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暁のアリス  作者: R.R.R
2/4

海の女神

1時限目は数学1だった。


私は自分の席に着いて、科目の準備を始めた。

「えっと、教科書どこだ?」

机の中、鞄の中、隅隅まで探したが、数学の教科書らしきものは出てこなかった。


「うそ!?まさか家に忘れたとか!?

もー、しっかり確認すれば良かった…。」

「はあ…。どうしよう。」


わたしは困った。だが、いまは教科書を誰かに貸してもらえるか、頼んでみる事にした。

「うーん、隣のクラスの海美子ちゃん今日数学1あったかなぁ…。」

行ってみるしかない。そう思った私は、親友の海美子(みなこ)ちゃんに教科書を借りに行くのであった。


✂------------------きりとり--------------------✂


隣のクラス

ありすは隣のクラスの親友である、水田海美子(みずた みなこ)に声をかけた。

「みなちゃーん!」

ん?この声はありすちゃんかな?

「ありすちゃん。どうしたの?」

ありすちゃんが急いで私の目の前に現れた。

「ふぅー、みなちゃん!数学1の教科書貸してくださいませんか!!」

うわぁ…。また教科書忘れたのかこの子…。

「えー、また?ありすちゃん最近忘れすぎじゃない?数学何限目?」

「1限目です!これからです!」

これからか…。私は四時限目からだから貸しても大丈夫だな。

「わかった。いいよ。」

と私、はありすちゃんに承諾した。

すると、「やったあ!ありがとうみなちゃん!1限目終わったら直ぐに返すから!」

と嬉しそうな顔の彼女がいた。


私、水田海美子は彼女の笑った顔が大好きだ。

小さい時からの親友でもある彼女は、私にとって数少ない友達と言えるものだ。

私は生まれつき脚が悪く1人では歩いたりもできないぐらいだ。常に車椅子の生活を強いられている。

そんな身なりの、私の周りには友達になってくれる子はいなかった。

だが、ありすちゃんは遊ぶ時も一緒にいてくれた子だ、私は嬉しかった。

だから彼女のお願いなんか容易いものだ。

「みなちゃん、今日も帰り待ってるから、終わったらクラス来てね!」

ありすちゃんは今でも帰り道を一緒に帰ってくれる。

「うん、わかった。終わったら行くね。」

と、私は彼女に返事をした。


✂------------------きりとり--------------------✂


放課後

「んーんー。今日の学校しゅーりょー!」

わたしは、伸びをしながら、親友みなちゃんを教室で待っていた。

「今日、みなちゃん遅いなぁ…。そろそろ来てもおかしくないのにな。」

ありすは、ちらりと、廊下をのぞき込む。

隣のクラスの様子を伺った。

「ん?とっくにHR終わってるじゃん!」

不思議に思い、隣のクラスの親友を探した。

だが、クラスには彼女の姿は無かった。

「んんー?みなちゃんどこ行っちゃったんだろ…。」

彼女の事をクラスメイトに聞いてみた。

「ねぇ、水田さん知らない?」

するとその問いにクラスメイトは答えた。

「んー、なんかね。HR終わった途端にさ教室出てっちゃったんだよね、いつもの様に、空神さんのクラスかと思ったけど、真逆の体育館の方に向かっていったよ。どこ行くの?とは声掛けたが反応が無かったようだったね。」

それを聞いたありすは一目散に体育館へと向かった。

「みなちゃんどうしちゃったの…。」

急いで向かうありす。


✂------------------きりとり--------------------✂


体育館

何とか体育館前まで来たありすだったが、そこに親友の姿は無かった。

「はぁ、はぁ、みなちゃんどこ!?」

車椅子の彼女ならそこまで遠くは行けないはずだが…。

一体どこへ行ったのだろう。

体育館の裏へ向かう。


すると、

「彼女の行方が知りたいか?」と何処からか声が聞こえた。

「えっ?」

ありすは周りを見渡す。

だが、声の持ち主の姿は見られなかった。

「誰!?みなちゃんになにかしたら許さない!」

ムキになってその声が聞こえた方へ言葉を発した。

するとそこには1匹の鴉が空を飛んでいた。

「ふむ、そう怒らんでもよかろう。天女よ。」

と鴉がわたしに向かって話しかけてきた。


え。は?

