少女らの葛藤
帰り道
✂------------------きりとり--------------------✂
課後にあんな事があったなんて思わせないぐらいの綺麗な夕日を背に、ありすと海美子は学校を後にするのであった。
「ねぇ、ありすちゃん。」
「ん?なに、みなちゃん?」
「あのね、実は…。」
と、親友は不安そうにこちらを伺う。
「みなちゃん大丈夫だよ、ちゃんと話聞くから、ゆっくり話してみて?」
ありすちゃんは、私に優しく微笑んだ。
「うん、ありがとう。実はさリュウグウノツカイさん、の事なんだけど。」
なんだろう?
「うんうん。それで?」
「あのね、リュウグウノツカイさん、昨日の夜にも私のとこに現れたの。(伝説の子が目覚めた。そなたは、空神ありすを守る守護になれ。)って言われたの。そう言うと、リュウグウノツカイさんは目の前から消えちゃって、HRに姿を現したって感じなんだ。」
海美子がそう口にした。
わたしは、ますますわからなくなっていった。
(天女)(目覚めた)(伝説の子)(屍人)
これらは、八咫烏から言われた。
だが、わたしはこれを聞いてもなんともなかった。
一体何が起きているの…?。
「ちゃん…」
「ありすちゃん!」
「大丈夫?」
はっ、みなちゃんの存在を忘れてた。
たちまち今は深く考えず、家に帰ることに集中しよう、…。
「ごめんごめん、考え事してた。」
足が竦む。ありすはその場に座り込んだ。
「わたしさ、八咫烏ってのに、いろんなこと言われてさ、頭が追いついてないって言うかなんて言うか…。こんがらがってるの。」
やばい、みなちゃんに打ち明けたら、涙出てきそう。
「うっ…ぐすっ…。それでさ…、わたし怖かったんだ…。いきなり、言葉が話せる変な生き物にあってさ屍人退治してくれだとか、目覚めたとか言われてもさ。わたし一般人だし!戦ったりなんかできっこない!…。そんな怖いこと、私が出来るわけないよ…。」
泣きながら、海美子に訴えた。
「ありすちゃん、そうだよね、いきなり言われても困るよね。不安だよね…。私も現状を把握出来てないけど。私はありすちゃんを守れって言われたんだ。だから、なにがおきても、私はありすちゃんを命懸けで守ると誓うよ。」
海美子はありすに近づき、座り込んだ彼女の前に佇んだ。
ありすの頭を撫でるようにそっと触れた。
「ありすちゃん、大丈夫、大丈夫、。」
海美子の手が心地よく、ついその場で泣き崩れた。
わたしはひとりじゃない。
今深く考えるのはやめよう。
大丈夫、あの事は(話した内容を無しで!)と八咫烏に言われたはずだ。
この話はなかったのだ。
わたしはそう、自分に言い聞かせた。
つづく
登場人物
空神ありす
・傷が一日も経たずに綺麗に治るという体質を持っている。
・高校一年生。
水田海美子
・生まれつき脚が悪く車椅子。
・高校一年生。ありすの親友。
・使い魔リュウグウノツカイの使役者。
八咫烏
・ありすの前に現れた不思議な生き物。
・リュウグウノツカイと同業者らしい。
・存在は不明
リュウグウノツカイ
・海美子の使い魔。
・普段は海美子の身体の中で暮らしている。
・存在は不明。