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リシュテーム帝国の不穏な動き、


 次の日、俺は陽が昇ると同時に目が覚めた。

 アテナは、まだ眠っているか。


「さて……」


 まだ朝早いしアテナはしばらく起きないだろう。手持無沙汰になってしまった。


「アレを確かめておくか」


 一度集めた魂と会話が出来るか確かめておこうと思った。

 アテナがアルカナ国のみんなと話したいと言ってたからな。

 アテナを起こさないように部屋を出た。

 あんまり遠くへ行くことは出来ないから、宿の屋根上に登ることにした。

 ここならあまり人目に付かないだろう。



 まずは、エクストラスキルの確認だ。

 


エクストラスキル

スピリットオペレーション



 これが俺のエクストラスキルだ。

 このスピリットオペレーションを使って、まずはアルカナ国の人間の魂と敵国の人間の魂を分ける。

 そんなイメージをすると、分けることができた。

 魂は俺の中にあるが、ちゃんと分けれた事が感覚で分かる。

 このスキルは思った通りに魂を操作する事が可能のようだ。


 よしよし。次は……。


 今は実験だから、敵国の人間の魂を使う。

 俺は儀式の間で殺した隊長と思われる魂を呼び出し、自分の前に出現させた。

 目の前に青白い人魂が現れる。


 おぉ……。面白い。


 早速会話を試そう。


「よう」

『……なんだ』


 おっ!答えた。

 会話は出来るようだな、こいつにいろいろ聞いておくか。


「おまえの国の名前は?」

『……リシュテーム帝国』


 帝国ね、ざっくり言うとでかい国ってところか。


「なぜアルカナと戦争したんだ?」

『あの小国を我が国の物とするためだ。王は世界の全てを望んでおられる、彼の国はその第一歩なのだ』


 なんかヤバげな発言だな。


「世界征服でもするつもりなのか?」

『フッ、どうだろな? だがこの港町ももうじき火の手が回るだろう』


 は? マジか。段々南に侵略してきてるのか?


 もう少し話を聞きたいがここまでだ。アテナが起きたようだからな。

 俺は隊長の魂をひっこめた。

 眼下ではアテナが宿を飛び出してきたのが見えた。

 俺は屋根から降りてアテナに声を掛ける。


「おう、おはよう。そんなに慌ててどうした?」

「っ!! シンさん!! どこかへ行ってしまったのかと思いました……。」


 目覚めたら俺がいなかったから慌てて出てきたのか。


「あぁ、わるかったな。 ちょっとお前に話しておきたいことがあるんだが……」

「? 何ですか?」

「とりあえず、中で朝飯食べながらでも話そう」


 そう言って、二人で宿の中に戻って行った。




___




「そんな……。 本当なのですか?」

「あぁ、リシュテーム兵が言う分にはな」

「それは、早くこの国にも知らせなければなりませんね……」


 俺たちは宿の食堂で朝食をとりながら、さっき魂から聞いた事をアテナにも聞かせていた。


「ここの領主の所へ行って、このことを伝えましょう」



 その後、俺たちは宿を後にし、領主の館に向かった。

 しかし領主は居ないらしく、門前払いを食らった。



「はぁ……。 困りました……。 まぁ居なかったのなら仕方ありません、次はここの冒険者ギルドのマスターに掛け合ってみましょう」


 そうして俺たちは冒険者ギルドに向かった。



「こんにちは。 あの、ギルドマスターはおられますか?」

「きゃっ!? あなたは? あぁ、昨日登録したアルさんですね?」


 昨日と同じく、気配操作で急に現れた俺たちに昨日と同じ受付のお姉さんがびっくりした。

 しかし、その後は動じず対応するのはやはりプロだな。


「ギルドマスターにご用件が? 今なら暇だと思うので大丈夫ですよ、こちらです」

「ありがとうございます」


 そう言って、思ってたよりすんなり通してくれた。

 受付のお姉さんが扉の前で止まり、ノックする。


「どうぞ」

「失礼します」


 中にいる人物の了承を得て、お姉さんに続いて部屋の中に入った。


「ギルドマスター、こちら昨日冒険者登録をされたアルさんです。では私は失礼します」


 そして受付のお姉さんはすぐに部屋を出て行った。


「俺はここのギルマスのエレバノフ・ザクノースだ。 俺に一体何の用だ?」


 この町のギルドマスターの男、エレバノフは、とにかくガタイが良くて厳つい顔をしている。ヤクザの組長のようだ。

 何の用かと聞かれて、アテナは認識疎外のフードを上げた。


「私は、アテナ・フィン・ファル・アルカナ。 アルカナ国の王女です」

「なっ!? アテナ王女!? 行方不明と聞いては居ましたが、まさか生きておられるとは……。 ご無事で何よりでございます」


 既にアルカナ王国が滅んだ事は耳に入っていたのだろう。アテナも死んだものと思われていたようだ。


「ありがとうございます。 アルカナ王国は滅びました……。 私は、みんなが死んでいく中、この方に助けられたのです」

「この方?」


 アテナに紹介されたので、俺は気配操作を解いた。


「阿佐ヶ谷 真ノ佑だ」

「っ!? いつからそこに……?」

「最初からいた」


 エレバノフは、自分が俺に気づかなかった事にショックを受けているようだった。


「そうか……。 それで、アテナ王女は何の用でございますか?」

「はい、我が国を滅ぼしたリシュテーム帝国がこの地へ迫ってくると言うことを伝えに来ました。 あの国はアルカナだけでなく、他の国々も侵略しようとしているようです」

「そうですか……」


 エレバノフはそう言ってため息をつくが、あまり驚いた様子はない。


「驚かないんだな」

「あぁ、俺たちもあの国の動向を監視はしていた。 最悪、その可能性もあるだろうとは思っていたんだ」


 リシュテーム帝国はずっと怪しい動きをしていたらしい。

 今回のアルカナ侵略でその予想は立っていたのだろう。


「ギルマスの俺にこの話をするって事は、領主はまだ不在でしたか?」

「ええ」


 アテナが領主の不在を肯定する。


「こんなときに一体なにをしてるんだあの領主様は……」


 ずっと帰ってきてないという領主にエレバノフはまたため息をついた。


「このことは他の町のギルドに通達しておきます。 アテナ王女の事は……信憑性が上がるので極秘で伝えたいのですが……」

「私のことは秘密にしてください」

「……わかりました、あなたの事は誰にも言いません」


 実際アテナもそこまで肩入れするつもりはないのだろう。

 王女が生きていると知られて狙われるリスクは少しでも少ない方がいいしな。


「でも、しばらくここでクエストを受けるつもりなので、その時はG級冒険者アルとして扱ってくださいね?」


 そう、海を渡るとしても今の俺たちには金がないのだ。今は宿にあと一、二回泊まれる程しかもっていない。

 しばらくは資金調達をしなければならないだろう。


「はぁ……。わかりました……」


 エレバノフは深くため息をついた。

 その胸中は、えらく複雑なのだろう。


「では、失礼します」


 アテナがそう言って、俺たちはギルドマスターの部屋を後にした。




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