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ハニートラップ説2


 あぁ……、結局一睡も出来ずに朝になってしまった……。


 一睡もしていないのに、一睡もしていない間の記憶がない。


 ええと、なんだっけ? 現状確認。


 確か、昨日蛇頭を搬ぶところで俺がアテナに聞いたんだ。


 俺は必要かと。


 そしたらアテナが逆プロポーズして来てぶっ倒れた。


 そんでアテナをおぶって宿に戻り俺がセンチメンタルな気分の所にアテナの再告白。


 たまにウザかったりしたが、見た目は俺が女神と認める美少女で王女。


 俺は断る事が出来なかったんだ。


 なぜ?


 今までだって散々美女のハニートラップは回避して来た。


 奴らは妖艶なフリをしてるが殺気が消しきれてないから直ぐ分かるんだ。


 俺が油断してると思ったところで一瞬で決めに来る。


 だが俺はその一瞬よりも速く反応し頭をブチ抜いてやる。


 俺を殺そうと仕掛けてくる奴らは老若男女問わずブチ殺す。


 俺の邪魔をする奴は絶対殺す。


 未遂でも殺す。


 元々復讐の為に殺しを始めてから、ジジイもババアも親も息子も娘も孫も殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して……。


 ハッキリ言って俺の頭はイかれていた。


 唯一まともに接する事が出来たのが後輩達くらいなもんだった。


 今思えばなぜあいつらには普通に接して来られた?


 ああ、そうだ。


 俺が昔あいつらが死にそうな所を助けたら、懐かれたんだ。


 帰る場所はもう無いとか言ってたから俺が育てあげた。


 最初は使えるコマが増えれば良いぐらいにしか思ってなかったが、きっと家族の様に思ってしまっていたんだろう。


 ……そうだ、あの頃はあいつらを死んじまった妹に重ねちまってムカついたから執拗に激しく訓練させてたな……。


 あいつら俺を怨んでいるかな。 いるだろうな。


 だからと言って今後もし会えても謝る気は無いがな。


 ……ってアレ?なんの話しだっけ?


 現状確認。


 あ、そうだ。 なんでアテナの告白を断れなかったかって事だった。


 なんでだ?


 分からない。


 ……いや、本心からそういう恋愛的な好意を持たれたのは初めてだったかもしれない……


 常に嘘が蔓延る世界で生きて来たから本心からの好意に対応出来なかったのだろう。


 ……とりあえずそういう事にしておこう。


 だが、そもそも何故だ? 何故俺はそこまで好意を持たれている?


 俺はアテナに何をした?


 アルカナから脱出するのを助けた。 腹が減りすぎて少し煽った。 一緒のベッドで寝た。 アルカナ王達の魂を与えた。 蛇が出たから戦えと煽った。


 ん? どこにも俺に惚れる要素がない。


 どういう事だ?


 まさか、ハニートラップか?


 いや、そうとしか思えない。


 くそっ! 今まで一度も引っかからなかったんだぞ?


 だがこれは俺のプライドが許さない。


 一度本人に確認しよう、俺が気付いたとは悟られないように。

 



「んっ、おはようございますシンさん。 起きていたんですね」



 アテナが目を覚ました。 丁度いい。



「あ、あぁ。 おはよう。 アテナ、ちょっといいか?」

「はい、なんですか?」



 アテナが俺と目を合わせてくる。


 この一瞬を待っていた。


 俺は素早く自分とアテナの唇を重ねた。


 つまり、おはようのキスだ。


 そして素早く離す。一瞬だ。


 これでハッキリする筈だ。


 無表情なら黒。 何かしらの反応をすれば、まぁ、白という事にしておいてやろう。


 ……アテナの表情は変わらない、黒か。



「あっ……」



 ん? なんだ? 段々アテナの顔が紅く染まっていく。



「しっしししシンさんっ! そそそれはズルいですよぅ! ……うぅ……」



 アテナは自分の顔を手の平で覆った。


 むぅ。 この反応は……、グレーか。 もう少し様子を見なければ…… っ!?



「仕返しです!」



 俺はアテナに押し倒された。


 不意打ちかっ!? この俺が反応出来なかったなんて! まずい!



「んっ!?」



 アテナはキスをして来た。 さらに俺の唇の奥へ舌を侵入させ、その場所で絡み合う。


 毒を仕込まれたか!? くそっ!俺は何をしているんだ!


 アテナは顔を上げ、俺を取り囲むように四つん這いになって見下ろして来る。



「シンさんが悪いんですよ?」



 これは俺に対する死亡宣告か。 まさか俺の最期がハニートラップによるものだとは思わなかった……。


 俺はそのまま目を閉じた……。



「あれ? シンさん、起きないんですか? じゃあ、もう少しだけ……」



 アテナは再び唇を重ね、その奥へと侵入して来る。


 アテナの胸が俺の胸に押し付けられ、鼓動が伝わる。


 俺の唇の奥では舌と舌が暫く絡み合っていた。


 ……それにしても長い。


 俺はいつ死ぬんだ?


 既に5分程経過している。



「んっ…… シンさん……」



 ……ちょっと待っておかしい。


 これはハニートラップでは無い。


 普通のディープキスだ!


 そう気付いた瞬間身体が熱くなって来た。


 まずい! 止めなければ!


 俺は両手でアテナの両肩を持ち上げ唇から引き離す。



「アテナっ! 俺が悪かったから許してくれ!」

「えっ? なんですか!?」



 そして俺はアテナに今回の事の顛末を話した……。





「そ、そうなんですか…… ハニートラップだと……」

「すまんかった……」



 俺は何故アテナに想われてるのかが分からなくてハニートラップを疑った事を話した。



「私がシンさんが好きな理由ですか……」



 そこまで好かれる理由が分からないから教えてくれと頼んだのだ。



「ひ、一目惚れです……」

「え?」

「初めて会った時一目惚れしてたんです!」

「初めて会った時って……」



 俺の顔はボコボコでアテナに悪魔と呼ばれた気がするんだが……。



「そ、そこじゃなくて…… 治療した後です……」



 あぁ、"立派なお顔です"の件か。 どっちにしても……



「最序盤じゃねーか……」

「あの時はカッコいい人だなぁと思ったんですよ? でもあの後から色々あって落ち込んでたんですけど、シンさんが励ましたりしてくれて、優しい人なんだなぁって……。 最初宿で一緒に泊まった時も、少し下心はありました……」

「おいおい……」



 ……王女様そんなんでいいのか!?



「だから、シンさんに死ぬまで一生一緒って言われて、とても嬉しかったんです……」

「あれはお前が言ったことをそのまま返してからかったつもりだったんだけどな……」



 まさか肯定されるとは思わなかったからな。



「な、なんて言うか…… 嬉しさが上回ってしまって…… すみません……」

「謝らなくていい、俺も大切にするって言ったからな。 ハニートラップじゃないって分かった以上は、大切にするつもりだ。 でも俺でいいのか? 歳だって結構離れてるぞ? 日本では俺が訴えられれば人生終了レベルだ」



 アテナが俺でいいと言うなら、俺はそれに応えるつもりだが……



「ふふっ ここは日本と言うところではないので、大丈夫ですよ。 それに、私はシンさんがいいんです。 寧ろシンさんからしたら私が子供っぽ過ぎて相手にしてくれないかと不安です……」



 それはなんとも返答し辛い……。



「ま、まぁ…… そこはアテナ次第って事にしておいてくれ……」

「なんですかそれっ!?」





 なんやかんやでハニートラップの疑いも晴れて、俺たちは無事?カップルになってしまったのだった……。

 



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