二話 悪魔か死神か女神か
真っ白に染まった視界が戻った、つまり真っ暗だ。
目隠しされてるからな。
しかし今のはなんだったんだ?
「一体何が起きているんだ...?」
「せ、成功した...?」
成功?なにが?しかしさっきまでと周りの気配が全く違う。 正面からは今の女の声、そしてその左右に1つずつ。 全部で3人か、殺気はない。 どう言う事だ? 俺はさっきまで200の殺気に囲まれていたんだが...
「姫さま!ついに...!」
「あぁ、これで我らは救われる...!」
左右は男か、しかし何言ってんだ? 全然ついてけない。
救われる? え、懺悔中?
てか正面にいるのはどこかの何かしらの姫さまなのか?
なに?ドラマかなんかの撮影中?
でも気配が3つしかないのはおかしいか。
カメラマンやら監督やらスタッフが沢山いるはずだもんな。
てことは演劇の芝居の稽古かな? それなら3人でやってても変じゃない。
「成功、したのですね...」
「ええ!」
「はい!本当に、これで...ううっ...」
一人泣き出したな、迫真の演技だ。
プロの演者だな。
感動のシーンみたいだけど、これ、俺声かけていいのかな?
稽古中なら別に構わないよな。
「おい、ちょっと」
「話しかけてきたぞ!我らの英雄が語ろうとしてる!」
「はっ!はい!何なりとお申し付け下さい!」
いや、演技続け過ぎやろ。
おっとついエセ関西弁が出てしまった。
こうゆう時はつい出てしまうな。
いやそうじゃなくて。
「とりあえずさ、この拘束解いてくれない?」
「...?あぁ!そう言うお姿なのかと思っておりました! 拘束されていたのですね? ただいま...」
いや、こんな姿がデフォルトの奴なんて居ないだろ。
俺、どう見ても拘束されてるよね?
手と足縛られて目隠しされてんだぞ?
どんな世界観の演目だよ。
そして右の男がこっちに近づこうとした時、左の男が制止の声をかけた。
「ちょっと待て! 拘束を外したらどうなるんだ? 実は召喚に失敗してて、解いた瞬間暴れ出すのではないか?」
「っ!! た、たしかに…… なにか、封印でも施されているのやも……」
いやいや、おかしくない? 俺なんなの? 悪魔役なの?
左右の男たち心配し過ぎだろ。
まぁ慎重なのは悪いことではないけど。
「解いてくれないと何もできないんだが……」
「……わかりました。」
おっ! 何かしらのお姫様役がわかってくれたらしい。
「その前に、聞かせてください」
「ん、なに?」
「あなたは悪魔ですか?」
いや、悪魔なわけないだろ。
あ、俺本当に悪魔役なの?
ここまで演技を続けるなら俺も少し乗ってやろう。
「悪魔ではないが、死神と呼ばれる事はある」
「「「っ!!」」」
おお、すごい、本当にプロの演者だな。
プロ中のプロだ。
心からビックリしてるのが伝わる。
左右の男は恐怖しながらも殺気まで放ってる。
こんな名演技プロでもなかなかできないぞ。
「し、死神...ですか...?」
これも迫真の演技だ。
真相に迫る恐怖と絶望、そして真実を知りたいというそんな気配。
姫さま役もなかなかやるな。
うん、流石にもうめんどくさい。
「いや、死神じゃないです。 そう言われる事もあるってだけで人間ですよ。 早くこれ解いて下さいお願いします」
「本当ですか?」
「本当です」
「わ、わかりました。 では、わたしがその拘束を外しましょう」
はぁ、この人達疲れる。
「姫さま! 危険です! ここは我々が!」
「そうです! 姫さまに何かあっては終わりなのです!」
いつまで続けんの? 誰でもいいから早くしてくれ。
「いえ、召喚したのはわたし。 わたしが死神様の拘束を解くべきでしょう。 でないともっと大変な事になるかもしれません……」
「し、しかし……」
「大丈夫です。 でも何かあったら、ごめんなさい……」
……なにこの茶番?
「大丈夫だから早くしてくんないかなぁ?」
「わ、わかりました」
そして姫様が俺の目隠しをゆっくり外していく。
ゆっくり、ゆっくり。
まるでイライラ棒の様に慎重に。
そして長い時間をかけて俺の目隠しを外した。
「ひっ!悪魔っ!?」
姫様が驚いている。 無理もない。
俺の顔は誘拐犯達によってタコ殴りにされボコボコになっているのだから。
悪魔に見えちゃうぐらいボコボコなのは自分でもわかる。
しかし悪魔はない...。
その姫様の悲鳴で左右の男が姫様を庇う様に前に出た。
冷や汗ダラダラだな。迫真の演技だ。
しかし俺もバカではない。
流石にもうこの人達の態度が演技じゃないとわかる。
軽くパニクってるから落ち着かせてあげよう。
「大丈夫だ。 バカな連中にボコボコにされただけだから。 元はこんな顔じゃない。 自分で言うのもアレだが、治ればなかなかイケメンの好青年顔だ」
「そ、そうなんですか?」
「ああ」
……少しは落ち着いたみたいだな。
左右の男からも安堵のため息が漏れてる。
「で、では治療しなくてはなりませんね。 少し動かないで下さい。」
ん? うん、まぁ手足縛られてるから動けないんだけどね。
そして姫さまが何やら呪文の様なものを唱え出した。
「___ヒール」
姫様がそう言うと俺の顔が温かな光に包まれた。
そして悪魔の様にボコボコな顔から痛みが引いていく。
これは……魔法!?
「な、何をしたんだ?」
「怪我の治療をしました。 これで大丈夫です。 ……まぁ! 本当に、その、ご、ご立派なお顔をしているのですね?」
姫様が驚いて、少し顔を赤くしている。
もしかして一目惚れされたか?
なんて冗談はさておき、取り敢えず一安心。
自分でイケメンと言っておきながら怪訝な反応されたら逆に立ち直れなかったかもしれないからな。
でもご立派って言いかたはちょっと引っかかる。
俺も悪魔の様にボコボコな顔が治ったので3人の顔がはっきり見えるようになった。
左右の男はどちらもおっさんだ。
高そうな貴族っぽい服を着てる以外は特に特徴はない。
てか、よっぽどのことがない限り男の顔をジロジロ見る趣味はないから特徴を見つける気もない。
しかし姫さまの方は別だ。めっちゃ見た。
透き通る様な金色のロングヘアに透き通る様な碧い瞳。
美しくて可愛らしい顔立ち。
身長は、ヒールを履いて170センチぐらいか? しかしロング丈のドレス越しでも分かる足の長さ。
正直そこら辺のモデルなんかとは比較にもならない。
そしてつい口走ってしまった。
「なんだ、女神様か」
「なっ...!」
俺の呟きを聞いた女神様が顔を真っ赤にしてる。可愛い。
左右の男にめっちゃ睨まれた。
「で、今どうゆう状況なの?」
やっと状況を確認出来そうだ。