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異世界出張!迷宮技師 ~最弱技術者は魚を釣りたいだけなのに技術無双で成り上がる~  作者: 乃里のり
第5章 出張先での揉め事は極力避けたい件について
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128:おはようリリー

「おはようリリー」




「おはようございますなのっ 今日もしゅぎょーがんばるの!」




 陽も真上、炎天下の花畑。

 意気揚々と向かうとすっかりやる気になったリリーとバルが待っていた。

 その日差しにも負けない熱さを心に秘めて。




「ん? これは?」




 そんな中、リリーが何かを手渡した。




「あそこに置いてあったの。多分メルししょーにだと思うの」




「むぅん……?」




 メルさん宛ての手紙? 誰から?

 差出人も書いてない。

 ただ一言『エルフへ』と書いてある。


 開くと、メルさんの目が一瞬ぎらついたように見えた。




「ほぉう……これは面白い。見てみると良い」




 俺たちにも見せるように傾けた。

 そこには――



『リリー・オルテンシアに関わるな』

『さもなくば容赦しない』



 紛れもない脅しだ。



「これは面白いですねぇ」

「えぇ。愉快極まりないとはこのことです」



 ボゥ!



 その時、手紙が発火した。

 メルさんは驚くことなく放り投げると空中で燃え尽きた。


 証拠隠滅まで仕組んだ脅迫。

 相手の本気度が伺える。


 だが、それは逆効果だ。

 決意を新たにバル強化計画を進めるだけだ。



「「ふふふ」」



『やってやろうじゃねぇか』というぎらついた笑顔で笑い合う。




「えっ? 何がかいてあった、なの?」




「ふふっラブレターだ。リリーにはまだ早いのだ」




「ら、らぶれたー……メルししょー すごいのっ モテモテなのっ」




「リリーもすぐモテモテになってしまうぞ。そうなる前に修行しなければな。今日からは特別な修行だ。バルも頑張れるかな?」




 バルは『ムキッ』と腕を作った。




「じゃあ、せーの がんばるなの! おー!」




 ◇



 ここは3級迷宮フオーリ・レ・ムーラの地下2階。

 かび臭いようなしっとりとした空気に満ちた古代の地下墓地カタコンベ


 規則正しく並んでいただろう朽ちた棺や纏めて埋葬された髑髏が左右に連なっていて、恐ろしいというより静かで厳かな印象を受ける。

 白犬が少し大人しいのはこの独特な匂いのせいかもしれない。




「ふははは! まさかこれほどとはっ! 我は魔物が哀れだと思ったことはないのだが、これは流石にと思うぞ! ははっシェフィ我がおかしいのだろうか?」




「いいえメル様。これこそが異常事態と呼ばれる光景です」




 地下2階から既に5級制限がかかっているこの階層は、当然等級以上の冒険者がいなければ入れもしない脅威度を誇る高難易度のエリア。


 その条件を満たす2人にも異常事態だと言われた目の前の光景。



 ――鎮座する淡く光る超巨大なスライム



 元々祭り期間ということでほとんど人気は無い。


 いたのは『迷宮整合をやってるよ』と聖教会が言いたいためだけにかり出されたやる気のない治癒士ヒーラー達とその出入りを管理しているこれまたやる気のないギルド員ぐらい。


 だから誰もいない大部屋の中のスライムはより一層場違いで異質な光景となっていた。


 その時、遠い部屋の端に黒い靄が集まる。

『ポイズングール』と『スケルトンドッグ』がわらわらと沸き出てきた。

 こいつらは通常もっと下の階に出現していた魔物らしく、凶悪な見た目をしている。




「あっちなの!」




 リリーの一声。

 するとバルが『ビター』っと平べったくなった。



 まるでダムが決壊したように広がった水流バル



『ガシャ シュー』

『ビチュ シュー』



 触れたアンデッド達は足から砕け、体勢を崩し飲み込まれ『シュー』と塵となって消えていく。

 魔石やドロップした骨などもバルが吸収しているため、その後には塵すら残らない。

 そして『ボヨン』と元の形に戻った。


 まさに『スライム型クリーナー』のように『ボヨン』、『ビター』を繰り返すだけで広範囲殲滅が完了する。

 最初は心配そうにしていたリリーもバルに『よくやったね』とポヨポヨとしている。


 見守る凄腕冒険者2人が初見ではあんぐりと眺めていたぐらいだ。

 このバルの殲滅速度は相当早いと言えるだろう。


 しかし、こんなもんじゃない。

 脅してきた奴に目に物見せてやろうじゃねぇか!




「あ、バルあっち、なの!」




『ガシャ シュー』




「上手いよリリー! バルもその調子でどんどん狩ろう!」




「ふふっこれを狩りと言って良いものか? 我にはパワーレベリングとすら思えんな」




「蹂躙、あるいは殲滅と言って差し支えないでしょうね」




「本当に底が知れんな。まさか……()()をこのように使うとは」




 ◇




 そう。

 バルの中の淡く発光している液体の正体は温泉。

 ただし、光属性のマナを豊富に含んだ温泉の水、近い成分は『聖水』だ。


 的当てに【光球】を選んだのにはまず真っ先にこれを得るためという理由があった。


 前提としてアンデッドや呪いなどの闇属性には光属性である『聖水』が効く。

 これはバレ坑に『カースファンガス』が出た事で調べた内容だ。


 そして森で水浴びしている中、ローザさんに『魔素蓄積症』の詳細を聞いた時、世間話で『聖水』の作り方を聞いた。

 ローザさん曰く『浄化水に向かってよいしょってする』だけらしい。


 要は『聖水』は聖教会所属の治癒士が作った光属性のマナを豊富に含んだ水。

 それを『聖水』として高値で売っているだけなのだ。


 製造権を持たない人が作って販売した場合には厳しい罰則があるし、時間が経てば腐敗するため消費期限付き。

 だから高いのだと。


 この時『聖教会ぼろ儲けでは?』と呆れたことは無駄にはならなかった。


 もし1個100mℓぐらいで2000ゴルもする聖水に換算すれば、今のバルは2㎥を3回飲み込んでいるから、6000ℓで1億2000万ゴル相当になる。


 しかし、この聖水モドキの作り方は元手ゼロ。

 まず牙亭の無料キャンペーンで集まってもらった客に源泉に向かって【光球】を打ってもらい、温泉に光属性マナを含ませる。


 蒸し暑い排水設備の部屋に陣取り、【倉庫】を開けたままにして貯め続けること半日。


 大量に集まった温泉排水を【解体】して余剰水分や不純物を取り除く。

 言わば【倉庫】の中で『蒸留』のような工程を行えば、大量の聖水モドキの出来上がり。


 これが第2の工程。

『液体であれば取り込める』という強力な能力を利用して、聖なる巨大スライムを地下墓地カタコンベにぶち込んだのだ。



 ===============



 >ローザさんの救出

 ―  ビザウ嫌なやつ

 ―  フオーリ・レ・ムーラの迷宮整合

 →バルの美味い狩場


 >バルの修行

 *〇 最終日は従魔戦

 ―  酸× 殴× 巨大化〇→◎

 !  液体を取り込む能力活用


 >シリル(シュリ姫)の教育

 ―  めんどくさい

 !  『狼牙』接客


 >レストラン『狼牙』の集客

 ―  割引セール以外

 !  フリー戦略 テイクアウト



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