「え、鴉喋った?」

驚きを隠せないまま、鴉に問いかけた。

「そうだが?」

そう聞いたありすは、

「ぎゃあああああ!!!化け物!!無理無理無理!」

とその場を逃げようとした。

だが、鴉に捕まってしまった。

「辞めてよ!触らないで!食べても美味しくないわよ!」

ありすは必死に説得した。

「いやいや、食べたりせぬ。天女よ、話を聞いてくだされ。」

と鴉に宥められた。

腕も話してくれ、落ち着きが戻るまで鴉は何もしてこなかった。

「ふぅ…。死ぬかと思った。」

落ち着きが戻ったありすは、少し距離を起きながら、鴉に問いかけた。

「鴉さん?話って何?」

すると

「ありがとうございます。まずは我の自己紹介をさせてくださいまし。我は八咫烏(ヤタガラス)使役者に使えるものでございます。

見ての通り、脚は3本あり、言葉が話せる所存でございます。何故貴方様の前に姿を表したかと言いますと、ある事を引き受けて下さりたく頂戴仕りました。」

「そっか、やっぱりあなた、普通の鴉じゃないんだね。で、何をお願いしに来たの?」


「それはですね、この現代で地獄の猛者ならぬ屍人達が現世の人間を襲うという事案が発生しておるのです。それを貴方様もとい、ご友人方に退治して頂きたくお願いしに来ました。」

ふむふむ、なるほどね。

「八咫烏さんさ、なんで私達?にお願いするの?

八咫烏さんでどうにか出来ないの?」

だってそんな特別な人間じゃないし。一般人だし。


「まさか、ありす殿まだ目覚めておりませぬか?…」

んんん?何言ってんだこの八咫烏、目覚めてなに?

「ごめん、話の内容が理解できないや。目覚めるって何に?」

と、ありすは八咫烏に聞いた。

「あっ、すみません、今話した内容は無しで!ご友人の海美子様はそちらにいらっしゃいます。では!」

と言い、八咫烏は目の前から消えた。


「えっ?やっぱり化け物やんけ!怖すぎ!」

と今の事を脳裏から抹消しようとした。

はっ、その前にみなちゃん!

「あの変なカラスめ!みなちゃん無事!?」

体育館裏をのぞき込む。

そこに、親友の姿と、1匹の青く美しいリュウグウノツカイがふよふよと彼女の周りを浮遊していた。

「え、みな…ちゃん…?」

それはなんだ…?魚?魚だよね…?

心配そうに問いかけたありすに対して海美子は

「ありすちゃん!ごめんね!教室行けなくて…。」

海美子は普通に返事をしてきた。

「はああああ、よかったあああ…。怪我とかない?」

心配して駆け寄る。

海美子は無事のようだ。

「みなちゃん何があったの?」

すると海美子は

経緯を話してくれた。

HRが終わった瞬間海美子の目の前にリュウグウノツカイが現れ、「汝、見つけたなり。」とリュウグウノツカイが喋り

体育館裏まで連れていかれたそうだ。

気付いたら、ありすが心配して駆け寄っていたそうだ。

そこまでの記憶はなしか…。

リュウグウノツカイにわけを聞いてみる。

「リュウグウノツカイさん、みなちゃんに何をしたの?」

ありすは聞いた。

そうすると、

「いえ、特別なことはしておりません。海美子様は選ばれしお人なので私が今日から、海美子様の使い魔になった所存です。」

?????ダメだ、さっきの八咫烏といい、このリュウグウノツカイも変なこと言ってる。

「あのー、リュウグウノツカイさん、…八咫烏さんってご存知?」とありすは問いかけた。

「はい、同僚でございます。先程、ありす様の傍にいたのがあやつです。」


あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"、あいつと同じかあああ、ということは、みなちゃんも選ばれた人間ってこと?

益々訳が分からんぞ!

「ありすちゃん?大丈夫?」

海美子の問いに、

「うーん、リュウグウノツカイさん、みなちゃんになにかしたら許さないからね。」とだけ言っておいた。

「承知致しました。主人を守るのが使い魔の役目にございます。」

するとリュウグウノツカイはみなちゃんの身体の中に消えていった。

「ええええええええええええ!!みなちゃん大丈夫!?体痛くない!?!?」

親友の身体を気遣った。

「それが、痛くないんだよね…。それよりむしろ、身体の調子が良いかんじ。」

おっふ…。みなちゃんまでおかしくなってきた。

わたしは気を取り直して、

「よし、みなちゃん無事だから帰ろうか。えっと、リュウグウノツカイさん、も守ってくれるそうだし。」

信用はしてないが、彼女に危害を加える可能性は無さそうなので、そのまま帰ることにした。


「そうだね。ごめんね、ありすちゃん、心配かけて。」

「いや、大丈夫だよ、みなちゃんが無事ならそれでいいさ。」

といつもの2人の会話をしながら学校を後にするのであった。



つづく

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