1万人分の力とは、
よし、吸収完了っと。
俺はリシュテーム兵の魂を全て吸収し終えた。
朝方話した隊長の魂も容赦なく吸収した。
あ、聞きたい事がまだあったんだった……
やってしまった事はしょうがない。
あまり考えない様にした。
「ちょっとステータスを確認してみるか」
「私も、確認してみますね」
俺たちは各々で自分のステータスを確認した。
『情報過多 表示不可』
「あ?」
なんだ?情報過多?ステータスが見れない。
まぁ、もともと見れないようなもんだったが。
「あ、あの……ステータスが……見れないです……情報過多とかで……」
アテナもか……
「あぁ、俺もリシュテーム兵の魂を吸収したら見れなくなった」
「これは、どういう……」
「……一万もの魂を取り込んだせいだろう。 仮に一人の兵士のステータスが百だとしたら、掛ける一万で百万って事だろ? あとスキルもだ、俺たちは一万人分のスキルを持っている筈だから、被りがあっても相当な量って事だろう……」
つまり、そういう事なのだろう。
「そ、そうですか……はは……」
アテナが乾いた笑いを零した。
「なんだか化け物みたいですね……」
「そうだな……」
もはや人間ではなくなってる気さえしてくる。
「と、とりあえず今日はもう休もう……」
「そ、そうですね……」
なんだかやっちまった感はあるがやっちまったもんは仕方ない……あまり目立つ事はしないようにしよう……。
「お、おやすみなさい……」
「あぁ……おやすみ……」
俺たちは戸惑いを残しながら眠りについた。
___
「……ん?……なんだ?」
「……むにゃ……なんだか騒がしいですね……」
俺は山が騒がしくなって目を覚ました。
鳥達が騒めき、小動物や巨大な鹿や熊なんかも俺たちを素通りして山の麓に向かって走って行ってる。
すると、山の上方から木々を薙ぎ倒す音が聞こえてきた。段々とこちらに近づいて来ている。
間も無くしてその原因の正体が明らかになった。
……蛇だ。
途轍もなく巨大な蛇の頭が俺たちの頭上十メートル程の高さにある。胴体の長さは、長過ぎて測れないが、少なくとも五百メートルはあるのではないだろうか。
その超巨大な蛇が此方を睥睨している。
「なんだこいつは……」
すると鑑定が発動した。一万の魂のいずれかが持っていたのだろう。
名称:巨大邪神蛇
レベル:93
ステータス
STR:886100
DEX:657200
VIT:955900
AGI:828700
INT:573000
スキル
激毒牙 重装甲鱗 物理耐性 魔術耐性 超速再生
称号
全てを蹂躙せし者
「……やばすぎん?」
とんでもないのが出て来た。どうすんのこれ?めっちゃこっち見てるし。
すると巨大邪神蛇が凄い勢いでその頭を叩きつけてきた。
直撃は避けたがその圧倒的な物理攻撃によって土や石や木々の破片がぶち撒けられ、それが弾丸の如く襲い掛かってくる。まるで超巨大な手榴弾が爆発した様な攻撃だ。
「ぐああっ!」
「きゃああ!」
俺たちはそれをもろに受けてしまった。全身切り傷だらけになる。
「くっ!アテナ!大丈夫かっ!」
「は、はい……生きてます……」
俺たちはあれだけの攻撃を食らっても生きていた。普通の人間なら姿形も分からなくなるぐらい穴だらけでぐちゃぐちゃになってもおかしくない攻撃だった筈だ。それが切り傷のみに留まっている。
「ハハッ!俺たちも中々の化け物になっちまってるみたいだな!」
「で、ですね……」
あれで死ななかったのだ、そういう事なのだろう。
今の一撃で自分も目の前の化け物と同等の存在になってしまった事に気づいた俺は、俺たちなら何とかコイツを倒せると踏んだ。
「俺たちでコイツを仕留めるぞ!」
「えっ!? 私っ!戦った事なんてありません!」
そうか、アテナはお姫様だったから戦った事なんてないのだろう。それもそうか。
「だがここで殺らなかったらオッツカが崩壊するぞ!人間もみんな死んで船も乗れなくなるけどいいのか?」
「そっ、それは……きゃあぁぁ!!」
俺は再び叩きつけられて来た蛇の頭をアッパーの様にぶん殴って弾き返した。弾き返す事が出来ると身体が理解していた。
アテナはその衝撃で悲鳴をあげる。
「くっ! 俺たちなら全てを見殺しにして逃げる事も出来るだろうな!だが今ならこうして人を救える力を持っているかもしれない!まぁ俺はどっちでもいいんだがな!力があるのに見捨てるか、闘うか、お前が選べ!」
「私は…… えっ!?」
突然アテナが腰に下げてるアルカナの宝剣が輝き始めた。
「っ!! 何かが……流れ込んで……これは、アルカナ剣王術……?」
アテナはハッとしてその剣を抜き放った。
「……解る……今なら……戦える?」
再び巨大な蛇の頭が叩きつけられて来た。
「おおぉぉぉ!らあぁっ!」
俺はそれを再び全力アッパーで殴り返す。蛇の顎の鱗が弾け飛ぶが再生で直ぐに元どおりになった。
「くそっ!これじゃキリがない! っ!?アテナっ!?」
アテナが前に出て、蛇の首に向かって勢い良く飛んで行った。
「ハアアァァァァァ!!やあぁぁ!!」
空中で力を溜めて、一気に剣を振り抜いた。
すると巨大蛇の頭と胴体が切り離され、その頭は山の麓の方まで吹き飛んで行った。
「え?」
俺が呆然としていると、蛇の頭が吹き飛んで行った方向から隕石でも直撃したかの様な轟音と衝撃波が伝わって来た。同時に、残された胴体も地面に撃墜して土埃を巻き上げ地面を揺らした。
「……なにそれ……」
俺の目の前には巨大邪神蛇の大きな魂が浮かんでいる。
「……………。」
俺はそれを無言で収集した。
「倒せましたぁ!!」
アテナははしゃいでいるが、少し複雑な気分だ……。
___
俺たちは蛇の頭が飛ばされた山の麓まで降りて来ていた。
目の前には蛇の頭を中心に巨大なクレーターが出来ている。
中々大迫力な光景だ。
「うわぁ、すっげ……」
「これ、どうするんですか……?」
「俺に聞かれてもな……」
すると、オッツカのある方角から冒険者らしき人達が沢山走って来るのが見えた。
「これは……事情を説明した方がいいか……?」
程なくしてその冒険者達と接触した。
「お前達がこの山でのクエストを受けていたG級冒険者だな!?大丈夫か!?街では巨大邪神蛇がこの山で出たと大騒ぎになってる!俺たちはその討伐の緊急クエストを受けて来た!お前達は早く避難しろ!」
総勢百名程の冒険者集団が来ていた。そのリーダーと思われる厳つい身体をした男が俺たちに避難を促す。
「あ、あの……倒しました……」
アテナは俺たちの後ろにある蛇頭によって出来たクレーターの方を指差した。
「はぁ?何言ってるんだ? お前達!早く行くぞ!………なっ!?」
他の冒険者に声をかけ、俺たちの横を過ぎ去ろうとした厳つい男だが、直ぐにそれに気が付いた。
「なんだこれは………」
それを目にした男はあまりの光景に絶句していた。




