなのに技術無双で成り上がる~  作者: 乃里のり
第5章 出張先での揉め事は極力避けたい件について
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141:ね? バルはだいじょうぶなの


――ね? バルはだいじょうぶなの




凄まじい火炎によって赤黒く溶けた石床。

その直上に身動ぎもせずそのスライムは存在していた。




「ふ、普通に着地しましたぁ! 石が溶けるほどの高温に普通に立っています! 【耐性】や【頑強】では全く説明がつきません! スライムという魔法生物の枠組みを外れているとすら思えます!」




「どういうことだ! トモヤ殿! 間違いなく100度を超えている! 耐えられるわけがない!」




「まだまだこれからですよ。まぁ見ててください」




――しょうがないの。バル『みずでっぽう』

『ポビッ!』




まるで砲身のように伸ばした腕。

その先は飛行を続けるファイアードレイクに向けられた。




――な、何かしてくるぞジェコ! 回避しろ!




ポッ




ピンの蓋が取れたような音が響いた。




ボォオオン!




直後、爆発音が轟く。

ファイアードレイクの翼が大きく揺れた。




『ブフッグルゥ?!』


――ジェコ!?




「こ、攻撃です! 見えませんでしたが初めて攻撃をしました! 今スロー再生を――いや、ディアン様! これは何をしたのでしょうか?!」




「飛ばしたのだ! 小さな水球を! それが当たった瞬間に爆発したのだ!」




「液体の爆薬?! トモヤさん! バルの中身は可燃性の液体だったということでしょうか?!」




「いやあれはただの【水蒸気爆発】ですよ」




「水蒸気……ッ! あぁくそっ! 高温の表皮を利用したのか!」




「まぁそれだけじゃないですけどね」




「なんとあの攻撃は【水蒸気爆発】とのことです! 私も魔導学院で習いました! 高温に触れた水が一気に蒸発することであのような現象になると! 『ハンブルウィード』に似た高速移動に加え、バルは強力な遠距離攻撃すら持っていたぁ! やはり凄まじいポテンシャルです!」




――もうちょっと『みずでっぽう』!

『ポポビッ!』




ポッ




ボォオオン!




再度大きく傾いた翼から赤黒い飛沫が落ちた。




「翼を狙う連続砲撃ぃ! 翼から出血ぅ! これは苦しいか?! 今大会初めてジェコにダメージが見えます!」




ポポッ




ボォオオオオオン!




『グギッ! グブッ……』

――ジェコ! 降りるんだ!




「たまらず急降下! 地上に難を逃れます!」




――落ち着けジェコ! 『ファイアーウォール』!

『ッ! ブルァア!』




ポッ



ボフゥ




放たれた水玉が火柱に飲まれ小さく膨らみ消滅した。




「相殺ぃ! 流石はチャンピオン! 翼を仕舞いすぐに体勢を整えました!」




「そ、そうだパグロ! 落ち着いていくんだぁあ!」




――……手加減されていたのはこちらだったか。だが、それは弾に限りがあるだろ! 




――うん。そうなの。逃げるからしょうがなかったの




――逃げか……そうだな。改めて撤回する! お前達は強い! 全力でいくぞ! 【ブレイズストーム】!

『ブルアアアア!』




マナの煌めき。

焼き木が爆ぜて飛び出した火の粉のような微かな光。


その瞬間、大気の動きが変わった。

上昇していた煙が吸い寄せられる。


出現したのは強烈な輻射熱を放つ絶域。

ファイアードレイクを中心とした火災旋風が渦を巻いて立ち昇った。




「【ブレイズストーム】炸裂ぅ! 全力のマナの炎はこうも美しい! あっつい! あっちぃ! あっ! ご安心ください! また温度調整が入ります! そして目の保護のため直接見るのは控え、モニターをご覧ください! 空間を熱で支配する大技! これがファイアードレイクの【ブレイズストーム】です! 焼尽! あるいは消滅の代名詞! 逃げ場はありません! さぁこの灼熱地獄にバルは耐えられるのかぁ!」




「いいぞぉパグロォ! 先ほどの水球のように蒸発させてしまえば脅威ではな――」




――バル『ごー』なの!

『ポビッチ!』




「なにぃ!? 立ち向かうだとぉ! 消滅する気か?!」




「前進! 前進です! 猛火の渦に自ら接近したぁ! 一体何を――はぁ?! 全く意に介さず飛び込んだぁ! えぇ?! そして無事です! 形を留めています! トモヤさん! トモヤさん! なぜあの猛火の中で無事なんですかぁ!」




「あれは――」




――ち、近寄らせるなジェコ! 【ジャギーテール】!

『グルァ!』




「っとここで【ブレイズストーム】を解除! 肉弾戦に切り替えます!」




硬い鱗に覆われ凶悪な棘を有する尾。

鞭のように撓らせた燃え盛る炎が絶域への侵入者を捉えた。




『ポビチッ!』




「クリーンヒットォ! 強烈な尻尾の薙ぎ払いが炸裂ぅ! 」




「そうだいいぞぉ! 何なのか分からんスライムが、何をしてくるか分からんのだ! 近寄らせぬが正解――ッ! なにぃ!」




その驚愕の根源をモニターが捉えていた。

振り切った尾の先。

最警戒していたスライムが張り付いている。




「ついに! ついに接触です! 炎の渦が晴れ、目視でも確認できます! さぁリリー選手念願の間合い! 狙うはもちろん窒息でしょう!」




――ッ! 振り払えジェコ! 【ヒートブースト】!

『ブグァ!』




「ここで攻防一体の高熱の鎧【ヒートブースト】! あぁっとー!? け、煙が! ご覧ください! バルから煙が立ち昇っています! しかしバルは高硬度の鋼の鱗に食らいついたまま動きません! これは間違いなく決着の時が近づいていると見ていいでしょう」




「ふぅ。流石のバルも直接高温に触れればああなるのだ。痛手を負う前に降参するべきだろうな!」




「確かに絶対強者に対しよく健闘したと言えるでしょう! 愚直に進む姿は我々に勇気を与え、互いに死力を尽くした試合は我々に希望を見せてくれました! 魔獣使い(テイマー)の未来は安泰であると! その未来を守る為にもこれ以上傷つくことはありません! 審判の――……え?」




『グギィイッ!』

――ジェコ! どうした!




突如としてファイアードレイクが身もだえた。

体をくねり、尾を振り、まるで害虫を振り払うように。


次の瞬間。

ボロボロと変色した鱗が剥がれ落ちて硬質な音を立てた。


透明なスライムの直下、赤い血肉が浮かび上がる。




「溶けた? 溶かしただとぉ?! 酸生成スキルを持っていたのか! いやしかしファイアードレイクの鱗の酸耐性は最上位だぞ! ありえん!」




「ス、スライムの酸で竜族の耐性を貫いたぁ?! 前代未聞です! 全ギルドの記録を漁ったとしてもそんな記述は無いことでしょう! ただ分かったことは煙はバルの蒸発ではなく、ジェコの鱗を溶かしていたものだったようです!」




「トモヤ殿! あのスライムは何なのだ! 超巨大にも成れ、強固な防御を持ち、高温にも耐え、最上位の耐性を貫通する酸生成スキル持ちなぞ1級冒険者レベルでしか対処できん! 全ての魔法生物から頭一つ抜けた脅威と言っていい! もし野性下で出現した場合は街が滅ぶ! 一体どんな魔法を使って改造したというのだ! もし禁術などであれば儂は即座に捕えなければならん!」




「改造? いえあれは元々バルが持っていた能力です。あの現象は――」




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