素敵な笑顔
昨日、私は人生の第一歩とも呼べる大きな成長をした。
自分で成長というのは、おかしいが、それでも自分で外に出ることが出来たのだ。たとえ、悪口を言われようと、笑われようと、私は一人で外に出たのだ。
私はその事実を大切にしたい。
今日は第二歩と称して、コンビニまでアイスを買いに行こうと思う。距離にしたら、300メートルもないが、私としては人と関わるという重要な項目が入っているのでかなり高難易度だ。
勇気を出してお母さんにおねだりしようと、リビングまで降りてきた。
「お、お母さん。コンビニにアイス買いに行きたいんだけど」
昨日と同じくらい驚いた顔をしたいた。そうすると、お母さんは急いで財布を持って私の元へやってきて、1000円札を渡してくれた。
アイスを買うのに1000円もいらないのに、好きなもの何でも買ってこいという意味だろうか。
学校も行かず、ただ家にいるだけの私にアイス代として1000円もくれるのだ。
お母さんに対する申し訳なさとアイスを買える期待を持って家を出た。
今日のドアノブは昨日より少し温かく感じた。
家を出ても昨日みたいに近所のおばさんも見つからず、知人にも会わず、あっという間にコンビニに着いてしまったのだ。
着いて、並んでいるアイスを見ている私を冷静に分析すると、ただの女子高生がアイスを選んでいる、という至って普通の状態だ。
お目当ての、6つ入りアイスを見つけると私はレジへと向かった。
「いらっしゃいませ」
と迎えてくれたのは笑顔の輝く有名なアーティストに似ている同い年くらいの男の子だった。
商品を差し出すと、彼はレジをこなしていた。
せっかくだからと母親の好物であるプリンとジュースも一緒に買ったのだ。
母親がくれた1000円札を差し出して、商品をもらって
そのまま帰ろうとした時、彼は追いかけてきたのだ。
どうやら私は商品をもらうことに必死でおつりを忘れていたようだった。しばらく買い物をしないと、おつりすら忘れてしまうのかと自分を責めたくなった私に彼はこう告げたのか。
「忘れてますよ、大切なおつり。うっかり者さんなんですね、心配なのでまたいらしてくださいね、僕がレジ通しますから」
いや、さすがの私でも、「こいつ、やばい」と素直に感じた。
語彙力を失うほどの、笑顔と詐欺師かのような言葉。でも、彼の笑顔はまた来たいと思わせるほどのオーラが放たれていた。
何よりも来る時の10倍、いや、100倍もの元気が与えられたような気分だった。
なんだか元気になった私は家に帰り、笑顔で買ってきた物を渡すとお母さんは
「楽しそうね」
と泣きながらプリンを食べていたのだった。
けれど、彼はどこか見たことのあるような顔だったが芸能人に似ているためそのせいだとその時は思っていた。